飲酒運転の基準と罰則|お酒の分解時間や違反を防ぐポイントも解説
業務で車の運転をするにあたり、飲酒運転は従業員本人のみならず企業にも重大なリスクを及ぼします。飲酒運転の防止について従業員教育を徹底するためにも、飲酒運転の罰則やリスクについて把握しておきましょう。
本記事では、飲酒運転の基準と行政処分、罰則について詳しく解説し、飲酒運転防止のポイントを紹介します。
「アルコールチェック」について理解して
飲酒運転を防ごう!
道路交通法により、一定台数以上の社用車を使用する事業所には、検知器を用いたアルコールチェックが義務付けられています。
自社は対象なの?何をすればいいの?という疑問を解決する資料をご用意しました。
【資料でわかること】
- アルコールチェック義務化の概要
- 義務化の対象となる事業所の条件
- 具体的にやるべきことは何か
- アルコールチェックを怠った場合の罰則
この一冊に、アルコールチェック義務化の対応に必要な情報がまとまっています。
法令を遵守した運用をするために、ぜひ本資料をご活用ください。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
飲酒運転の基準とは
飲酒運転は、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」という2つに大別され、いずれも道路交通法で定められています。
酒気帯び運転も酒酔い運転も、運転者や同乗者だけでなく、通行人や所属する企業などにも多大なリスクを負わせる行為です。特に企業においては、従業員が飲酒運転を行うことで企業全体が社会的信用を損ない、今後の経営に多大な影響を及ぼす可能性があります。
飲酒運転を未然に防ぐためにも、まずは酒気帯び運転と酒酔い運転の罰則・処分対象となる基準を明確に把握しておくことが大切です。
酒気帯び運転
酒気帯び運転の罰則・処分は、血液中または呼気中に一定量のアルコールが検出された場合に適用されます。
具体的には、血液中アルコール濃度0.3 mg/mLまたは呼気中アルコール濃度0.15 mg/L以上の場合です。
この基準を超えると、たとえ本人が「酔っていない」と感じていても、法律的には酒気帯び運転の処分を受けることになります。 根拠となる法令は以下のとおりです。
”第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
三 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの”
(引用:道路交通法)
(アルコールの程度)
”第四十四条の三 法第百十七条の二の二第一項第三号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇・三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇・一五ミリグラムとする。”
(引用:道路交通法施行令)
しかし、アルコールに対する耐性には個人差があります。そのため、アルコール濃度が基準値を下回っていても本人の動作や反応に異常が見られれば、次に解説する「酒酔い運転」と見なされる可能性があります。
酒酔い運転
酒酔い運転は、酒気帯び運転のように体内のアルコール濃度で判断するのではなく、運転者の状態で判断します。飲酒によって正常な運転ができない状態、つまり客観的に酔っていると判断される場合に酒酔い運転と見なされます。警察官は、運転者が以下のような状態にある場合に酒酔いと判断します。
- まっすぐ歩くことができない
- 明らかに呂律が回っていない
- 質問に対する受け答えがまともにできない
飲酒運転の行政処分と罰則
酒気帯び運転と酒酔い運転には、厳しい行政処分と罰則が適用されます。運転者本人だけでなく、車両等の提供者や、酒類の提供者、車両の同乗者にも罰則が設けられています。具体的な内容について詳しく見ていきましょう。
運転者に対する行政処分と罰則
運転者には以下の行政処分と罰則が科されます。酒気帯び運転の場合
- 行政処分
基礎点数:13点
免許停止:期間90日※1
アルコール基準値が0.25 mg/L以上の場合
基礎点数:25点
免許取消:欠格期間2年※1, 2
- 罰則
酒酔い運転の場合
- 行政処分
免許取消:欠格期間3年※1, 2
- 罰則
(※1)前歴およびその他の累積点数がない場合
(※2)「欠格期間」とは、運転免許の取消し処分を受けたものが再取得することができない期間のこと
車両等の提供者に対する罰則
飲酒運転をした運転者に車を貸し与えた者も、運転者と同等の罰則を科されます。たとえば、従業員が飲酒運転をした場合、車両の提供者である企業の代表者や責任者も罰則を科されます。
酒気帯び運転の場合
罰則
酒酔い運転の場合
- 罰則
酒類の提供者・車両の同乗者に対する罰則
お酒を提供した人や一緒に車に乗っていた人も、罰則の対象になります。
酒気帯び運転の場合
- 罰則
酒酔い運転の場合
- 罰則
アルコールの分解時間はどれくらい?
知らず知らずのうちに飲酒運転をしてしまわないように、アルコールの分解時間の目安を把握しておくことは非常に重要です。
アルコールが分解されるまでの時間を計算するためには、純アルコールに関する理解が必要です。 ここでは成人男性を例に、お酒の種類ごとのアルコール分解時間について紹介します。
純アルコール量とは
純アルコール量とは、飲酒時に摂取するアルコールの正確な量を指します。お酒の種類や量に関わらず、アルコールそのものがどれだけ含まれているかを表す数値です。
厚生労働省の基準によると、健康に影響を与えない適度な飲酒量とされているのは、1日あたり純アルコール量20gです。
これは「アルコールの1単位」とも呼ばれ、一般的な適量の目安となっています。
純アルコール量は、飲み物の容量(mL)とアルコール度数(%)がわかれば計算できます。計算式は次のとおりです。
純アルコール量 (g)=容量 (mL)×アルコール度数 (%)×0.8
この「0.8」という数値はアルコールの比重です。水の比重を1としたとき、アルコールは水より軽いため、0.8という数値が使われます。
純アルコール量と分解時間
一般的な目安として、純アルコール量20 gを分解するのにかかる時間は、成人男性で約4~5時間です。
ビール、ワイン、焼酎など、主なお酒に含まれる純アルコール量と、それが体内での分解時間について表にまとめたので参考にしてください。
お酒の種類 | 容量 | 度数 | 純アルコール量 | 単位換算 | 分解時間の目安 |
---|---|---|---|---|---|
ビール(大瓶) |
633mL |
5% |
25.3g |
1.3 |
5~6時間 |
ビール(ロング缶) |
500mL |
5% |
20g |
1 |
4~5時間 |
ビール(レギュラー缶) |
350mL |
5% |
14g |
0.7 |
3~4時間 |
ワイン(グラス1杯) |
125mL |
12% |
12g |
0.6 |
2.5~3時間 |
日本酒(1合) |
180mL |
15% |
21.6g |
1.1 |
4~5時間 |
焼酎(ロック1杯) |
60mL |
25% |
12g |
0.6 |
2.5~3時間 |
チューハイ(1缶) |
350mL |
5% |
14g |
0.7 |
3~4時間 |
梅酒(ロック1杯) |
60mL |
14% |
6.7g |
0.3 |
1.5~2時間 |
ウイスキー(ダブル1杯) |
60mL |
40% |
19.2g |
1 |
4~5時間 |
泡盛(ロック1杯) |
60mL |
30% |
14.4g |
0.7 |
3~4時間 |
このように、お酒によってアルコール度数や1杯あたりの量が異なるため、摂取する純アルコール量も変わってきます。
表を参考にしつつ、自分の飲酒量や適量を把握することが大切です。
なお、アルコールの分解時間には、性別、年齢、体格などの要因により個人差があるため、注意が必要です。
以下の記事では、個人差が生じる要因や、アルコール分解時間の計算ツールなどを紹介しています。合わせてご覧ください。
知っておきたい飲酒運転のリスクと現状
アルコールに強い人や、普段からお酒を好む人は「少量なら大丈夫」と感じ、飲酒後にもかかわらず運転しようとする可能性があります。
しかし、どれだけ飲み慣れていてもアルコールの影響を避けることはできません。
アルコールは判断力を鈍らせ、反応速度を遅らせるため、飲酒後の運転は非常に危険です。飲んだ本人に自覚がなくても、適切な運転ができずに思わぬ事故につながることがあります。
飲酒運転による交通事故の発生状況を踏まえ、飲酒運転がもたらすリスクについて紹介します。
飲酒運転事故の発生状況
飲酒運転による交通事故や死亡事故は、平成14年以降の法改正や社会的な動きを背景として全体的に減少傾向にあります。
しかし、警察庁の発表によれば、令和5年中における飲酒運転による交通死亡事故は112件と前年よりも8件減少したものの、飲酒運転による交通事故自体の発生件数は前年より179件増加し、2,346件となりました。
減少幅は平成20年以降ゆるやかになってきており、飲酒運転根絶にはさらなる対策が必要と考えられます。
また、飲酒運転による死亡事故率は、飲酒していない場合と比べて約6.1倍にもなるというデータがあります。このことからも、飲酒運転のリスクの高さがわかります。
参照元:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警察庁Webサイト
飲酒運転がもたらすリスク
飲酒運転が危険なのは、アルコールが脳の働きを抑制し、正常な判断や反応を妨げるためです。運転に必要な能力が著しく低下することにより、交通事故を引き起こしやすくなります。
反応速度の低下:危険に気付いても、ブレーキを踏むのが遅れる
注意力の低下:周囲の車両や信号、歩行者への注意が散漫になり、事故の前兆を見逃す
判断力の低下:適切な判断ができなくなり、無理・無謀な運転操作を行う
気分の高揚:自信過剰になり、スピードを出しすぎるなど、危険な運転行為をしやすくなる
飲酒運転は、ドライバー自身や第三者の命に関わる重大なリスクです。これは一人ひとりの心がけで防ぐことが可能であり、絶対に避けましょう。
さらに、従業員が飲酒運転による交通事故を起こすと、企業にも大きなリスクが生じます。
①法的責任のリスク
従業員が業務中に交通事故を起こした場合、企業は「使用者責任」を問われる可能性があります。
アルコールチェックが義務付けられている企業では、管理者の業務怠慢と見なされることもあります。
②経済的損失のリスク
被害者に対する損害賠償や慰謝料、車両の修繕費、訴訟費用が発生する可能性があるだけでなく、事故対応に時間や労力を要することで通常業務が停滞し、営業機会の損失につながるおそれもあります。
③信頼性低下のリスク
従業員が飲酒運転による交通事故を起こすと、従業員教育が不十分であると見なされ、顧客や取引先からの信頼を失います。
企業のブランドイメージが大きく損なわれ、長期的なビジネスリスクとなる可能性もあります。
企業の飲酒運転を防ぐ3つのポイント
従業員の飲酒運転は、人の命に関わるのはもちろん、企業のブランドイメージの低下など、多くのリスクを引き起こします。
したがって、企業は従業員の飲酒運転を防ぐために適切な対策を講じる必要があります。ここでは、飲酒運転を防止するための3つの対策を紹介します。
①安全運転教育の実施
全社を挙げて、飲酒運転を防止するための安全運転教育を行いましょう。社内で定期的に研修を実施し、飲酒運転の危険性や法的責任、違反した場合のリスクについて、従業員に周知徹底することが必要です。
飲み会や接待など、アルコール摂取が避けられない場面でも、飲酒運転を防ぐためのルールを整えることが重要です。
たとえば、飲み会の際には事前にお酒を飲まない「ハンドルキーパー」を決める方法があります。また、翌日の業務に影響が出ないよう、飲酒量を制限する時間設定をするのも有効です。
さらに、タクシーや運転代行サービスの利用を奨励する企業文化を醸成することも大切です。
このように、企業全体で飲酒運転を防ぐ体制や風土を整備することが求められます。
②飲酒運転に対する社内処分の明確化
飲酒運転に関する社内処分を明確に定めることも、有効な抑止力になります。
飲酒運転が発覚した場合の処分内容を全従業員に事前に通知し、違反が発生した際には厳正に対応する方針を徹底しましょう。
従業員に飲酒運転のリスクと責任を強く意識させることで、飲酒運転の未然防止につながります。
③アルコールチェッカーの導入
飲酒運転防止のルールがあっても、「発覚しなければ大丈夫」と考える従業員がいるかもしれません。それには、アルコールチェッカーの導入が効果的です。
アルコールチェッカーとは、呼気中のアルコール濃度を測定する機器のことです。比較的安価に入手できるため、小規模な企業でも簡単に導入できます。
出社時や業務開始前にアルコールチェックを実施することで、飲酒状態での運転を未然に防ぐことが可能です。
特に社用車や営業車を使用する従業員には、厳格なチェック体制を整え、アルコールが検出された場合には即座に対応できる仕組みを整備することが重要です。
一部の企業においては、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが法律で義務付けられています。
なお、アルコールチェッカーの正しい使い方やメンテナンス方法などについては、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
アルコールチェック義務化について
アルコールチェック義務化とは、2022年4月と2023年12月に段階的に施行された改正道路交通法により、それまで義務がなかった「白ナンバー」の社用車や営業車を一定台数以上使用している企業に対し、アルコールチェックの実施が義務付けられたことを指します。
なお、トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車、いわゆる緑ナンバーについては、以前からアルコールチェックが義務付けられています。
他にも建設現場や公共交通機関といった、特に安全性が重視される業種においても、アルコールチェックが実施されています。
『5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべて』では、イラストを用いてわかりやすく説明しています。ぜひ手元に置いて参考にしてください。
義務化の内容とスケジュール
アルコールチェック義務化の背景には、2021年6月に千葉県八街市で発生した交通事故があります。飲酒運転のトラックが下校中の小学生の列に突っ込み、児童2人が死亡、3人が重傷を負う大事故でした。
事故後、運転者の呼気からは基準値を上回るアルコールが検出されましたが、運転者が乗っていたのは、当時アルコールチェックが義務付けられていなかった白ナンバーのトラックでした。
この事故を受け、白ナンバーに対する飲酒運転防止を目的としてアルコールチェックが義務化されたのです。二段階に分けて施行された義務化の内容とスケジュールは以下のとおりです。
2022年4月に施行された内容(第一段階)
飲酒運転による交通事故を今まで以上に厳格に防止するために、まずは運転前と運転後の計2回、ドライバーに対してアルコールチェックを実施し、その記録を管理することが義務化されました。
ただし、第一段階では、アルコールチェックの際にアルコールチェッカー(アルコール検知器)を用いることまでは義務化されず、「目視等」で実施すればよいとされていました。
2022年4月1日から義務化された内容は、具体的には以下のとおりです。
- 運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無の確認をすること
- 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
(道路交通法施行規則第9条の10)
2023年12月に施行された内容 (第二段階)
第二段階では、さらに厳格なアルコールチェックの実施が必要となりました。第一段階では「目視等」での実施に留められていましたが、第二段階では「アルコールチェッカー」を用いたアルコールチェックが義務付けられました。
また、アルコールチェッカーは定期的に点検を行い、いつでも正確に測定できる状態にしておくことも義務化の内容に含まれています。
アルコールチェッカーの使用について、当初は2022年10月1日から義務化される予定でしたが、アルコールチェッカーの供給不足等を踏まえて延期となっていました。
(参照:警察庁の発表文書)
その後、安全運転管理者へのアンケートやアルコールチェッカー製造業界からの意見等により、アルコールチェッカーの供給状況は改善傾向にあると認められ、飲酒運転防止を図るためには早期にアルコールチェッカーを導入することが望ましいとの見方から、2023年12月1日に義務化開始となりました。
2023年12月1日から義務化された内容は、具体的には以下のとおりです。
- 運転者の酒気帯びの有無の確認を、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーを用いておこなうこと
- アルコールチェッカーを常時有効に保持すること
(道路交通法施行規則第9条の10)
なお、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーとは、、”呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器”を指しており、これを満たしたアルコールチェッカーであれば問題なく使用できます。
二段階にわたるアルコールチェック義務化の内容を図でまとめると以下のとおりです。
対象となる事業所
アルコールチェック義務化の対象となるのは、以下の条件に当てはまる企業や事業所です。
- 乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用している
- 5台以上の自動車を使用している
(ただし、原動機付自転車を除く自動二輪は、1台を0.5台として計算)
対象の事業所は、アルコールチェック義務化に確実に対応しなければなりません。具体的な実施方法や記録項目などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ
飲酒運転は人の命に関わる重大な違反行為であり、厳しい処分や罰則が適用されます。飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があり、それぞれの基準と処分内容を正しく理解することが大切です。自覚のないまま飲酒運転してしまわないように、体内でのアルコール分解時間の目安を把握しておくとよいでしょう。
また、飲酒運転は企業にとっても重大なリスクを伴います。従業員の飲酒運転防止には、安全運転教育の実施、社内処分の明確化、アルコールチェッカーの導入が重要です。特に、アルコールチェック義務化の対象企業は、必ず実施するようにしてください。
飲酒運転の危険性や罰則を正しく理解し、安全運転の確保に努めましょう。
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