安全運転管理者に必要な資格を解説|届出方法や罰則も紹介
2022年4月1日に改正道路交通法が施行され、2011年から緑ナンバーに義務付けられていたアルコールチェックの対象が、白ナンバーにも拡大されました。
それに伴い、自社の「安全運転管理者」について見直しを図っているという方もいるかと思います。そのような中で、
- そもそも自社は安全運転管理者の選任義務に当てはまるのか?
- 安全運転管理者になるために資格は必要なのか?
- 選任する際の具体的な手続きはどうするのか?
そこで本記事では、安全運転管理者に必要な「資格要件」や選任を怠った際の「罰則」、「届出方法」などについてわかりやすく解説します。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
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一定台数以上の社用車を使用する事業所には、安全運転管理者の選任が義務付けられています。「選任後は何をしたらいいの?」などの不安を解消できる資料をご用意しました。
【資料でわかること】
- 資格要件と9つの業務内容
- 安全運転管理者とは
- 選任対象となる事業所の条件
- 選任後に行う届出と法定講習
- 選任を怠った場合の罰則
押さえるべきポイントをわかりやすく解説しています!ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
安全運転管理者には資格が必要!
一定台数以上の自動車を使用する企業や事業所には、安全運転管理者を選任する義務があります。しかし、誰でも安全運転管理者になれるわけではありません。
まずはじめに、どのような人が安全運転管理者になれるのか、資格要件を確認しましょう。
安全運転管理者の資格要件
- 20歳以上
(副安全運転管理者が置かれている場合は30歳以上) - 自動車運転管理の実務経験が2年以上ある
- 過去2年以内に安全運転管理者の解任命令を受けていない
- 過去2年以内に違反行為をしていない
副安全運転管理者の資格要件
使用する自動車の台数が多い企業や事業所は、台数に応じて副安全運転管理者も選任しなければなりません。
副安全管理者になるには、道路交通法施行規則第9条の9第2項により、以下の要件を満たす必要があります。
- 20歳以上
- 自動車運転管理の実務経験が1年以上、または運転経験が3年以上ある
- 過去2年以内に安全運転管理者の解任命令を受けていない
- 過去2年以内に違反行為をしていない
自動車運転管理に関して、上記の条件と同等以上の能力があると公安委員会が認定した場合も、安全運転管理者や副安全運転管理者になることができます。
なお、緑ナンバーで選任が必要な運行管理者のように、特別な試験に合格する必要は今のところありません。
違反行為がある人は安全運転管理者等になれない
ただし、過去2年以内に安全運転管理者等の解任命令を受けた者や、違反行為をした者は、上記の条件を満たしていても安全運転管理者や副安全運転管理者になることができません。
例えば、以下のような行為が違反行為に該当します。
- ひき逃げ
- 酒酔い・酒気帯び運転
- 飲酒運転に関し車両などを提供する行為、酒類を提供する行為及び依頼・要求して同乗する行為
- 麻薬等運転
- 無免許運転、無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為
- 次の交通違反の下命・容認
酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反 - 自動車使用制限命令違反
- 妨害運転
引用:千葉県警察|安全運転管理者の選任
安全運転管理者には、安全運転の重要性を理解した上で、交通安全に配慮し、他の運転者の模範となることが求められます。そのためには法令遵守していることが非常に重要であり、違反行為がある人はこの要件を満たせないため、選任することができません。
企業や事業所は、安全運転管理者の選任にあたって、候補者の運転記録や違反履歴などを慎重に調査します。適格な人物を選任することで、組織全体の安全な運転環境の確保が可能となります。
改めて知りたい、安全運転管理者制度とは
安全運転管理者制度の内容と必要性について、いま一度確認しておきましょう。
安全運転管理者の全体像について、『安全運転管理者まるわかりガイド』にイラスト付きでわかりやすくまとめています。ぜひご覧ください。
安全運転管理者制度とは
安全運転管理者制度とは、企業や事業所が一定台数以上の自動車を使う際に、安全な運転環境を確保するために導入されました。
社用車や運送車両の運転の管理・監督を担当する「安全運転管理者」および「副安全運転管理者」を選任し、安全運転の推進や事故の防止に取り組むことを目的としています。
安全運転管理者は、運転者の教育・訓練や運転状況のモニタリング、安全対策の策定・実施などを担当します。
企業が安全運転管理者を選任する3つの理由
企業が安全運転管理者を選任しなければならない理由は大きく分けて3つあります。
①法令や規則を守るため
テレビや新聞等でも報道されるように、自動車による痛ましい交通事故は、残念ながらなくなることはありません。少しでもそのリスクを下げるため、安全運転に関する法令や規則は年々厳格化しています。
安全運転管理者制度もその取り組みのうちの一つであり、法令に基づいて選任が義務付けられています。
対象となる企業や事業所が選任を怠った場合、罰則が適用されることもあるため、確実に法令遵守することが求められます。
②安全な運転環境を整えるため
一定台数以上の自家用自動車を使用する企業や事業所は、日常業務に自動車の運転が伴います。
交通事故や違反行為は、人命に関わることはもちろん、企業や事業所の評判や信頼性にも大きな影響を与えます。そのため、安全運転管理者が運転状況の監視、安全対策の徹底、運転者への教育等を行い、事故防止や交通安全意識の醸成に取り組むことが重要となります。
③業務の効率化とコスト削減を図るため
安全運転管理者が適切な運行計画を作成することで、効率よく取引先を訪問したり荷物を運送したりできるようになります。また、運行ルートの最適化を図ることで、燃料のムダな消費を抑え、コスト削減を実現できます。
交通事故や違反が発生した場合、その内容によっては企業経営に大きなダメージを与えることもあります。安全運転管理者が業務を遂行し、交通事故やトラブルのリスクを低減することで、従業員の安全確保や、企業の信頼性や経営効率の向上にもつながるのです。
社用車の管理方法を見直して業務効率化を叶えた企業様の事例を、『成功事例から学ぶ最新社用車管理』でご紹介しています。自社の運用と見比べて、より効率的な社用車管理の運用方法を検討してみましょう。
選任義務の対象となる企業
安全運転管理者の選任義務の対象となるのは、以下のいずれかに該当する企業や事業所です。
- 乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している
- 5台以上の自家用自動車を使用している
(原動機付自転車を除く自動二輪は1台につき自動車0.5台として計算)
ただし、運送業で配置が義務付けられている「運行管理者」を選任している場合は対象外となります。
安全運転管理者と運行管理者の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。それぞれの選任義務の対象となる基準や、管理者の業務内容、違反行為に対する罰則について分かりやすく説明していますので、ぜひご覧ください。
参考記事:安全運転管理者と運行管理者の違いを解説!必要な資格や罰則も紹介
選任対象となる台数の算定や、記録を残すべき項目などについては、『安全運転管理者よくある質問集』でわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
安全運転管理者に選任すべき人数
自動車の台数が多い企業では、安全運転管理者が1人でよいのか、心配されている方もいるかと思います。
ここからは、安全運転管理者と副安全運転管理者それぞれの選任すべき人数について解説します。
安全運転管理者
安全運転管理者の選任義務対象となる企業や事業所は、事業所(自動車使用の本拠地)ごとに必ず1人を選任しなければなりません。
安全運転管理者は、使用している台数が10台でも100台でも、最低1人選任していれば問題ありません。
ただし、20台以上になると、副安全運転管理者を選任する必要があります。
副安全運転管理者
20台以上の自動車を使用している場合には、安全運転管理者に加えて、副安全運転管理者の選任も必要です。
副安全運転管理者は、主に安全運転管理者の補佐や代行を担います。使用する自動車台数が多い場合、安全運転管理者だけでは確実に業務を遂行するのが難しくなります。それをサポートし、安全運転を確保する環境を整えるために、副安全運転管理者は必要になるのです。
副安全運転管理者は、安全運転管理者とは異なり「20台ごとに1人」追加しなければならないため、注意してください。
自動車の所有台数によって、管理すべきことも変わります。台数が変動した際に管理業務の見直しを行わず、知らないうちに法令違反をしていた…といった状況は避けなければいけません。
『所有台数別でやるべきことが違う!?社用車管理完璧マニュアル』に台数別に管理すべきことをまとめましたのでぜひご覧ください。
選任後の届出方法
安全運転管理者等を選任したら、届出をする義務があります。届出を怠った場合には罰則が設けられていますので、以下の届出方法に従って確実に手続きを行ってください。
届出のタイミング
安全運転管理者等の選任や変更が行われた際には、届出が必要となります。
この届出は、選任や変更を行った日から15日以内に行わなければなりません。期限を守って届出を行うことを忘れないようにしましょう。
届出方法は3パターン
書類の届出方法は、以下の3パターンが用意されています。
①管轄する警察署の交通課窓口へ行く
②管轄する警察署の交通課へ郵送する ※一部対応していない都道府県もあります
③オンライン申請
現在は、利便性向上を目的として、警察庁による「警察行政手続きサイト」の試行的運用が開始され、オンラインで届出を行うことができるようになりました。
福岡県など7つの県については当該サイトに対応していませんが、いずれもオンライン申請は可能です。
サイト内に7つの県のリンクがあり、そちらから申請できるようになっているので、ぜひ活用してください。
↓オンライン申請のリンクはこちら↓
(運営元:警察庁)
届出に必要な書類
届出には一般的に以下の書類が必要となります。
- 選任届出書
- 住民票
- 運転免許証の表面および裏面の写し
- 運転記録証明書
- 運転管理経歴証明書 ※都道府県により不要な場合もあります
各種届出について、手続きそのものには特に手数料は必要ありませんが、必要書類のうち「住民票」や「運転記録証明書」については、発行時に手数料がかかるため注意してください。
「運転記録証明書」は、自動車安全運転センターにて発行することが可能です。
交付手数料:670円(消費税非課税) ※2024年6月時点
参照元:運転経歴に係る証明書|自動車安全運転センター (jsdc.or.jp)
届出方法や必要書類については以下の記事で詳しく解説しています。各都道府県警察HPの安全運転管理者制度ページに飛べるリンクも掲載しているので、必要な届出書のフォーマットも入手できます。ぜひ活用してください。
安全運転管理者制度における罰則
厳罰化に至った背景とは
2022年10月に施行された道路交通法の改正により、安全運転管理者制度に関する違反行為が大幅に厳罰化されました。
この改正は、過去に起きた重大な交通事故を受けて施行されたものです。
特に、2021年6月に千葉県八街市で発生した、飲酒運転のトラックが下校中の児童の列に突っ込む事故では、小学生5人が死傷する惨事となり、ニュース等でもクローズアップされました。
事故後の調べにより、このトラックの運転手は、安全運転に務めなければならない職業運転手であるにもかかわらず、常習的に飲酒していたことが判明しました。運転手はもちろん、監督・指導が不足していたとして、勤務先の企業に対しても多くの非難が集まりました。
勤務先の企業は、安全運転管理者の選任義務の対象となっていたにも関わらず、選任を怠っていたとのことでした。
これらの事例を受けて、企業の安全運転の確保という観点から、安全運転管理者の責任が改めて認識され、違反行為の厳罰化が求められるようになりました。改正により罰金は最大で10倍に増額され、是正措置命令違反に対する罰則も新設されました。
具体的な罰則の内容
安全運転管理者制度の罰則は、安全運転管理者の選任や届出を怠った場合などに適用されます。
具体的な罰則内容について詳しく解説します。
- 選任義務違反
安全運転管理者が必要であるにもかかわらず、企業や事業所が選任しない場合、法的な罰則が適用される可能性があります。罰則は、法改正前は5万円以下でしたが、現在は50万円以下まで引き上げられています。
- 解任命令違反
解任命令違反は、安全運転管理者の解任命令に従わない場合に課される罰則です。命令が出されても適切な手続きを取らず、安全運転管理者の職務を続ける場合には、法的な制裁が科される可能性があります。罰則は法改正前5万円以下でしたが、50万円以下まで罰金に引き上げられています。
- 是正措置命令違反
是正措置命令違反は、自動車の使用者に対して出された是正措置命令に従わない場合に科される罰則です。是正措置命令が出されても適切な対応を取らなかった場合、法的な制裁が科される可能性があります。具体的には、新たに設けられた規定により、50万円以下の罰金が科せられます。
- 選任解任届出義務違反
選任や解任に関する届出義務に違反する場合に課される罰則が、選任解任届出義務違反です。選任や解任に関する情報を適切に届け出ない場合には、法的な制裁が科される可能性があります。罰則は2万円以下の罰金または科料から5万円以下の罰金に引き上げられています。
また、2022年4月から白ナンバーに対するアルコールチェックが義務化され、安全運転管理者の業務内容に追加されました。アルコールチェック義務化に関する罰則については、以下の記事で解説しています。合わせてご確認ください。
安全運転管理者の業務内容
実際に安全運転管理者に選任されると、どのような業務を行わなければならないのでしょうか。
ここからは、具体的な業務内容を紹介します。
9つの業務内容
- 運転者の状況把握
運転者の適性や技能、知識及び法令や処分の遵守状況を把握するための措置を講じます。
- 運行計画の作成
最高速度違反や過積載運転、放置駐車違反行為や過労運転の防止など、安全運転の確保に留意して、自動車の運行計画を作成します。
- 交替要員の配置
運転者が長距離運転や夜間運転を行う場合、疲労などで安全な運転ができなくなる可能性があるときは、事前に交代ドライバーを準備します。
- 異常気象時等の安全確保の措置
異常な天候や自然災害などで、安全な運転が困難になる可能性があるときは、適切な指示を出し、安全な運転を確保するための措置を取ります。
- 安全運転の指示
運転者に対して点呼を行い、自動車の点検の実施状況や、病気や過労などで運転ができない可能性があるかどうかを確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えます。例えば、適切な休息や運転方法のアドバイスなどを行い、安全性を高めます。
- 運転前後の酒気帯び確認
運転をする前や終了後の運転者に対して、酒気帯びがあるかどうかを、目視やアルコール検知器などの手段で確認します。運転者の状態を確認することで、酒気帯び運転を防止し、安全な運転環境を確保します。
- 酒気帯び確認の記録・保存
酒気帯びの確認結果を記録し、その記録を1年間保存することで、適切な管理と監査が可能となります。
- 運転日誌の記録
運転者には運転日誌を備え付けてもらいます。運転者名や運転の開始と終了の日時、運転距離などの必要な情報を記録することによって、運転状況の把握や適切な記録管理が行えます。
- 運転者に対する指導
自動車の運転に関する技術や知識など、安全な運転を確保するために必要な事項について、運転者への教育を行います。適切な運転方法、交通規則の遵守、事故防止などについて教育し、安全な運転を推進します。
運転日誌の管理や運転者への指導、アルコールチェックなどを通じて安全運転を促進し、事故の防止に努めるのが安全運転管理者の業務です。また、組織内での交通安全意識の醸成にも貢献します。
2022年4月から安全運転管理者の業務に追加されたアルコールチェックについては、以下の記事で分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
選任後にもやらなくてはいけないこと
選任以外の届出
- 安全運転管理者等を交代する場合
- 安全運転管理者等を解任する場合
- 事業者に関する情報に変更が生じた場合
安全運転管理者等を交代する際や、届出事項に変更が生じた際の手続きについては、以下の記事で分かりやすく説明しています。合わせてご覧ください。
安全運転管理者講習の受講
安全運転管理者や副安全運転管理者には、年に一度の法定講習を受講することが義務付けられています。講習では、安全運転に関する技能や法令情報といった、安全運転管理業務を遂行するために必要な知識について学びます。
講習の日程や受講手数料は、都道府県によって異なります。最近では、オンラインで受講できる場合もありますので、各都道府県の警察のホームページで確認しましょう。
安全運転管理者講習については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ
今回は、安全運転管理者に必要な資格について解説しました。
安全運転管理者になるためには、年齢や運転管理の実務経験などの要件が定められています。選任の際は、これらの要件を満たした人物から選任するようにしてください。
また、安全運転管理者制度には違反行為に対する罰則も設けられています。罰則の対象とならないよう、法令遵守に努めましょう。
安全運転管理者は業務内容が多く、年に一度の法定講習を受けなければならないなど負担が大きい役割ですが、企業の安全運転確保のため、確実に業務を遂行するよう心掛けてください。
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