【令和6年】安全運転管理者講習とは|全国の開催日程や費用も紹介
一定台数以上の自動車を使用する事業所においては、安全運転管理者を選任することが義務付けられています。2022年の道路交通法改正によるアルコールチェック義務化にともない、安全運転管理者の役割や重要性について改めて認識された方も多いのではないでしょうか。
安全運転管理者や副安全運転管理者は公安委員会による講習を受けなければなりませんが、
- 開催日程や受講の流れは?
- 費用はいくらかかるのか?
- どのような内容を学ぶのか?
- 受講しなかった場合の罰則はあるのか?
など、疑問の声も多いようです。
本記事では、安全運転管理者講習の「各都道府県の開催日程」や「費用」、「講習内容」、受講時の「注意点」、受講しなかった場合の「罰則」などについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
この一冊で安全運転管理者の業務を総復習!
法定講習の受講についてもまるわかり!
一定台数以上の社用車を使用している企業は、道路交通法によって「安全運転管理者」を選任することが義務付けられています。安全運転管理者の選任・届出方法や業務内容、違反した場合の罰則についてわかりやすく解説した資料をご用意しました。
【資料で分かること】
- 法定講習の受講の流れ
- 道路交通法改正の概要
- 安全運転管理者とは
- 安全運転管理者の選任義務や罰則
- 安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者について理解を深めるために、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
また、アルコールチェック義務化の概要をおさらいしたい方は5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべてをぜひご覧ください。
安全運転管理者講習とは
安全運転管理者講習とは、公安委員会が安全運転管理者に対して定期的に実施する講習のことです。
企業や事業所の安全運転の推進を担う安全運転管理者が、業務遂行に必要な知識や技能を習得するための重要な取り組みのひとつです。
法定講習であるため年一回の受講が必須
道路交通法では、企業や事業所の代表者である自動車の使用者の義務として、安全運転管理者に講習を受けさせなければならないと定められています。このように法律で受講が義務付けられている講習のことを、法定講習と呼びます。
“自動車の使用者は、公安委員会からその選任に係る安全運転管理者等について第百八条の二第一項第一号に掲げる講習を行う旨の通知を受けたときは、当該安全運転管理者等に当該講習を受けさせなければならない。”
(道路交通法第74条の3第9項)
安全運転管理者に選任され届出を行うと、年に一回、受講に関する通知が届きますので、通知内容に従って受講してください。
受講の対象者
講習の受講対象となるのは、安全運転管理者です。副安全運転管理者を選任している事業所は、副安全運転管理者にも講習を受講させなければいけません。
安全運転管理者と副安全運転管理者は、それぞれ別の講習を受けなければならず、開催日程や受講手数料も異なりますので注意してください。詳しくは後ほど解説します。
なお、代理受講は認められていませんので、必ず安全運転管理者や副安全運転管理者本人が受講するようにしましょう。
講習手数料
講習手数料は、以下の通りです。
- 安全運転管理者4,500円
- 副安全運転管理者3,000円 (非課税)
※2024年4月時点
都道府県によっては、安全運転管理者と副安全運転管理者が同じ講習を受講する場合があります。その場合、手数料は安全運転管理者の金額に統一されることが多いので、注意してください。
例えば、埼玉県では「安全運転管理者等講習」とされており、手数料は4,500円です。
持ち物
受講する際の持ち物は、以下の通りです。
- 講習通知書
- 安全運転管理者証※
- 講習手数料(領収書、収入証紙等)
- 身分証明書
- 筆記用具
※安全運転管理者証は各地で廃止の傾向にあり、必要ない場合もあります。
【令和6年】各都道府県の開催日程
開催日程については、各都道府県の警察本部や安全運転管理者講習を開催する団体のWebサイトで確認できます。開催時間や回数、オンライン受講の有無等、地域によって異なりますのでご注意ください。
ここでは、一般的な講習時間を説明した上で、都道府県別の開催日程一覧を紹介します。
一般的な開催時間
講習時間について、道路交通法施行規則では、安全運転管理者講習は6時間以上10時間以下、副安全運転管理者講習は4時間以上8時間以下と定められています。
一般的には午前10時頃から午後5時頃までの約6時間(休憩時間を除く)で行われることが多く、一日がかりとなります。月に1~10回程度開催されており、ここ数年は新型コロナウイルス感染対策としてオンライン受講が可能な地域も増えています。
各都道府県の開催日程一覧
各都道府県の開催日程を以下にまとめました。各都道府県名のリンクから、講習を開催する団体が公表している開催日程を確認いただけます。
講習の内容
講習でどのような内容を学ぶのか把握しておきたい方も多いかと思います。
安全運転管理者講習では、道路交通法施行規則第三十八条により、”自動車及び道路の交通に関する法令の知識その他自動車の安全な運転に必要な知識、自動車の運転者に対する交通安全教育に必要な知識及び技能、安全運転管理に必要な知識及び技能等”に関して”教本、視聴覚教材等必要な教材を用いて”学ぶことになっています。
講習内容の一例を紹介します。
- 道路交通に関する法令知識
近年法改正された内容や、交通安全に関する罰則など - 安全運転に必要な知識
交通事故が発生する原因や、日常点検の重要性、運転時に注意すべきポイントなど - 運転者に対する交通安全教育に必要な知識や技能
エコドライブの重要性や実践方法、交通安全教育スケジュールの作成例など - 安全運転を管理する上で必要な知識や技能
安全運転管理者の基本業務や、運転者の健康管理、交通安全に対するリスクマネジメントなど
受講の流れ
①安全運転管理者選任の届出
安全運転管理者を選任したら、15日以内に自動車の使用の本拠を管轄する公安委員会へ届け出なければなりません。また、自動車の台数が減り安全運転管理者を解任する場合や、部署異動・転勤等により別の人に変更する場合も同様です。
特に、安全運転管理者を変更する場合は、先に届出を行わないと新たな安全運転管理者が講習を受けられない可能性もあるので注意してください。
安全運転管理者選任の届出方法については、以下の記事にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
②法定講習通知書が届く
公安委員会より安全運転管理者あてに「講習通知書」、「申込書」、「講習手数料の納付書」等が届きます。
都道府県によって、あらかじめ受講日が指定されている場合と、開催日程の中から希望日を選択できる場合があります。どうしても指定の日時で受講できない場合は、予備日が用意されていたり別日程やオンラインで受講できたりしますので安心してください。詳しくは各都道府県のホームページでご確認ください。
講習手数料の納付方法は各都道府県により異なりますが、事前に金融機関等で振り込むか、収入証紙を購入することが多いです。
③受講する
指定された日程で受講します。講習受付には、身分証明書や通知書、講習手数料の収入証紙等が必要となりますので、必ず準備しておきましょう。長時間の講習ですので、水分補給のための飲料も用意しておくことをおすすめします。
オンラインで受講する場合は、事前に登録や講習手数料の支払いを済ませておく必要があるため注意してください。都道府県により、使用するWeb会議システム(Zoom、Webex等)が異なるため、受講前にアプリインストールや接続確認をしておくとよいでしょう。
受講する際の注意点
安全運転管理者講習の受講にはいくつかの注意点があります。
代理受験はできない
安全運転管理者本人の受講が義務付けられており、代理受験はできません。
なお、人事異動などにより安全運転管理者の変更があった場合、タイミングによっては前任者の名前で通知が届くことがあります。その場合は、新しい安全運転管理者が受講してください。管轄の警察署への変更手続きも忘れずに行いましょう。
途中退席はできない
法定講習であるため、途中退席や中抜けは認められません。最後まで受講できなかった場合は再受講する必要があり、講習手数料も還付されない場合がありますので注意してください。
会場の駐車場は確保されない
開催者側では駐車場の確保を行わないことが多く、公共交通機関の利用が推奨されています。事前に会場への行き方や最寄駅を確認しておきましょう。
どうしても車で行く必要がある場合は、近隣の駐車場を下調べしておくことをおすすめします。
受講しなかった場合の罰則
安全運転管理者講習は法律で受講を義務付けられているものの、現状、受講しなかった場合の罰則はありません。
しかしながら、講習内容には最新の法改正内容や交通事故事情が反映されているため、情報のアップデートのためにも受講することをおすすめします。
例えば、2022年の法改正では安全運転管理者の業務内容にアルコールチェックが加わりました。これらの正しい情報を入手できず、事業所内で法令遵守できていなかった場合には、罰則や処分の対象となる可能性もあります。
また、交通事故の具体的な事例を学ぶことは、安全運転管理者の業務の一つである「運転者に対する指導」においても役立つことでしょう。
なお、安全運転管理者の未選任などに対しては罰則が設けられています。安全運転管理者制度における罰則の詳細については、後ほどの安全運転管理者の選任を怠った場合の罰則にてご確認ください。
また、罰則を防ぐために、現状の自社の運用で問題がないか確認することができる弁護士監修|法令遵守チェックリスト(安全運転管理者編)をご用意しました。ぜひご活用ください。
合わせて知っておきたい、安全運転管理者制度の概要
安全運転管理者制度とは
安全運転管理者制度は、一定数以上の自家用自動車(白ナンバーの車)を使っている企業や事業所が、安全な運転環境を確保するために導入されています。
この制度において、自動車の使用者(企業や事業所の代表者)は、業務で使用する自動車の運転を管理・監督するために、「安全運転管理者」と「副安全運転管理者」を選任することが義務付けられています。
安全運転管理者は、運転者の教育・訓練や運転状況のモニタリング、安全対策の策定・実施などを担当します。
安全運転管理者の全体像について、安全運転管理者まるわかりガイドにイラスト付きでわかりやすくまとめています。ぜひご覧ください。
企業が安全運転管理者を選任しなくてはいけない理由は
企業や事業所が安全運転管理者を選任する理由は主に3つあります。
- 法令や規則を守るため
安全運転に関する法律や規則は、年々厳しくなってきています。安全運転管理者制度もその一環で、法律で選任が義務づけられています。企業や事業所が選任を怠ると罰則が適用されるため、法律を守る必要があります。
- 安全な運転環境を確保するため
交通事故や違反行為は、人命に関わることはもちろん、企業の信頼性にも大きな影響を与えます。そのため、安全運転管理者が運転状況の監視、安全対策の徹底、運転者への教育等を行い、事故防止や交通安全意識の醸成に取り組むことが重要です。
- 業務の効率化とコスト削減を図るため
安全運転管理者が適切な運行計画を作成することで、効率よく取引先を訪問したり荷物を運送したりできるようになります。また、運行ルートの最適化を図ることで、燃料のムダな消費を抑え、コスト削減を実現できます。
安全運転管理者の選任義務とは
安全運転管理者の選任義務があるのは、どのような企業や事業所なのでしょうか?選任義務の対象となる企業や事業所と、選任しなくてはならない人数を確認しておきましょう。
選任義務の対象
安全運転管理者の選任義務の対象となるのは、以下のいずれかに該当する企業や事業所です。
- 乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している
- 5台以上の自家用自動車を使用している
(原動機付自転車を除く自動二輪は1台につき自動車0.5台として計算)
ただし、運送業で配置が義務付けられている「運行管理者」を選任している場合は対象外となります。
安全運転管理者と運行管理者の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。それぞれの選任義務の対象となる基準や、管理者の業務内容、違反行為に対する罰則について分かりやすく説明していますので、ぜひご覧ください。
安全運転管理者は何人必要か
安全運転管理者の選任義務対象となる企業や事業所は、事業所(自動車使用の本拠地)ごとに必ず1人を選任しなければなりません。安全運転管理者は、使用している台数が10台でも100台でも、人数は増えません。
ただし、一定台数以上になると、副安全運転管理者を別に選任する必要があります。
企業によっては、副安全管理者の選任も必要
20台以上の自動車を使用している場合には、安全運転管理者に加えて、副安全運転管理者の選任も必要です。
副安全運転管理者は、主に安全運転管理者の補佐や代行を担い、安全運転管理の連続性やスムーズな運営を支えます。副安全運転管理者の選任基準は、20台に1人と定められています。大規模な事業所や複数の現場を運営する場合に、副安全運転管理者が必要となります。
安全運転管理者は使用する台数によって選任する人数は異なりませんが、副安全運転管理者は20台増えるごとに1人加算しなければならないため、注意が必要です。
安全運転管理者等の選任における資格要件については、以下の記事にて詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
参考記事:安全運転管理者に必要な資格を解説|届出方法や業務内容も合わせて紹介
複数の事業所を持つ企業の注意点
安全運転管理者や副安全運転管理者は、自動車の使用の本拠、つまり事業所ごとに選任する必要があります。
各事業所で定員11人以上の自動車を使用しているか、またはその他の自動車を5台以上使用しているかを確認し、当てはまる事業所には安全運転管理者等を選任しなければなりません。本社のほかに複数の支店や事業所を持つ企業は注意してください。
複数の事業所で安全運転管理者を選任している場合は、すべての安全運転管理者が法定講習を受講しなければなりません。
複数の事業所における選任義務の考え方については、以下の記事で具体例を用いて解説しています。ぜひ参考にしてください。
安全運転管理者を選任したら届出が必要
安全運転管理者を選任したら、15日以内に届出を行わなければなりません。
届出方法は3パターン
書類の届出方法は、以下の3パターンが用意されています。
①管轄する警察署の交通課窓口へ行く
②管轄する警察署の交通課へ郵送する ※一部対応していない都道府県もあります
③オンライン申請
現在は、利便性向上を目的として、警察庁による「警察行政手続きサイト」の試行的運用が開始され、オンラインで届出を行うことができるようになりました。
福岡県など7つの県については当該サイトに対応していませんが、いずれもオンライン申請は可能です。
サイト内に7つの県のリンクがあり、そちらから申請できるようになっているので、ぜひ活用してください。
↓オンライン申請のリンクはこちら↓
(運営元:警察庁)
届出に必要な書類
届出には一般的に以下の書類が必要となります。
- 選任届出書
- 住民票
- 運転免許証の表面および裏面の写し
- 運転記録証明書
- 運転管理経歴証明書
各種届出について、手続きそのものには特に手数料は必要ありませんが、必要書類のうち「住民票」や「運転記録証明書」については、発行時に手数料がかかるため注意してください。
「運転記録証明書」は、自動車安全運転センターにて発行することが可能です。
交付手数料:670円(消費税非課税) ※2024年2月時点
参照元:運転経歴に係る証明書|自動車安全運転センター (jsdc.or.jp)
届出方法や必要書類については以下の記事で詳しく解説しています。各都道府県警察HPの安全運転管理者制度ページに飛べるリンクも掲載しているので、必要な届出書のフォーマットも入手できます。ぜひ活用してください。
安全運転管理者の選任を怠った場合の罰則
安全運転管理者の選任は義務であるため、選任を怠ると罰則があります。
法改正によって安全運転管理者に関する違反行為が厳罰化された
2022年10月施行の改正道路交通法により、安全運転管理者に関する違反行為が厳罰化されました。飲酒運転等による交通事故が後を絶たないことから、安全運転管理者への責任が今まで以上に求められるようになりました。改正された内容は以下の2点です。
- 選任義務違反、解任命令違反に対する罰金の引き上げ
安全運転管理者を選任しなかったり、解任命令に従わなかったりした場合の罰金が、5万円から50万円に引き上げられました。
また、安全運転管理者等の選任等に関する届出を行わなかった場合の罰金の引き上げも行われています。
- 是正措置命令違反に対する罰金の新設
安全運転の確保を目的とした是正措置命令の規定が新たに追加され、是正のために必要な措置をとる命令を、都道府県の公安委員会が行えるようになりました。 是正措置命令に従わない場合は、罰金が科されます。
具体的な罰則の内容
安全運転管理者制度では、安全運転管理者制度の遵守と適切な業務遂行を促すために罰則が定められています。罰則の内容を正しく理解し、適切な業務運営を行いましょう。
- 選任義務違反
安全運転管理者が必要であるにもかかわらず、企業や事業所が選任しない場合、法的な罰則が適用される可能性があります。罰則は、法改正前は5万円以下でしたが、現在は50万円以下まで引き上げられています。
- 解任命令違反
解任命令違反は、安全運転管理者の解任命令に従わない場合に課される罰則です。命令が出されても適切な手続きを取らず、安全運転管理者の職務を続ける場合には、法的な制裁が課される可能性があります。罰則は法改正前5万円以下でしたが、50万円以下まで罰金に引き上げられています。
- 是正措置命令違反
是正措置命令違反は、自動車の使用者に対して出された是正措置命令に従わない場合に課される罰則です。是正措置命令が出されても適切な対応を取らなかった場合、法的な制裁が科される可能性があります。具体的には、新たに設けられた規定により、50万円以下の罰金が科せられます。
- 選任解任届出義務違反
選任や解任に関する届出義務に違反する場合に課される罰則が、選任解任届出義務違反です。選任や解任に関する情報を適切に届け出ない場合には、法的な制裁が課される可能性があります。罰則は2万円以下の罰金または科料から5万円以下の罰金に引き上げられています。
選任以外にも届出が必要な場合
安全運転管理者については、選任するときだけでなく、ほかにも届出が必要なケースがあります。
具体的には、以下のようなケースです。
安全運転管理者等を変更・解任する時
安全運転管理者を変更する、あるいは解任する場合には、必ず届出を行う必要があります。届出は、各都道府県の警察署の交通課などに提出します。
事業者に関する情報等の記載事項が変わった時
企業や事業所に関する情報等の記載事項に変更があった場合にも、届出が必要です。例えば、会社名や所在地などが変更された場合には、これらの変更事項を各都道府県の警察署に届け出る必要があります。
安全運転管理者等の変更に関する手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
安全運転管理者の9つの業務内容
実際に安全運転管理者に選任されると、どのような業務を行わなければならないのでしょうか?
安全運転管理者の業務は大きく分けて9つあります。具体的な業務内容について確認しておきましょう。
- 運転者の状況把握
運転者の適性や技能、知識及び法令や処分の遵守状況を把握するための措置を講じます。
- 運行計画の作成
最高速度違反や過積載運転、放置駐車違反行為や過労運転の防止など、安全運転の確保に留意して、自動車の運行計画を作成します。
- 交替要員の配置
運転者が長距離運転や夜間運転を行う場合、疲労などで安全な運転ができなくなる可能性があるときは、事前に交代ドライバーを準備します。
- 異常気象時等の安全確保の措置
異常な天候や自然災害などで、安全な運転が困難になる可能性があるときは、適切な指示を出し、安全な運転を確保するための措置を取ります。
- 安全運転の指示
運転者に対して点呼を行い、自動車の点検の実施状況や、病気や過労などで運転ができない可能性があるかどうかを確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えます。例えば、適切な休息や運転方法のアドバイスなどを行い、安全性を高めます。
- 運転前後の酒気帯び確認
運転をする前や終了後の運転者に対して、酒気帯びがあるかどうかを、目視やアルコール検知器などの手段で確認します。運転者の状態を確認することで、酒気帯び運転を防止し、安全な運転環境を確保します。
- 酒気帯び確認の記録・保存
酒気帯びの確認結果を記録し、その記録を1年間保存することで、適切な管理と監査が可能となります。アルコール検知器は常時有効に保持する必要があります。
- 運転日誌の記録
運転者には運転日誌を備え付けてもらいます。運転者名や運転の開始と終了の日時、運転距離などの必要な情報を記録することによって、運転状況の把握や適切な記録管理が行えます。
- 運転者に対する指導
自動車の運転に関する技術や知識など、安全な運転を確保するために必要な事項について、運転者への教育を行います。適切な運転方法、交通規則の遵守、事故防止などについて教育し、安全な運転を推進します。
選任の際の台数の算定や記録類の最低限の記入項目などについて、安全運転管理者よくある質問集でわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
2022年の道路交通法改正で何が変わったのか
2022年の道路交通法改正により、安全運転管理者の役割や責任がより重要になりました。具体的に何が変わったのか、変更点を確認しておきましょう。
- アルコールチェック義務化
道路交通法施行規則改正により、企業や事業所で使用している自動車の運転者に対して、安全運転管理者等の立ち合いのもとアルコールチェックを実施しなければならなくなりました。これにより、飲酒運転の防止や安全運転の確保が強化されました。 - 業務遂行に必要な機材の整備
改正前は、自動車の使用者から安全運転管理者等に対しては、「業務を遂行するための権限を与えること」のみ規定されていました。しかし、道路交通法改正により「業務遂行に必要な機材を整備しなければならない」という内容が追加されたため、より具体的な方法で対応することが求められるようになりました。 - 違反行為の厳罰化
前項でも説明したように、2022年10月から安全運転管理者の選任義務や解任命令に違反した場合の罰金が引き上げられ、是正措置命令の罰則も追加されました。
なぜ法改正に至ったのか
安全運転管理者に関する法改正が行われ、アルコールチェックの追加や罰則の強化が行われた背景には、2021年に千葉県八街市で起こった事故があります。
事故の概要
2021年6月28日に千葉県八街市の市道において、飲酒運転のトラックが下校中の児童列に突っ込み、5人が死傷する事故が起こりました。事故は、アルコールの影響による居眠り運転が原因でした。運転手の呼気を調べたところ、基準値を超えるアルコールが検出されたのです。
大型トラックの運転手は、職業運転手として安全運転に務めるべきですが、この運転手は常習的に飲酒を行っており、上司から再三注意を受けていたことも判明しています。運転手だけではなく所属していた企業にも、管理や教育不足に対する批判が殺到しました。
事故を起こしたトラックは白ナンバーだったため、アルコールチェックがされていなかったことも、事故原因の1つと考えられています。
この事故を契機として、内閣府は2021年8月に「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」を発表、道路交通法施行規則が一部改正されることとなり、白ナンバーにおいてもアルコールチェックが義務付けられました。
安全運転管理者には、飲酒運転根絶のため、以前にも増して安全運転の取り組みを強化し、その責任を果たすことが求められるようになりました。
なお、アルコールチェック義務化の詳細については、以下の記事をご覧ください。
具体的にどれくらい業務量が増えたのか
法改正によりアルコールチェックが義務化されたことにより、実際にはどのような業務が増えたのでしょうか。
改正前も、運転者の状況把握は業務内容に含まれていましたが、具体的な確認方法や記録については明示されていませんでした。法改正によりアルコールチェックが義務化されたことで、運転前後のアルコールチェックに立ち合い、結果を記録して1年間保存することが求められるようになりました。
具体的にどれくらいの時間がかかるのか、社用車6台を管理する場合で試算してみましょう。
- ドライバーのアルコールチェックに立ち合い、記録簿へ記入(約5分×6人=約30分)
- 回収した記録簿の確認、保存(約20分)
アルコールチェック義務化により業務量が増えた中でも、効率的に法令遵守の徹底を行うことのできている企業様の事例をアルコールチェック義務化の対応成功事例6選にてご紹介しています。ぜひご覧ください。
業務負担軽減に「車両管理システム」が注目されている背景
安全運転管理者の業務負担を軽減させるには、「車両管理システム」の導入をおすすめします。ここからは「車両管理システム」がどのようなものなのか、概要やメリットを解説します。
そもそも、車両管理システムとは
車両管理システムとは、社用車やリース車などの車両を効率よく管理することができるシステムのことです。
具体的には、1台の車を複数人で使う場合の予約管理ができるシステム、運転日報や日常点検などの書類をデータで管理できるシステム、アルコールチェック義務化の対応をまるごと行うことができるシステム、走行距離を計測して最適なルートを教えてくれるシステムなどがあります。
車両管理システムは、2017年の中型トラックに対するタコグラフ搭載義務化をきっかけに需要が一気に高まり、2016年から2022年の間で、導入した車両台数は約3.7倍になりました。
2022年に道路交通法が改正され、一定台数以上の白ナンバーの社用車や営業車を所有している企業に対しても、目視等によりアルコールチェックを実施することが義務化されました。さらに、2023年8月8日に警察庁が「アルコール検知器を用いたアルコールチェックを2023年12月1日から義務化する」と正式発表したこともあり、車両管理システムに注目が集まっています。
アルコールチェック義務化への対応を怠ると罰則もあるので、確実に対応する必要があります。アルコールチェック義務化のポイントや、企業がやらなければならないことについては、以下の資料で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
また、車両管理システムについては以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
車両管理システムを導入するメリット
車両管理システムの導入により、日常業務の効率化や情報管理の向上につながります。
しかしながら、安全運転管理者とドライバー、どちらにもメリットが感じられないとなかなか導入に踏み切れないという方もいるかと思います。それぞれにどんなメリットがあるのかご紹介していきます。
安全運転管理者へのメリット
安全運転管理者へのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 管理工数が削減できる
社用車管理業務は多岐に渡るので、車両台数が多い場合や管理者の人数が少ない場合などは特に多くの時間が必要になります。車両管理システムを用いると、予約やカギの受け渡し業務にかかる時間を短縮したり、日報類のチェックの手間が省けたり、情報を一元管理することで抜け漏れを防止したりすることができます。
- 生産性が向上する
動態管理機能でリアルタイムに位置情報を把握すると、トラブルや急な業務が発生した場合でも適切な人員配置を行うことができます。また、日報類のデジタル化や自動作成等のドライバーの負担を軽減する機能を備えたシステムを導入すると、ドライバーは自分の業務に集中できる時間が増えるので、生産性の向上が見込まれます。
- 経費削減に繋がる
デジタルキー機能や動態管理機能、車両稼働状況集計機能などを活用することで、車両の正確な稼働状況を把握し、車両台数の最適化を行うことができます。その他にも、ルート最適化による燃料費の削減や、車両に関する情報を一元管理することによる管理工数削減なども見込めるので、適切なシステムの導入は経費削減に繋がります。
- コンプライアンス遵守に繋がる
飲酒運転や交通事故のない安全な社会にするためにも、アルコールチェックや車検の徹底や安全運転教育の実施が求められています。会社のイメージダウンや社会的信用を失うことを避けるためにも、社用車に関する適切な運用体制を構築する必要があります。車両管理システムはそういった観点でも活用することができます。
ドライバーへのメリット
次に、ドライバーへのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 日報類作成の負担軽減
社用車に関する業務の中で、ドライバーにとって最も負担の大きい業務が日報類の作成です。車両管理システムを導入することで、日報類の作成を自動化したり、ペーパーレス化することができるので、ドライバーの業務負担を大幅に軽減することができます。
- 外出先からでも予約状況が確認できる
車両の予約管理を管理部署で紙やホワイトボードで行っていると、予約をしたい場合や予約を変更したい場合に、毎回管理部署に足を運ぶか、電話をしなくてはなりません。会議室予約システムを使っている場合などは、PCを開かないと予約状況が確認できないことも多いです。車両管理システムで予約管理をすると、スマホアプリで確認することができ、外出先からでもすぐに予約状況を確認したり、予約を取ったりすることができます。
- 管理部署とのやりとりの手間が省ける
社用車を利用する際には、カギの受け渡しや日報類の提出など、管理部署とのやりとりが頻繁に発生します。車両管理システムを活用すると、システム上で完結する業務が増え、やりとりの負担や手間を軽減することができます。
- 直行直帰しやすくなる
カギの返却や日報類の提出のために管理部署まで寄っているケースも多いかと思います。デジタルキー機能や日報類のデジタル化機能が搭載されたシステムを導入すれば、物理的なカギの受け渡しや日報類の対面での提出が不要になるので、直行直帰しやすくなります。
システムを用いたアルコールチェックの運用例
車両管理システムを用いたアルコールチェックの運用方法を弊社システム「Bqey(ビーキー)」を用いて解説します。
1.安全運転管理者立ち合いのもと、運転前のアルコールチェックを行います。一部の情報は自動入力されるので、必要な情報だけアプリに入力します。
このように、車両管理システムを活用するとアルコールチェックに関して、安全運転管理者・ドライバーの双方にとっての業務負担を軽減することができます。
また、アルコールチェックだけでなく、システム上で車両の予約管理をしたり、運転日報や日常点検等の書類をデータで一元管理したりすることができるなど、車両管理システムには様々な機能があります。
様々な機能があるからこそ価格も様々で、機能が充実していればしているほど費用が高くなってしまいます。まずは自社の抱えている課題を見える化し、課題を解決することができる機能を絞り込み、適切なシステムを選ぶことで、車両管理システムはより大きなメリットをもたらします。
まずは各社が提供する車両管理システムについて幅広く情報収集することをお勧めします。その上で、費用対効果が得られるかをしっかりと吟味し、車両管理システムを選択するようにしましょう。
車両管理システムの選び方がわからない方は、以下の資料をご活用ください。自社に合った機能を把握するためのチェックシートもご用意しています。
資料DL:車両管理システムの選び方
まとめ
今回は、安全運転管理者講習について解説しました。
安全運転は事業者の基本であり、悲惨な事故を起こさないためにも、安全運転管理者の業務は非常に重要です。安全運転管理者講習は、受講が義務付けられているだけでなく安全運転のための知識や技術について再認識できる良い機会ですので、年に1回必ず受講するようにしましょう。
安全運転管理者の業務効率化には
車両管理システム「Bqey」がオススメ!
安全運転管理者は企業の安全運転の確保に欠かせない存在です。 その業務を確実に・効率よく行うために、最近では「車両管理システム」を導入する企業が増えています。
- アルコールチェック記録など義務化で増える業務を効率化
- 日報類を一元管理してぺーパレス化を促進
- 車両予約や鍵の貸出・返却もスマホひとつで完結
- 車両の稼働状況を正確に集計して自動でグラフ化
など、安全運転管理者はもちろん、ドライバーにかかる負担も軽減し、業務効率や経費削減に繋げることができる機能が充実しています。
社用車に関する課題を「Bqey」で解決します。Bqeyについて知りたい方は、是非こちらから資料をダウンロードしてください。