【最新】アルコールチェック義務化とは?実施方法や罰則などを解説
2022年に道路交通法が改正され、一定台数以上の白ナンバーの社用車を使用している企業に対して、アルコールチェックが義務化されました。また、2023年12月からはアルコールチェックの際に検知器を使用することも義務付けられました。
しかしながら、
- 行政機関のWebサイトを見たけれど理解が難しい
- 自社がアルコールチェック義務化の対象かわからない
- 現在のアルコールチェックの方法で法律を遵守できているか不安
- アルコールチェックの業務負担に悩んでいる
など、対応を始めたばかりで疑問や悩みを抱えている方も多いかと思います。
そこで本記事では、アルコールチェック義務化の「内容とスケジュール」、「対象企業の条件」を踏まえ、具体的な「実施方法」、アルコールチェックを怠った場合の「罰則」などについて解説します。また、義務化に伴い増加した業務負担を軽減するツールも紹介していますので、ぜひ自社の運用体制づくりの参考にしてください。
5分でわかる
「アルコールチェック義務化」完全ガイド
2023年12月1日から検知器を用いたアルコールチェックが義務化されました。「義務化対応」について、押さえるべきポイントをわかりやすく解説した資料を用意しました。
【資料で分かること】
- 義務化の経緯やスケジュール
- 義務化の対象となる企業
- 対応を怠った場合の罰則
- 会社として対応すべき事項
アルコールチェック義務化を正しく理解するために、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
アルコールチェック義務化とは
アルコールチェック義務化とは、2022年4月の道路交通法改正により、それまで義務化されていなかった「白ナンバー」の社用車や営業車を一定台数以上使用している企業に対して、運転前後におけるアルコールチェックの実施が義務付けられたことを指します。
なお、「緑ナンバー」の車に対しては、旅客自動車運送事業運輸規則および貨物自動車運送事業輸送安全規則により、2011年からすでにアルコールチェックが義務化されていました。「緑ナンバー」の車と、今回義務化された「白ナンバー」の車の違いは以下のとおりです。
- 緑ナンバー:「有償」で人や荷物を目的地に運ぶ、トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車
- 白ナンバー:「無償」で自社の人や荷物を運ぶ、事業用自動車以外の車
義務化の内容とスケジュール
アルコールチェック義務化は、いつからどのような内容で施行されたのでしょうか。義務化に至った背景と合わせておさらいしましょう。
義務化に至った背景
白ナンバー車両に対するアルコールチェック義務化の背景には、過去に発生した重大な交通事故があります。
令和3年6月28日、千葉県八街市で、飲酒運転のトラックが下校中の小学生の列に突っ込み、2人が死亡、3人が大けがを負いました。
事故後、運転者の呼気からは基準値を上回るアルコールが検出されましたが、運転者が乗っていたのは、当時アルコールチェックが義務付けられていなかった白ナンバーのトラックでした。
この事故を受け、白ナンバー車両に対する飲酒運転防止対策の強化を目的として道路交通法施行規則が改正され、2022年4月と2023年12月の二段階にわたり安全運転管理者による運転前後のアルコールチェックの実施および記録の保存が義務化されました。
飲酒運転の基準や罰則については、以下の記事も参考にしてください。
参考記事:飲酒運転の基準と罰則|お酒の分解時間や違反を防ぐポイントも解説
2022年4月に施行された内容(第一段階)
飲酒運転による交通事故を今まで以上に厳格に防止するために、まずは運転前と運転後の計2回、ドライバーに対してアルコールチェックを実施し、その記録を管理することが義務化されました。
ただし、第一段階では、アルコールチェックの際にアルコールチェッカー(アルコール検知器)を用いることまでは義務化されず、「目視等」で実施すればよいとされていました。
2022年4月1日から義務化された内容は、具体的には以下のとおりです。
- 運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無の確認をすること
- 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
(道路交通法施行規則第9条の10)
2023年12月に施行された内容 (第二段階)
第二段階では、さらに厳格なアルコールチェックの実施が必要となりました。第一段階では「目視等」での実施に留められていましたが、第二段階では「アルコールチェッカー」を用いたアルコールチェックが義務付けられました。
また、アルコールチェッカーは定期的に点検を行い、いつでも正確に測定できる状態にしておくことも義務化の内容に含まれています。
アルコールチェッカーの使用について、当初は2022年10月1日から義務化される予定でしたが、アルコールチェッカーの供給不足等を踏まえて延期となっていました。
(参照:警察庁の発表文書)
その後、安全運転管理者へのアンケートやアルコールチェッカー製造業界からの意見等により、アルコールチェッカーの供給状況は改善傾向にあると認められ、飲酒運転防止を図るためには早期にアルコールチェッカーを導入することが望ましいとの見方から、2023年12月1日に義務化開始となりました。
2023年12月1日から義務化された内容は、具体的には以下のとおりです。
- 運転者の酒気帯びの有無の確認を、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーを用いておこなうこと
- アルコールチェッカーを常時有効に保持すること
(道路交通法施行規則第9条の10)
なお、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーとは、、”呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器”を指しており、これを満たしたアルコールチェッカーであれば問題なく使用できます。
二段階にわたるアルコールチェック義務化の内容を図でまとめると以下のとおりです。
アルコールチェック義務化についてわかりやすくまとめた『5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべて』は、社内にアルコールチェックを周知させる際に最適な資料となっています。ぜひご活用ください。
義務化の対象となる事業所
アルコールチェック義務化の対象となるのは、一定の条件を満たした企業や事業所です。
アルコールチェックは安全運転管理者の業務として位置づけられているため、安全運転管理者の選任対象となる条件に当てはまれば、アルコールチェックも義務付けられることになります。
業種に関わらず、自動車の使用の本拠ごと、つまり事業所や営業所ごとに以下の条件を満たしていれば、安全運転管理者の選任およびアルコールチェック義務化の対象となります。
- 乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している
- その他の自家用自動車を5台以上使用している
※ 大型自動二輪車または普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算
(道路交通法施行規則第9条の8)
自家用自動車と言うと、プライベートで使用するマイカーを思い浮かべる方も多いかと思いますが、法律上では白ナンバーの社用車や営業車も含まれるため、注意してください。
こんな車両も台数の算定に含まれる
例えば、幼稚園バスやスクールバス、ホテルの送迎車などの大人数が乗れるような車を1台でも所有している場合や、メーカーの営業部門や建設業など車を運転する機会があり社用車を5台以上所有している場合などが対象となります。
しかし、通勤用のマイカーやリース車両など、台数の算定に含まれるのかがわかりにくい車両もあるかと思います。
以下の記事では、義務化の対象となるのか判断に迷うケースを取り上げて具体的に説明しています。自社が該当するのかよくわからない、という方はぜひ参考にしてください。
参考記事:台数の算定にもう迷わない!安全運転管理者選任の悩みをスッキリ解決
そもそも、安全運転管理者制度とは
ここで、安全運転管理者制度について改めて確認しておきましょう。安全運転管理者制度とは、自動車の使用者である企業や事業所の代表者に対して、先ほどの条件を満たす事業所ごとに「安全運転管理者」や「副安全運転管理者」を選任しなければならないと定めた制度です。
その目的は、安全運転管理者等が運転者の教育・訓練や運転状況のモニタリング、安全対策を実施し、安全運転の推進や交通事故の防止を強化することです。
安全運転管理者の業務にアルコールチェックが追加された
法改正により安全運転管理者の業務内容にアルコールチェックが追加されたことで、安全運転管理者を選任している事業所ではアルコールチェックを実施しなければならなくなりました。
安全運転管理者の具体的な業務内容は以下の9つです。
- 運転者の状況把握
- 運行計画の作成
- 交替要員の配置
- 異常気象時等等の安全確保の措置
- 安全運転の指示
- 運転前後の酒気帯び確認 ※法改正で追加
- 酒気帯び確認の記録・保存 ※法改正で追加
- 運転日誌の記録
- 運転者に対する指導
選任義務や罰則、業務内容等について、イラストを用いてわかりやすくまとめた『安全運転管理者まるわかりガイド』も用意していますので、ぜひ参考にしてください。
また、「これさえできていれば安全運転管理者の業務はばっちり!」といえる弁護士監修|法令遵守チェックリスト(安全運転管理者編)もぜひご活用ください。
対象の事業所が対応すべき3つのこと
①安全運転管理者の選任
アルコールチェックは、原則として安全運転管理者が実施しなくてはなりません。アルコールチェック義務化の対象となる企業は、安全運転管理者の選任が必須になるので、まだ安全運転管理者を選任していない場合は、選任や届出等を早急に進めなくてはなりません。
安全運転管理者に関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
安全運転管理者に必要な資格を解説|届出方法や罰則も紹介
安全運転管理者の届出ハウツー!電子申請や必要書類のリンクも掲載
安全運転管理者の罰則を解説|法令遵守のポイントや業務内容も
安全運転管理者をすでに選任している場合は、新たな業務としてアルコールチェックが追加されたので、業務フローを再確認するとともに、アルコールチェック実施を徹底する仕組みを作る必要があります。
企業によっては、副安全運転管理者の選任も必要
使用する自動車の台数が20台を超える場合は、20台ごとに1人、副安全運転管理者を選任しなければなりません。
副安全運転管理者は主に安全運転管理者の業務のサポートを行います。安全運転管理者の不在時に、ドライバーのアルコールチェックに立ち合うことなども考えられます。
副安全運転管理者については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
②アルコールチェッカーの手配とメンテナンス
アルコールチェックを実施するためには、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーを手配する必要があります。
国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーとは、”呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器”とされています。
参考:『道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案』等について.pdf (npsc.go.jp)
言い換えると、アルコールチェッカーを選ぶ時のポイントは以下のとおりです。
- 音、色、数値等で呼気から酒気帯びの有無が確認できる
- 正しく測定ができれば、メーカーや形は問わない
現在は各メーカーからいろんな種類のアルコールチェッカーが販売されており、価格や精度、形状なども様々です。社内でのアルコールチェックの運用方法を想定した上で、自社にとって使いやすいアルコールチェッカーを選ぶことが大切です。
また、アルコールチェッカーには耐用年数や使用上限が設けられています。常時有効に保持し、いつでも正確に測定できる環境を整備しておくためには、点検やメンテナンスを行うことも重要です。
③記録・保存体制の構築
法律では、アルコールチェックを実施するだけでなく、結果を記録して1年間保存することも義務付けられています。
そのためには、記録簿を用意し、1年間保存できる体制を整える必要があります。記録簿の形式は紙でもデータでも構いません。紙の場合はファイルや保管庫を準備し、データの場合は適切な格納場所に専用フォルダを作成しておきましょう。
記録簿に記載しなければならない具体的な項目については、次のアルコールチェックの3ステップで紹介します。
アルコールチェック記録簿のひな形は、以下のリンクから無料でダウンロードできます。ぜひ活用してください。
【Excel】アルコールチェック記録簿テンプレートアルコールチェッカーの選び方
アルコールチェックを始めるためには、まずアルコールチェッカーを準備しなければなりません。しかしながら、市販されている膨大な数のアルコールチェッカーの中からどれを選べばよいのかわからないという方も多いかと思います。
ここでは、アルコールチェッカーを選ぶ際にポイントとなる3つの観点をお伝えします。
①タイプ(形状)で選ぶ
アルコールチェッカーの形状は、据え置きタイプとハンディタイプがあります。
据え置きタイプの特徴
- 会社の事務所などに設置して使用する
メリット
- パソコンと連携させるとデータ管理がしやすい
- 管理者の前で測定することが多く、不正を防ぐことができる
デメリット
- 常に電源に繋いでおく必要がある
- 持ち運びができない
ハンディタイプの特徴
- 場所問わず使用できる
メリット
- 持ち運びがしやすく、自宅や車内など場所を問わず使用できる
デメリット
- 管理者の手元にないので、使用回数の管理がしにくい
- 製品によっては精度が低い可能性がある
②測定の精度で選ぶ
アルコールチェックを行う上で、測定の精度は非常に重要です。精度が高い製品は価格も上がる傾向にはありますが、コンプライアンス強化という観点でもできる限り精度の高いアルコールチェッカーを導入することをおすすめします。
アルコールチェッカーに使われているセンサーには「半導体式ガスセンサー」と「電気化学式(燃料電池式)センサー」の2種類があります。精度が高いのは「電気化学式センサー」です。電気化学式センサーはアルコール以外の成分には反応しないという特徴があります。精度の高さを重視する場合は、電気化学式センサーを選ぶようにしましょう。
なお、それぞれのセンサーの特徴やアルコールチェッカーの正しい使い方、点検・メンテナンス方法については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
参考記事:アルコールチェッカーの使い方と3つの注意点|点検方法も解説!
③機能性で選ぶ
アルコールチェッカーには、アルコール濃度を測定するだけでなく、様々な便利な機能が搭載されたものがあります。
例えば、スマホのアプリと連携することで、アルコールチェッカーの測定値が自動でアプリ内に反映され、管理者が離れた場所にいてもその情報をリアルタイムで確認することができるものもあります。また、位置情報を記録できるものや、測定時に顔写真撮影を行って不正を防ぐものなど、多岐にわたります。
社内でのアルコールチェックの運用方法を想定した上で、管理者とドライバーの双方にとって使いやすいアルコールチェッカーを選ぶことが大切です。
アルコールチェック実施の3ステップ
ここからは、実際にアルコールチェックを実施する際の手順を3ステップで紹介していきます。やるべきことをしっかり押さえて、法令遵守の体制を整えましょう。
ステップ1. 運転前後にアルコールチェッカーを用いて確認
運転前後に安全運転管理者が立ち合い、目視等でドライバーが酒気を帯びていないか確認するほか、アルコールチェッカーを用いて呼気中のアルコール濃度を測定します。
運転前にアルコールチェックを行う目的は、これから業務で運転する人が酒気帯びや酒酔いの状態でないことを確認するためです。また、運転後にもチェックすることで、業務中に飲酒がなかったかどうかを確認します。
ステップ2. 確認内容を記録
目視等およびアルコールチェッカーを用いて酒気帯び確認を実施した内容を記録します。具体的には、以下の8項目について記録する必要があります。
- 確認者名
- 運転者名
- 運転者の業務に係る自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
- 確認の日時
- 確認の方法
・アルコール検知器の使用を記載(2023年12月より使用が義務化)
・対面でない場合はビデオ通話などの具体的な確認方法を記載 - 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
Excel形式の記録簿を運用する際の記載例を以下に掲載していますので、参考にしてください。
この記録簿のひな形は、こちらのリンクから無料でダウンロードできます。ステップ3. 記録を1年間保存
記録内容を確認し、記入漏れや誤字脱字といった不備がないかチェックします。問題なければ、月ごとなど管理しやすい単位でファイリングし、1年間保存します。
保存形式は紙とデータのどちらでも構いません。
これらの3ステップに加えて、アルコールチェッカーを常時有効に保つために必要な点検やメンテナンスも忘れずに行いましょう。
酒気帯びの罰則対象となる数値とは
アルコールチェッカーが体内のアルコールを検知した場合は、どのように対応すればよいのでしょうか。ここでは、酒気帯び運転の罰則対象となる数値について解説します。
0.15 mg/L以上で酒気帯び運転の罰則が科される
酒気帯び運転の罰則対象となる数値について、道路交通法施行令では以下のように定められています。
(アルコールの程度)
”第四十四条の三 法第百十七条の二の二第一項第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。”
(引用:道路交通法施行令)
わかりやすく言い換えると、道路交通法の第百十七条の二の二第一項第三号において、酒気帯び運転等が禁止されており、罰則対象となる具体的な数値については政令で定められています。その政令で定められた数値が、血液の場合0.3 mg/mLまたは呼気の場合0.15 mg/Lということです。
つまり、アルコールチェックでこれらの数値を上回ったにも関わらず運転をしてしまった場合は、酒気帯び運転の罰則を科されることになります。
酒気帯び運転の罰則対象にはならないが、0より大きい値が検出された場合
0.15 mg/Lよりも小さいが0ではなかった場合、どうすればよいのでしょうか。
直前に飲食・喫煙したり、アルコールを含む洗口液を使用した場合は、アルコールチェッカーが誤検知を起こす場合があります。心当たりがある場合は、まずうがいを行い、少し時間をおいてから再測定してみましょう。
それでも0にならない場合は、たとえ酒気帯び運転の罰則対象となる数値未満であったとしても運転することは控えましょう。0にならないということは、体内にアルコールが残っているということであり、交通事故を引き起こすリスクとなります。交通事故は人の命に関わるため、アルコールが完全に抜けるまで待ちましょう。
その際、アルコールチェッカーの数値と合わせて、どのような対応をとったかについても必ず記録を残すようにしてください。
アルコールチェッカーの数値の見方や、飲酒運転による罰則、アルコールが抜けるのに必要な時間については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
参考記事:
アルコールチェッカーの数値の正しい見方とは|酒気帯びの基準値や注意点も解説!
アルコールチェック実施のポイント
ここでは、法令に沿ってアルコールチェックを実施するためのポイントや注意点を紹介します。
業務目的で運転を行う人が対象
アルコールチェックを実施すべき対象者は、業務のために運転を行う人です。
たとえば、営業活動のために社用車を運転して顧客を訪問する場合や、自社商品を配送するためにトラックを運転する場合などに、ドライバーに対してアルコールチェックを実施します。
アルコールチェックの対象者については、以下の記事で解説しています。合わせてご覧ください。
参考記事: アルコールチェック義務化の対象者は?実施企業の条件や運用方法も解説
運転前後の2回実施する
アルコールチェックを実施するタイミングは、運転前・運転後の計2回です。
なお、必ずしも運転の直前・直後である必要はなく、運転を含む業務の開始前や終了後、出勤時や退勤時でも問題ありません。
安全運転管理者が対面で実施する
アルコールチェックは原則として安全運転管理者が対面で行わなくてはなりません。
アルコールチェッカーを用いて確認した場合であっても、原則として目視での確認を省略することはできません。
他の企業様がどのようにアルコールチェック義務化対応をしているかをアルコールチェック義務化の対応成功事例6選にてまとめていますので、ぜひご覧ください。
安全運転管理者が対応できない場合
アルコールチェックは原則として安全運転管理者が実施します。しかし、安全運転管理者の不在時や確認が困難な場合においては、「副安全運転管理者」やあらかじめ指定した「安全運転管理者の業務を補助する人」が代わりに実施しても問題ありません。
ただし、アルコールチェックの結果で酒気帯びが確認された場合は、必ず安全運転管理者に速やかに報告し、必要な対応等について指示を受けるか、安全運転管理者自らが運転者に対して運行中止の指示等を行う必要があります。
また、代理でアルコールチェックを実施した場合であっても、その責任は安全運転管理者が負うことになります。
(参照:兵庫県警察公式サイト 「安全運転管理者の業務 アルコール検知義務化 Q&A」)
直行直帰など対面で実施できない場合
アルコールチェックは原則対面で実施することとされていますが、実際は直行直帰や出張等で対面での実施が難しい状況もあるかと思います。そのような場合は、「対面に準ずる適宜の方法」で実施すればよいとされています。
警察庁は対面に準ずる適宜の方法として、以下を具体例として挙げています。
- カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
- 携帯電話、業務無線その他の運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法
なお、直行直帰時のアルコールチェックの実施方法については、以下の記事で詳しく解説しています。直行直帰であってもアルコールチェックは必ず行わなくてはならないので、合わせてご確認ください。
参考記事:直行直帰のアルコールチェックはどうする?実施方法や効率化の方法も解説
法令に基づいた正しいアルコールチェックの実施ポイントについてご理解いただけたでしょうか。
『弁護士監修|法令遵守チェックリスト(アルコールチェック義務化編)』では、アルコールチェックの運用において必ず実施すべき8つのポイントを、チェックリスト形式でまとめました。
ぜひ、自社の運用方法を照らし合わせてチェックしてみてください。
アルコールチェックを怠った場合の罰則
アルコールチェックをうっかり忘れて運転してしまったり、法令どおりの手順で実施しなかったりと、アルコールチェックを怠ってしまった場合に罰則があるのかどうか気になる方も多いかと思います。
安全運転管理者の業務違反に該当
現時点で、アルコールチェックを怠ったことに対する直接的な罰則は設けられていません。しかし、アルコールチェックは安全運転管理者に課された重要な業務であるため、適切に実施しないと安全運転管理者の業務違反に該当します。
公安委員会により業務怠慢とみなされた場合は、是正措置命令や安全運転管理者の解任命令が下される可能性もあり、これに従わなかった場合は罰則が科されます。
安全運転管理者に関する罰則については以下の記事をご覧ください。
参考記事:安全運転管理者の罰則と法令遵守のポイント|業務内容とリスクを徹底解説
飲酒運転に該当する場合の罰則
アルコールチェックを怠ると、従業員の飲酒運転を見逃してしまう可能性があります。飲酒運転をしたドライバーには、以下のような厳しい行政処分と罰則が科されます。
酒気帯び運転の場合
- 行政処分
基礎点数:13点
免許停止:期間90日※1
アルコール基準値が0.25 mg/L以上の場合
基礎点数:25点
免許取消:欠格期間2年※1, 2
- 罰則
酒酔い運転の場合
- 行政処分
免許取消:欠格期間3年※1, 2
- 罰則
(※1)前歴およびその他の累積点数がない場合
(※2)「欠格期間」とは、運転免許の取消し処分を受けたものが再取得することができない期間のこと
さらに、業務中に飲酒運転が発覚した場合には、車両提供者である企業に対しても、以下のとおりドライバーと同等の罰則が科されます。
≪車両等の提供者≫
- 酒気帯び運転の場合:3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
- 酒酔い運転の場合:5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金
≪酒類の提供者・車両の同乗者≫
- 酒気帯び運転の場合:2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金
- 酒酔い運転の場合:3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
アルコールチェック7つのFAQ
ここまでアルコールチェックの具体的な実施方法について解説してきましたが、実際に自社で運用するにあたり、疑問点をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
アルコールチェックに関してよくある質問とその回答を以下にてご紹介します。ぜひ参考にしてください。
Q1. アルコールチェッカーを使用していても対面確認は必要?
アルコールチェッカーを使用してアルコールチェックを実施した場合でも、安全運転管理者等による対面確認は必要です。また、車両管理システム等でアルコールチェック記録をしている場合や、アルコールが検出された場合にエンジンがかからないようにするシステム等を使用している場合も省略することはできません。
万が一アルコールが検出された際に、迅速かつ適切に対応し、飲酒運転防止を徹底するためにも、必ず目視等による確認を実施してください。確認者は、アルコールチェッカーの数値に頼り過ぎず、ドライバーの顔色や声の調子なども必ず確認するようにしましょう。
Q2. 安全運転管理者の業務を補助する人に資格は必要?
特に資格は必要ありませんが、安全運転管理者の業務内容やその目的を理解している人がふさわしいでしょう。補助者が立ち会った際にドライバーからアルコールが検出された場合には、補助者ではなく安全運転管理者自身が措置を講じることが求められるため、速やかに報告できる体制の構築が重要です。
Q3.早朝深夜や休日出勤で安全運転管理者等による確認が困難な場合はどうすればよい?
警察庁は、アルコールチェックの確認者について業務委託であっても差し支えないと回答しています。もちろん、Q2と同様にアルコール検出時には安全運転管理者が直接対応する必要がありますが、確認業務だけであれば、24時間365日対応している代行サービスなどを利用することも選択肢の一つです。
Q4. アルコールが検出された時はどうすればよい?
運転前の確認でアルコールが検出された場合は、当然ながら運転させることはできません。車を使わずに通勤していた場合は問題ありませんが、車を運転して通勤していた場合は、飲酒運転となるため最寄りの警察署等に通報しなければなりません。
また、運転後の確認で判明した場合は、運転中に飲酒したということになるため、同じく警察署等に通報してください。その際、対応した内容について正確に記録しておきましょう。
Q5. レンタカーでもアルコールチェックは実施しなければならない?
レンタカーであっても、業務上で車を運転する場合はアルコールチェックの対象となります。記録しなければならない項目や保存期間も、事業所で所有している車と同様の扱いとなるため、ナンバー等を確実に記録するようにしましょう。
Q6. マイカー通勤する場合もアルコールチェックは実施しなければならない?
通勤のみの場合はアルコールチェックの対象外となります。ただし、マイカーで通勤し、日中に業務のために当該車両を運転する場合は、運転前後にアルコールチェックを実施しなければなりません。
また、マイカー通勤中に従業員が交通事故を起こした場合、企業には使用者責任を問われる可能性があります。したがって、法律上でアルコールチェックが義務付けられていなくても、飲酒運転防止や安全運転推進の取り組みは必要です。
Q7. アルコールチェックの記録は役所や警察に提出しなければならない?
現時点でアルコールチェックの記録を提出することは義務付けられていません。ただし、業務において交通事故を起こしてしまった場合に記録の提出を求められる可能性があるため、法律で定められているとおり、1年間は必ず保存するようにしましょう。
アルコールチェック義務化による業務負担
アルコールチェック義務化によって、安全運転管理者もドライバーも業務が増えました。両者にとってどんな負担がかかってしまうのか、具体的に解説します。
安全運転管理者の負担
安全運転管理者は、原則として運転前後のアルコールチェックに立ち合わなくてはいけないため、ドライバーの人数が多い場合や社用車の利用頻度が高い場合は特に負荷がかかります。
また、アルコールチェック記録を1年間保管することが義務付けられたため、ドライバー全員から漏れなく記録を回収し、記録内容に不備等がないかを確認し、適宜修正を依頼した上で日ごとに並べて保管しなくてはなりません。
紙の場合は特に、回収にも手間がかかり、内容確認にも結構な時間が必要になります。記録内容の不備を見逃してしまうリスクもあります。また、紙の量も膨大になるので広めの保管スペースが必要になり、綺麗に保管するのも大変です。
ドライバーの負担
ドライバーは運転前後にアルコールチェックを受けなくてはいけないため、外出時間に余裕を持って行動する必要があります。また、紙で記録する場合は記入する時間や提出する手間が発生します。本来の業務に集中したいのに、アルコールチェックに時間を取られるといった意見もあります。
業務負担軽減のために「車両管理システム」が注目されている
そもそも、車両管理システムとは
車両管理システムとは、社用車やリース車などの車両を効率よく管理することができるシステムのことです。
具体的には、アルコールチェック義務化の対応をまるごと行うことができるシステム、1台の車を複数人で使う場合の予約管理ができるシステム、運転日報や日常点検などの書類をデータで管理できるシステム、走行距離を計測して最適なルートを教えてくれるシステムなどがあります。
2017年の中型トラックに対するタコグラフ搭載義務化をきっかけに車両管理システムの需要が一気に高まり、2016年から2022年の間で、車両管理システムを導入した車両台数は約3.7倍になりました。
飲酒運転防止に対する企業の意識も高まるとともに、車両管理システムが注目されるようになりました。また、働き方改革により、労働時間の見直しが図られる中で、社用車管理業務の負担を軽減させるために、車両管理システムを導入する企業も増えました。
なお、車両管理システムについては以下の記事で詳しく解説しています。サービスごとの特徴もまとめているので、ぜひご覧ください。
車両管理システムの8つのメリット
管理者のメリット
管理者にとってのメリットは以下の4つが挙げられます。
- 管理工数の削減
車両予約や鍵の受け渡し、アルコールチェックにかかる時間を短縮したり、記録類をペーパーレス化して一元管理することで、抜け漏れを防止したりすることができ、工数削減につながります。 - 生産性向上
アルコールチェック記録や運転日報のデジタル化など、ドライバーの負担を軽減する機能を備えたシステムを導入すると、ドライバーは本来の業務に集中できる時間が増えるので、生産性の向上が見込まれます。 - 経費削減
デジタルキー機能や動態管理機能、車両稼働状況集計機能などを活用することで、車両の正確な稼働状況を把握し、車両台数の最適化を行うことができます。 - コンプライアンス遵守
交通安全の確保はもちろん、法令違反や交通事故によるイメージダウンや社会的信用を失うことを避けるためにも、企業はアルコールチェックを確実に実施しなければなりません。 車両管理システムは、アルコールチェックの不正防止や、厳格な飲酒運転対策にも有効であり、コンプライアンス遵守をサポートします。
ドライバーのメリット
ドライバーにとってのメリットは以下の4つが挙げられます。
- 利便性の向上
外出先からでも簡単に車両の空き状況が確認でき、その場で予約が完了できるため、利便性が向上します。また、外出先でアルコールチェックを行う場合も、測定結果が自動でクラウド上に保存されるため、管理者にメールやチャットで提出する手間を解消できます。 - 管理者とやり取りする手間を削減
車両管理システムを活用すると、システム上で完結する業務が増え、これまで記録類の提出などで発生していた管理者とのやり取りの負担や手間を軽減することができます。 - 長時間労働の解消
ドライバーにとって負担になりがちなアルコールチェック記録や日報類の作成を自動化・ペーパーレス化することで、作成にかかる手間や時間を削減でき、長時間労働の解消に役立ちます。 - 働きやすさの向上
鍵の返却やアルコールチェック、日報類の提出のために管理部署に赴く必要があるという企業も多いかと思います。 デジタルキー機能や日報類のデジタル化機能が搭載されたシステムを導入すれば、鍵の受け渡しや日報類の対面での提出が不要になるため、直行直帰やテレワークなどの選択肢が広がり、働きやすさの向上をもたらします。
車両管理システムの中には、アルコールチェックの未実施や未記入があるとドライバー本人や管理者に通知され、抜け漏れを防ぐ機能がついているものも多く、アルコールチェック義務化への対応を徹底するのに役立つでしょう。
また、アルコールチェックが未実施の場合や、基準値を超えるアルコール量が検出された場合には、車の解錠やエンジンの始動を物理的に制限することで、飲酒運転を防止できるシステムもあります。
紙やExcelで運用し始めたものの、実施忘れや記載内容の不備があり悩んでいる・・・という方は、こうしたシステムの機能に頼ってみてもよいかもしれません。
システムを用いたアルコールチェックの運用例
車両管理システムを用いてアルコールチェックを実施する場合の流れを、弊社の提供する車両管理システム「Bqey(ビーキー)」を具体例として用いて説明します。
1.安全運転管理者の立ち合いのもと、運転前のアルコールチェックを行います。測定数値など一部の情報は自動入力されるため、その他必要な情報をドライバーがBqeyのアプリに入力します。
2.運転後も同様にアルコールチェックを行い、そのままアプリから提出します。
3.提出された記録はすぐにシステムに反映され、安全運転管理者はリアルタイムで記録を確認することができます。データは自動で3年間システムに保存されます。
未提出や未記入があった場合には、ドライバーに自動で通知が届くので、管理者のチェックの手間を大幅に省きます。概算にはなりますが、社用車を5~6台と仮定した場合は、アルコールチェック記録のとりまとめにかかる時間が30分から5分程度に、回収した書類の確認・保管にかかる時間が20分から5分程度に削減が見込まれます。
このように、車両管理システムを活用するとアルコールチェックに関して、安全運転管理者・ドライバーの双方にとっての業務負担を軽減することができます。
また、アルコールチェックだけでなく、システム上で車両の予約管理をしたり、運転日報や日常点検等の記録をデータで一元管理したりすることができるなど、車両管理システムには様々な機能があります。
自社に合った車両管理システムの選び方を知りたい方は、『車両管理システムの選び方』をダウンロードしてみてください。自社の抱える課題を整理するためのチェックシートも掲載しているのでぜひ活用してください。
まとめ
今回はアルコールチェック義務化について解説しました。義務化の内容を抜粋すると以下のとおりです。
対象
・「乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している」または「その他の自家用自動車を5台以上使用している」のいずれかに当てはまる企業および事業所
内容
・2022年4月から「目視等によるアルコールチェックの実施」と「アルコールチェックの記録・保存(1年間)」が義務化された
・2023年12月から「アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックの実施」と「アルコールチェッカーを常時有効に保持すること」が義務化された
アルコールチェック義務化により、安全運転管理者もドライバーも業務負担が大きくなりました。コンプライアンス遵守のためにアルコールチェックは徹底したいけれど、なるべく業務負担も減らしたい・・・という方は、車両管理システムを活用するのもおすすめです。自社に合ったアルコールチェックの運用方法を確立し、飲酒運転の防止に努めましょう。
「アルコールチェックの運用大変そう...」と思った方へ
義務化対応としてのアルコールチェックの運用は、安全運転管理者にとってもドライバーにとっても負担がかかります。双方の負担を軽減しながら効率的にアルコールチェックを実施する手段として、「車両管理システム」の需要が高まってきています。 車両管理システムを導入すると、以下のようなメリットがあります。
- アルコールチェック記録や日報類をペーパーレス化することで、提出やチェックの手間を軽減できる
- 現在地の取得や写真の添付機能を活用して、アルコールチェックを厳格に行うことができる
車両管理システム「Bqey」はアルコールチェック義務化対応はもちろん、それ以外の車両に関する業務をまとめて効率化できるシステムです。「Bqey」について知りたい方は、こちらから資料をダウンロードしてください。