【2024年11月】自転車の飲酒運転への罰則強化!免許停止になるケースも
これまで「飲酒運転」といえば、自動車に関する違反行為として認識されていました。しかし、2024年11月に施行された道路交通法の改正により、自転車における酒気帯び運転にも罰則が適用されるようになりました。
自転車通勤を行っている従業員がいる企業では、飲酒運転に対するリスク管理が求められます。
本記事では、今回の法改正によって自転車の飲酒運転に関する法律や罰則がどのように変わったのかを詳しく解説します。
また、「飲んだら乗るな」という意識を社内で高め、飲酒運転を未然に防ぐために必要なポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「アルコールチェック」について理解して
飲酒運転を防ごう!
道路交通法により、一定台数以上の社用車を使用する事業所には、検知器を用いたアルコールチェックが義務付けられています。
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法令を遵守した運用をするために、ぜひ本資料をご活用ください。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
自転車の飲酒運転は法律違反
”第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。”
(引用:道路交通法)
自転車は運転免許が不要で、老若男女が運転できる乗り物です。多くの人が日常的な移動手段として自転車を利用していますが、自動車やその他の車両同様、道路交通法に則った正しい運転が必要です。
飲酒して判断力が低下した状態で自転車を運転することは非常に危険で、飲酒運転をすれば自動車と同様に罰則や罰金が科されます。
実際に、飲酒運転による歩行者や他の車両との衝突事故が発生しています。ひとたび事故が起きると被害者や加害者だけでなく、双方の勤務先にとっても大きな負担となるケースが増えています。
通勤に自転車を使う社会人も多いですが、自動車と異なり免許が不要であるため、交通ルールの遵守や飲酒運転の禁止について認識が甘くなってしまうことも考えられます。
自転車通勤をする従業員を抱える企業としては、法令を遵守した運転を徹底し、飲酒運転や交通事故を未然に防ぐための対策を講じる必要があります。
自転車も「車両」扱いになる
自転車は、道路交通法において「軽車両」に分類されています。軽車両とは「原動機のない車両」と定義されており、動力としては人力または動物の力を使います。
これに該当するのが、自転車や荷車、馬車、そりなどです。
「軽」の字が付くため、軽車両が「軽自動車」を指すと勘違いされることがあります。しかし、同法では自転車も車両として扱われ、自動車と同様に道路交通法に則り交通ルールを守る義務があります。したがって、飲酒運転を行えば法律違反となり、罰則が科されます。
(参照元:道路交通法 第二条十一項)
自転車の飲酒運転に対する罰則
2024年11月1日に改正道路交通法が施行されました。今回の改正には、自転車による交通事故防止を焦点にした内容が多く盛り込まれています。
これまで自転車の飲酒運転については、飲酒の程度が著しい「酒酔い運転」のみに罰則が設けられていましたが、今回の改正で「酒気帯び運転」に対する罰則が追加されました。
このほか、スマートフォンの普及により自転車の「ながら運転」による事故も増加傾向にあるため、これに対する罰則が厳しくなっています。
法改正により酒気帯び運転も罰則対象に
従来より、酩酊状態で運転を行う「酒酔い運転」については「すべての車両等」が罰則対象とされていたため、自転車についても「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されていました。
一方、「酒気帯び運転」については「軽車両を除く車両等」が罰則対象とされていたため、軽車両である自転車は対象外でした。
しかしながら、自転車の酒気帯び運転が重大な交通事故を引き起こすケースが多いことから、これを防止する目的で、道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号)が2024年5月24日に公布されました。
この法改正は2024年11月1日に施行され、自転車も酒気帯び運転の罰則対象に含まれることになりました。
違反者には「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されます。自動車の運転には免許が必要であるため、酒気帯び運転をした場合には免許停止や違反点数の付与といった行政処分が科されますが、自転車の場合は免許がないため、運転の権利をはく奪するような行政処分はありません。
なお、この法改正では違反者本人だけでなく、自転車の提供者や、酒類の提供者・自転車の同乗者にも罰則が設けられました。具体的な罰則内容を以下の表にまとめました。
違反種別 | 対象者 | 罰則 |
---|---|---|
酒気帯び運転 |
血液中アルコール濃度0.3mg/mL以上または呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上の状態で運転した者 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒酔い運転 |
アルコールの影響により正常な運転ができない状態にもかかわらず運転した者 |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
ほう助(車両提供) |
酒気帯び運転または酒酔い運転を行う者に対し、自転車を提供した者 |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
ほう助(同乗・酒類提供) |
酒気帯び運転または酒酔い運転を行う者に対し、同乗または酒類を提供した者 |
2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
酒気帯び運転と酒酔い運転の違い
法律上、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」は明確に区別されています。酒気帯び運転は、血液中のアルコール濃度が0.3 mg/mL以上、または呼気中のアルコール濃度が0.15 mg/L以上の場合に適用されるもので、運転者に酔った自覚や症状がなくても処罰の対象となります。
一方、酒酔い運転は、アルコールの影響で正常な運転ができない状態を指します。顔が赤い、呂律が回らない、まっすぐ歩けないなど、見た目や行動から明らかに酩酊していると確認される場合に適用されます。
いずれも罰則がありますが、特に酒酔い運転は判断力の低下により事故を引き起こす可能性が非常に高いため、酒気帯び運転よりも重い罰則が科されるのが特徴です。どちらも交通事故につながる危険性があるため、厳重に取り締まりが行われています。
酒気帯び運転と酒酔い運転の違いや、自動車の飲酒運転に対する処分内容については、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
自転車の飲酒運転で免許停止になることも
自転車の運転には免許が必要ないため、自転車に対する飲酒運転による運転権利の剥奪や行政処分は存在しません。
しかし、自動車の運転免許を保持している場合、自転車での飲酒運転によって自動車の免許停止処分を受ける可能性があります。道路交通法では、以下のように規定されています。
(免許の取消し、停止等)
”第百三条 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
(中略)
八 前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。”
(引用元:道路交通法)
この条において「自動車等」の具体的な種類は明示されていませんが、自転車は軽車両であり、車両の一種であるため「自動車等」に含まれると解釈されます。
たとえば、自転車の飲酒運転によって人身事故を引き起こしたことにより、交通モラルが低く、今後自動車でも飲酒運転を行う可能性が高いと判断されたケースでは、この法律を根拠に、免許の取り消しや停止になることが考えられます。
自転車の飲酒運転で事故を起こした場合の過失割合
自転車の飲酒運転は運転者の責任が問われるため、事故が発生した場合の過失割合は、運転者に大きく偏ることが一般的です。自転車の飲酒運転で事故を起こした際の過失割合について、相手がそれぞれ歩行者・自転車・自動車の場合に分けて解説します。
対歩行者の場合
飲酒運転をしている自転車が歩行者と衝突事故を起こした場合、ほぼ確実に自転車側の過失が大きくなります。歩行者は、道路交通法上で最も保護されるべき存在とされています。
特に、横断歩道や歩道など、歩行者の安全に配慮された場所での事故の場合、自転車側の過失割合が100%となることがあります。
歩行者側に、ななめ横断や飛び出しなどの過失がある場合には、その分歩行者の過失が加算されることもありますが、自転車側が飲酒運転をしている場合、最終的に自転車側の過失割合が100%に近くなることが多いと考えられます。
対自転車の場合
自転車同士の事故の場合、状況にもよりますが、通常の過失割合はそれぞれ50%です。
しかし、片方が飲酒運転であった場合には過失割合が変動し、酒気帯び運転では5~10%程度、酒酔い運転では5~20%程度が加算されるのが一般的と考えられます。
対自動車の場合
自動車と自転車の衝突事故の場合、過失割合は一般的に自動車側のほうが高くなります。自動車は自転車に比べてスピードが速く、車体も大きいため、衝突すると自転車の運転者に多大な被害をもたらす可能性が高くなります。
さらに、自動車には免許制が導入されているため、「飲酒運転の自転車が突然飛び出してきた」といった状況に対しても、万が一の事態を予想して注意を払う義務があります。
そのため、自動車側が安全運転を心がけていても、自動車側の過失割合が高くなる傾向にあります。
ただし、自転車側にも過失が全くないわけではありません。他のケースと同様、飲酒運転は重大な過失とみなされ、酒気帯び運転の場合は5~10%程度、酒酔い運転の場合は5~20%程度が過失割合に加算されます。
自転車の「ながら運転」も厳罰化
先述のとおり、道路交通法の改正により、飲酒運転の罰則強化に加えて「ながら運転」に関する罰則も強化されています。
これまで、自転車の「ながら運転」に対する罰則は「5万円以下の罰金」のみでしたが、今回の改正により、自転車も原付や自動車に準じた罰則を受けることになります。
具体的には、スマートフォンなどを手に持ち、画面を見ながら運転すると「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます。
また、「ながら運転」の結果として交通事故を起こすといった交通の危険を生じさせた場合、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」というさらに重い罰則が科されます。
自転車運転者講習制度の対象に
自転車運転において、3年以内に2回以上、交通の危険を生じさせるおそれのある違反行為(危険行為)を行った者は「自転車運転者講習制度」に則って自転車運転者講習を受けるように命じられます。
今回の法改正により、酒気帯び運転とながら運転も同講習の対象となる「危険行為」に追加されました。
自転車運転者講習制度とは
自転車運転者講習制度は、交通ルールを守らず繰り返し違反する自転車運転者に対して、交通安全に関する知識を再度学んでもらうことを目的とした制度です。
運転者は居住する都道府県の公安委員会から受講命令を受け、指定された運転免許センターなどで講習を受講します。
講習は3時間にわたり、交通ルールの遵守や安全運転の重要性を学びます。実技はありませんが、テストやディスカッションが含まれます。また、講習手数料として6,000円が必要です。
自転車運転者講習制度の対象となる危険行為には、信号無視や遮断機が下りた踏切への立入りなどが含まれます。
今回新たに追加された酒気帯び運転・ながら運転のほか、危険行為として掲げられているものは以下のとおりです。
危険行為(15類型)
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩行者用道路徐行違反
- 通行区分違反
- 路側帯進行方法違反
- 遮断踏切立入り
- 交差点安全進行義務違反等
- 交差点優先車妨害等
- 環状交差点安全進行義務違反等
- 指定場所一時不停止等
- 歩道通行時の通行方法違反
- 制動装置不良自転車運転
- 酒酔い運転
- 安全運転義務違反
- 妨害運転
(引用元:警視庁|自転車運転者講習制度)
受講しなかった場合の罰金
自転車運転者講習制度は任意ではなく、義務です。受講命令を受けた者が講習を受けない場合、5万円以下の罰金が科されます。
また、受講期限が定められており、都道府県公安委員会が講習命令書を交付した日から3カ月以内に講習を受ける義務があります。
これに従わない場合は罰金の対象となるため、注意が必要です。
受講を怠ると罰金を支払わなければならないだけでなく、交通ルールを再学習する機会も失われてしまいます。再び違反行為や事故を起こさないためにも、受講命令に従って講習をしっかりと受けることが重要です。
企業の飲酒運転を防ぐ3つのポイント
自転車は通勤手段としても利用されるため、企業にとっても従業員が自転車で飲酒運転してしまうリスクは無視できません。
飲酒運転が企業の信用や経営に与える影響は大きく、従業員や社会全体を守るためにも、企業全体で飲酒運転の防止に取り組むことが求められます。
従業員の安全運転意識を高め、事故を防止するための効果的な施策について、以下3つの取り組みを紹介します。
安全運転教育の実施
まず、社員に対して定期的に安全運転教育を実施する必要があります。自動車だけでなく、自転車を利用する社員に対しても同等の教育を行うことが望ましいです。
交通ルールの徹底はもちろんのこと、飲酒が運転に与える影響、飲酒運転時のリスク・罰則、その後の生活への影響についても理解を深めてもらうことが大切です。
飲酒運転による交通事故の具体的な事例を紹介し、現実感を持ってもらうことも検討してください。
さらに、飲酒の予定がある場合は自動車を使用しないよう徹底させ、タクシーや運転代行の利用を推奨することも有効です。
自転車についても、必要に応じてその場に置いて帰る、または徒歩で押して帰ることをすすめましょう。自転車を押して帰る場合、飲酒運転には該当しません。
安全な帰宅方法について社員に指導することで、一人ひとりが安全な行動を取りやすくなります。
飲酒運転に対する社内処分の明確化
企業として、飲酒運転を行った社員に対する処分を明確にしておくことは重要です。社内規程や就業規則において、飲酒運転が発覚した場合の罰則や対応策をあらかじめ定め、社員に周知しておきましょう。明確な規則は飲酒運転に対する抑止力となります。
たとえば、飲酒運転による懲戒処分や、事故を起こした際の賠償責任の明確化を取り決めるとよいでしょう。
万が一、違反が発生した際には、企業としての信頼を守るためにも曖昧にせず、厳格に対応する姿勢を保ちましょう。
アルコールチェッカーの導入
飲酒運転防止のルールがあっても、「発覚しなければ大丈夫」と考える従業員がいるかもしれません。それには、アルコールチェッカーの導入が効果的です。
アルコールチェッカーとは、呼気中のアルコール濃度を測定する機器のことです。比較的安価に入手できるため、小規模な企業でも簡単に導入できます。
タクシーやトラックなどの運転業務を行う企業では、アルコールチェックが義務付けられており、運転前後にアルコールチェッカーを用いて酒気帯びでないことを確認しています。
義務化の対象外の企業であっても、アルコールチェッカーは客観的な判断基準となるため、飲酒運転防止策の一環として、自転車・自動車通勤者に対してチェックする仕組みを整えておくことは非常に有効です。
なお、アルコールチェッカーの正しい使い方やメンテナンス方法などについては、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
まとめ
2024年11月の道路交通法改正により、自転車の飲酒運転に関して、従来の酒酔い運転に対する罰則に加え、酒気帯び運転に対する罰則が新たに導入されました。
これにより、違反者には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。
企業としては、自転車通勤者の安全を確保し、法令を遵守して事故の未然防止に努めることが求められています。具体的な対策として、安全運転教育の実施、飲酒運転に対する社内処分の明確化、アルコールチェッカーの導入などが有効です。
「飲んだら乗るな」という意識を徹底し、自転車も「車両」であるという認識を持って、安全な運転を心がけましょう。
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