5分でわかる「安全運転管理者」とは?選任義務の条件や資格、罰則も解説
安全運転管理者とは、白ナンバーの自動車を使用する事業所において、安全運転を推進する役割を担う人のことです。ドライバーの健康状態や酒気帯びの有無を確認したり、安全運転指導を行ったりします。
しかしながら、
- 行政機関のWebサイトを見たけれど理解が難しい
- 自社が安全運転管理者を選任しなければいけないのかわからない
- 選任のための具体的な手続きがわからない
- 安全運転管理者の具体的な業務内容を把握したい
- 安全運転管理者に関する罰則があるのか知りたい
など、制度について理解するのが難しく、お困りの方も多いかと思います。
そこで本記事では、安全運転管理者とはどんな目的で選任するのかを踏まえて、「選任しなければならない企業の条件」、安全運転管理者に必要な「資格要件」、「届出手続きの方法」や「業務内容」、違反行為に対する「罰則」などについてわかりやすく解説します。
安全運転管理者の業務負担軽減におすすめの方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
共有資料としても使える!
安全運転管理者まるわかりガイド!
一定台数以上の社用車を使用する企業は、「安全運転管理者」の選任が義務付けられています。
安全運転管理者の選任・届出方法や業務内容、違反した場合の罰則についてわかりやすく解説した資料をご用意しました。
【資料でわかること】
- 安全運転管理者とは
- 資格と選任の流れ
- 9つの業務内容
- 法定講習の受講義務
押さえるべきポイントをわかりやすく解説していますので、ぜひ資料をご覧ください。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
また、アルコールチェック義務化の概要をおさらいしたい方は、5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべてをぜひご覧ください。
安全運転管理者とは
「安全運転管理者」とは、白ナンバーの自動車を使用する企業や事業所において、運転者に対するアルコールチェックや運転日報の管理、安全運転教育などを行い、安全運転の推進や交通事故の防止に取り組む人のことです。
また、台数の多い事業所では、安全運転管理者の業務をサポートする「副安全運転管理者」も配置されます。
道路交通法第74条の3では、自動車の使用者に対して一定台数以上の自動車の使用の本拠ごとに、安全運転管理者を選任しなければならないと定められており、これを「安全運転管理者制度」と呼びます。
自動車の使用者とは、自動車の使用や運行に関する権限を持つ者のことであり、一般的には企業や事業所の代表者にあたります。
自動車の使用の本拠とは、実際に自動車を使用・管理する場所のことを指しており、一般的には企業や事業所の住所となります。
安全運転管理者および副安全運転管理者を選任しなければならない事業所には、いくつかの条件があります。詳しくは、安全運転管理者を選任すべき企業とはの章で説明します。
なお、イラストを用いてわかりやすくまとめた『安全運転管理者まるわかりガイド』も用意していますので、ぜひ参考にしてください。
企業が安全運転管理者を選任すべき3つの理由
企業が安全運転管理者を選任しなければならない理由は大きく分けて3つあります。
①法令や規則を守るため
テレビや新聞等でも報道されるように、自動車による痛ましい交通事故は、残念ながらなくなることはありません。少しでもそのリスクを下げるため、安全運転に関する法令や規則は年々厳格化しています。
安全運転管理者制度もその取り組みのうちの一つであり、法令に基づいて選任が義務付けられています。
対象となる企業や事業所が選任を怠った場合、罰則が適用されることもあるため、確実に法令遵守することが求められます。
選任を怠った場合の罰則については、以下の記事をご覧ください。安全運転管理者に関する他の罰則や、法令遵守するために何をすればよいのかなどについて、わかりやすく説明しています。
参考記事:安全運転管理者の罰則と法令遵守のポイント|業務内容とリスクを徹底解説
②安全な運転環境を整えるため
一定台数以上の自家用自動車を使用する企業や事業所は、日常業務に自動車の運転が伴います。
交通事故や違反行為は、人命に関わることはもちろん、企業や事業所の評判や信頼性にも大きな影響を与えます。そのため、安全運転管理者が運転状況の監視、安全対策の徹底、運転者への教育等を行い、事故防止や交通安全意識の醸成に取り組むことが重要となります。
企業が取り組むべき「安全運転教育」について、以下の記事でまとめていますのでぜひご覧ください。
参考記事:企業が取り組むべき「安全運転教育」とは?事故防止に役立つツールも紹介
③業務の効率化とコスト削減を図るため
安全運転管理者が適切な運行計画を作成することで、効率よく取引先を訪問したり荷物を運送したりできるようになります。また、運行ルートの最適化を図ることで、燃料のムダな消費を抑え、コスト削減を実現できます。
車両の位置情報や走行データを遠隔でリアルタイムに取得・管理することができる「テレマティクス」について、以下の記事でまとめていますのでぜひご覧ください。
参考記事:テレマティクスとは?メリットや活用例、おすすめのサービスも紹介
交通事故や違反が発生した場合、その内容によっては企業経営に大きなダメージを与えることもあります。安全運転管理者が業務を遂行し、交通事故やトラブルのリスクを低減することで、従業員の安全確保、企業の信頼性や経営効率の向上にもつながるのです。
運行管理者との違いとは
安全運転管理者と同じく、車両を業務利用する際の安全運転を確保する役割として、運行管理者という名前を聞いたことがある方も多いかと思います。
両者の大きな違いとしては、管理する車両の業務形態が挙げられます。運行管理者の管理対象となるのは、トラックやバス、タクシーといった、緑ナンバーと呼ばれる運送業の事業用自動車です。
一方、安全運転管理者の管理対象となるのは、営業回りや自社商品の運送などに使用する自家用自動車、いわゆる白ナンバーです。いずれも法律で設置が義務付けられている、重要な役割です。
安全運転管理者と運行管理者の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。それぞれの選任義務の対象となる基準や、管理者の業務内容、違反行為に対する罰則について分かりやすく説明していますので、ぜひご覧ください。
安全運転管理者を選任すべき企業とは
安全運転管理者の選任は法令によって義務付けられています。
選任義務の対象となるのは、どのような企業や事業所なのでしょうか?選任義務の対象となる条件と、選任しなくてはならない人数を確認しておきましょう。
選任義務の対象となる条件
安全運転管理者の選任義務の対象となるのは、以下のいずれかに該当する企業や事業所です。
- 乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している
- 5台以上の自家用自動車を使用している
(原動機付自転車を除く自動二輪は1台につき自動車0.5台として計算)
ただし、運送業で配置が義務付けられている「運行管理者」を選任している場合は対象外となります。
安全運転管理者は何人必要か
安全運転管理者の選任義務対象となる企業や事業所は、事業所(自動車使用の本拠地)ごとに必ず1人を選任しなければなりません。安全運転管理者は、使用している台数が10台でも100台でも、人数は増えません。
ただし、一定台数以上になると、副安全運転管理者を別に選任する必要があります。
企業によっては副安全運転管理者の選任も必要
20台以上の自動車を使用している場合には、安全運転管理者に加えて、副安全運転管理者の選任も必要です。
副安全運転管理者は、主に安全運転管理者の補佐や代行を担います。使用する自動車台数が多い場合、安全運転管理者だけでは確実に業務を遂行するのが難しくなります。それをサポートし、安全運転を確保する環境を整えるために、副安全運転管理者は必要になるのです。
安全運転管理者は最低1人選任していれば問題ありませんが、副安全運転管理者は20台増えるごとに1人加算しなければならないため、注意が必要です。
自動車運転代行業における安全運転管理者
自動車運転代行業とは、他人の自家用車を代わりに運転する事業のことです。
具体的には、自家用車を運転して飲食店へ行き、そこでお酒を飲んだため運転して帰ることができなくなった人に代わり、自宅まで運転することなどを指します。
自動車運転代行業については、「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」に基づき、使用する台数に関わらず、営業所ごとに1人の安全運転管理者を選任しなければなりません。
また、10台以上の随伴用自動車を使用する場合は、副安全運転管理者の選任も必要です。10台増えるごとに1人、追加選任しなければなりません。
選任義務に関するよくある質問
ここまで、選任義務の対象となる条件や選任すべき人数について解説してきました。しかし、社用車の使用状況は企業によって様々であり、自社が選任義務に当てはまるのか迷われる方も少なくありません。
ここでは、選任義務に関してよくある質問とその回答を紹介します。
選任義務を含む、安全運転管理者に関するよくある質問事項をわかりやすくまとめた『安全運転管理者よくある質問集』も用意していますので、ぜひ参考にしてください。
こんな車両も台数の算定に含まれる?
営業車や社員の送迎車など、”企業が使用する自動車”として明確なものはよいですが、中には台数の算定に含まれるのか不明確なケースもあるかもしれません。
たとえば、従業員が通勤に使用するマイカーは、「5台以上」の条件にカウントすべきなのでしょうか。この場合、マイカーを通勤のみに使用するのか、業務でも使用するのかによって変わります。業務で使用するのであれば、「5台以上」にカウントする必要があります。
その他のケースについては以下の記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
参考記事:台数の算定にもう迷わない!安全運転管理者選任の悩みをスッキリ解決
複数の事業所を持つ場合はどうすべき?
企業によっては、複数の支店や事業所を持っており、「本社で選任していれば問題ないのか」「5台未満の事業所は選任しなくてもよいのか」といった疑問をお持ちの方も多いようです。
安全運転管理者や副安全運転管理者は自動車の使用の本拠ごと、つまり事業所ごとに選任する必要があります。したがって、各事業所において選任義務の対象に該当するかを判断し、当てはまる場合は事業所ごとに安全運転管理者等を選任しなければなりません。
複数の事業所における選任義務の考え方については、以下の記事で具体例を用いて解説しています。ぜひ参考にしてください。
参考記事:5台未満の事業所に安全運転管理者は必要?複数拠点を持つ企業必見!
運行管理者を配置している場合はどうすべき?
緑ナンバーの事業者には、車両数などの条件に応じた運行管理者の配置が義務付けられています。運行管理者が配置された事業所において、白ナンバーの自動車も業務利用している場合、運行管理者とは別に安全運転管理者も選任しなければいけないのでしょうか。
この場合、安全運転管理者の選任は必要ありません。しかし、白ナンバーの自動車に対しても、アルコールチェックや運転状況の管理といった安全運転確保に必要な取り組みは行った方がよいでしょう。
安全運転管理者の選任が必要ないケースについては、以下の記事でわかりやすく解説しています。
参考記事:安全運転管理者が必要ないケースとは?わかりやすく具体例で解説!安全運転管理者に必要な資格要件
安全運転管理者を選任するにあたり、どんな人を選べばよいのでしょうか。
誰でも安全運転管理者になれるわけではなく、いくつかの要件を満たす人物から選ばなければなりません。ここでは、安全運転管理者に必要な資格要件について解説します。
安全運転管理者の資格要件
安全運転管理者は、以下の資格要件を満たす必要があります。
- 20歳以上
(副安全運転管理者が置かれている場合は30歳以上)
- 運転管理の実務経験が2年以上必要
副安全運転管理者の資格要件
副安全運転管理者は、以下の資格要件を満たす必要があります。
- 20歳以上
- 1年以上の運転管理の実務経験または3年以上の運転経験が必要
自動車運転管理に関して、上記の条件と同等以上の能力があると公安委員会が認定した場合も、安全運転管理者や副安全運転管理者になることができます。
ただし、過去2年以内に違反行為をした人は、安全運転管理者等になることができません。詳しくは以下の記事をご覧ください。
選任した後の届出方法
安全運転管理者を選任した後は、届出の手続きを行わなければなりません。
ここでは、安全運転管理者の届出方法について詳しく解説します。
選任した日から15日以内に届出を行う義務がある
安全運転管理者を選任したら、選任した日から15日以内に自動車使用の本拠地を管轄する警察署を経由して、公安委員会に届け出なければなりません。
これは、道路交通法第74条の3第5項で定められており、違反すると罰則の対象となるため、確実に行う必要があります。
届出方法は3パターン
書類の届出方法は、以下の3パターンが用意されています。
①管轄する警察署の交通課窓口へ行く
②管轄する警察署の交通課へ郵送する ※一部対応していない都道府県もあります
③オンライン申請
現在は、利便性向上を目的として、警察庁による「警察行政手続きサイト」の試行的運用が開始され、オンラインで届出を行うことができるようになりました。
福岡県など7つの県については当該サイトに対応していませんが、いずれもオンライン申請は可能です。
サイト内に7つの県のリンクがあり、そちらから申請できるようになっているので、ぜひ活用してください。
↓オンライン申請のリンクはこちら↓
(運営元:警察庁)
届出に必要な書類
届出には一般的に以下の書類が必要となります。
- 選任届出書
- 住民票
- 運転免許証の表面および裏面の写し
- 運転記録証明書
- 自動車運転管理実務経歴証明書 ※都道府県により不要な場合もあります
「運転記録証明書」は、自動車安全運転センターにて発行することが可能です。
交付手数料:670円(消費税非課税) ※2024年12月時点
参照元:運転経歴に係る証明書|自動車安全運転センター (jsdc.or.jp)
届出方法や必要書類については以下の記事で詳しく解説しています。各都道府県警察HPの安全運転管理者制度ページに飛べるリンクも掲載しているので、必要な届出書のフォーマットも入手できます。ぜひ活用してください。
参考記事:安全運転管理者の届出ハウツー!オンライン申請や必要書類のリンクも掲載
届出書の記入例
選任届出書の形式は、都道府県によって多少異なるものの、記入すべき項目はほぼ共通しています。ここでは、東京都における届出書の記入例を紹介します。
氏名や事業所の住所などの基本情報に加え、安全運転管理者になろうとする人の免許の種別や、事業所で使用する車両の種類および台数、ドライバーの人数などを記入する必要がある場合が多いです。事前に確認しておきましょう。
選任以外で届出が必要となるケース
安全運転管理者を選任するとき以外にも届出が必要なケースがあるため、注意してください。具体的には、以下のようなケースです。
安全運転管理者等を交代・解任する場合
人事異動や退職等の事情により安全運転管理者を交代する場合や、安全運転管理者の選任義務の対象から外れた等の理由により解任する場合は、必ず届出を行う必要があります。
届出内容に変更が生じた場合
企業や事業所に関する情報など、届出内容に変更があった場合にも届出が必要です。例えば、企業名や所在地などが変わった場合には速やかに届出を行なわければなりません。
これらの変更手続きについては、以下の記事でわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
安全運転管理者制度における4つの罰則
安全運転管理者制度では、4つの違反行為に対する罰則が設けられています。
具体的には以下の通りです。
- 選任義務違反
安全運転管理者の選任義務の対象であるにもかかわらず、企業や事業所が選任しない場合、50万円以下の罰金が科されます。 - 解任命令違反
安全運転管理者の解任命令が出されても適切な手続きを取らず、安全運転管理者の職務を続ける場合、50万円以下の罰金が科されます。
- 是正措置命令違反
自動車の使用者に対して是正措置命令が出されても適切な対応を取らなかった場合、50万円以下の罰金が科されます。
- 選任解任届出義務違反
安全運転管理者の選任や解任を適切に届け出ない場合、5万円以下の罰金が科されます。
なお、2022年10月の道路交通法改正により、安全運転管理者制度に関する違反行為が大幅に厳罰化されました。
厳罰化の背景や法改正による変更点について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考記事:安全運転管理者の罰則と法令遵守のポイント|業務内容とリスクを徹底解説
また、罰則対象とならないためにも、現状の運用で問題ないか確認することのできる弁護士監修|法令遵守チェックリスト(安全運転管理者編)をご用意しました。
自社の運用と照らし合わせて、ぜひご活用ください。
法定講習の受講義務
道路交通法では、自動車の使用者の義務として、安全運転管理者や副安全運転管理者に年に一度の講習を受講させなければならないと定められています。
これらの講習は「安全運転管理者講習」、「副安全運転管理者講習」といい、法律で受講が義務付けられていることから「法定講習」とも呼ばれます。
講習では、安全運転に関する技能や法令情報といった、安全運転管理業務を遂行するために必要な知識について学びます。
講習手数料や持ち物、各都道府県の開催日程などについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
安全運転管理者の9つの業務内容
実際に安全運転管理者に選任されると、どのような業務を行わなければならないのでしょうか?安全運転管理者の業務は大きく分けて9つあります。具体的な業務内容について確認しておきましょう。
9つの業務内容
安全運転管理者は、以下の9つの業務を担当します。
- 運転者の状況把握
運転者の適性や技能、知識及び法令や処分の遵守状況を把握するための措置を講じます。
- 運行計画の作成
最高速度違反や過積載運転、放置駐車違反行為や過労運転の防止など、安全運転の確保に留意して、自動車の運行計画を作成します。
- 交替要員の配置
運転者が長距離運転や夜間運転を行う場合、疲労などで安全な運転ができなくなる可能性があるときは、事前に交代ドライバーを準備します。
- 異常気象時等の安全確保の措置
異常な天候や自然災害などで、安全な運転が困難になる可能性があるときは、適切な指示を出し、安全な運転を確保するための措置を取ります。
- 安全運転の指示
運転者に対して点呼を行い、自動車の点検の実施状況や、病気や過労などで運転ができない可能性があるかどうかを確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えます。例えば、適切な休息や運転方法のアドバイスなどを行い、安全性を高めます。
- 運転前後の酒気帯び確認
運転をする前や終了後の運転者に対して、酒気帯びがあるかどうかを目視等で確認するほか、アルコールチェッカーを用いて確認します。運転者の状態を確認することで、酒気帯び運転を防止し、安全な運転環境を確保します。
- 酒気帯び確認の記録・保存
酒気帯びの確認結果を記録し、その記録を1年間保存することで、適切な管理と監査が可能となります。また、アルコールチェッカーを常時有効に保持し、いつでも正確に測定できる環境を整備します。
- 運転日誌の記録
運転者には運転日誌を備え付けてもらいます。運転者名や運転の開始と終了の日時、運転距離などの必要な情報を記録することによって、運転状況の把握や適切な記録管理が行えます。
- 運転者に対する指導
自動車の運転に関する技術や知識など、安全な運転を確保するために必要な事項について、運転者への教育を行います。適切な運転方法、交通規則の遵守、事故防止などについて教育し、安全な運転を推進します。
安全運転管理者は、これらの業務を通じて安全運転の促進や事故防止に取り組み、組織内の安全文化の向上を図る役割があります。
なお、運転日誌(運転日報)については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
参考記事:運転日報とは?記載すべき項目や書き方、保存期間もわかりやすく解説
道路交通法改正による変更点
2022年から2023年にかけて段階的に施行された、道路交通法および道路交通法施行規則の改正により、安全運転管理者の役割や責任がより重要になりました。具体的な変更点について確認しておきましょう。
アルコールチェック義務化
2021年6月、千葉県八街市で発生した白ナンバートラックによる飲酒運転の交通死亡事故を受け、白ナンバーにおける飲酒運転防止対策の強化を目的として、安全運転管理者の業務にアルコールチェックの実施およびその記録・保存が追加されました。これにより、安全運転管理者を設置している企業や事業所では、運転者に対してアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックを行わなければならなくなりました。
安全運転管理者がアルコールチェックを実施する際の手順やポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:安全運転管理者のアルコールチェック義務化とは|対象やポイントも解説
アルコールチェック義務化について、より詳しく知りたい方や、内容をおさらいしたいという方は、『5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべて』をぜひご覧ください。
また、現状の運用で問題ないか確認したいという方は、弁護士監修|法令遵守チェックリスト(アルコールチェック義務化編)をぜひご活用ください。
違反行為の厳罰化
アルコールチェック義務化のきっかけとなった交通死亡事故では、ドライバーが所属する事業所が、安全運転管理者の選任義務の対象であるにも関わらず、選任がなされていなかったことも問題視されました。
確実な選任と違反行為の防止を目的として、2022年10月から安全運転管理者の選任義務や解任命令に違反した場合の罰金が引き上げられ、是正措置命令の罰則も追加されました。
企業の安全運転が確保されていないと判断された場合、解任命令や是正措置命令の対象となることがあるため、自動車の使用者や安全運転管理者は、確実に業務を遂行することが求められます。
業務遂行に必要な機材の整備
改正前は、自動車の使用者から安全運転管理者等に対しては、「業務を遂行するための権限を与えること」のみ規定されていました。しかし、道路交通法改正により「業務遂行に必要な機材を整備しなければならない」という内容が追加されたため、より具体的な方法で対応することが求められるようになりました。例として、アルコールチェックを実施するために必要となる、アルコールチェッカーを準備することなどが挙げられます。
これを遵守しないことにより、企業の安全運転が確保されていないと判断された場合は、是正措置命令が下されることもあり、さらに命令に従わなかった場合は罰則の対象となる可能性があります。
安全運転管理者制度に関する罰則については、以下の記事で詳しく解説しています。
アルコールチェック義務化によりどれくらい業務量が増えたのか
法改正によりアルコールチェックが義務化され、実際にはどのような業務が増えたのでしょうか。
改正前も、運転者の状況把握は業務内容に含まれていましたが、具体的な確認方法や記録については明示されていませんでした。法改正によりアルコールチェックが義務化されたことで、運転前後のアルコールチェックに立ち合い、結果を記録して1年間保存することが求められるようになりました。
具体的にどれくらいの時間がかかるのか、社用車6台を管理する場合で試算してみましょう。
- ドライバーのアルコールチェックに立ち合い、記録簿へ記入(約5分×6人=約30分)
- 回収した記録簿の確認、保存(約20分)
合計すると、1日で約50分もの時間が必要となります。安全運転管理者等の業務には運転日誌や日常点検の管理もあるため、今回のアルコールチェック義務化に伴う業務追加は、かなりの負担になると考えられます。
そのような中でも、法令遵守と効率的な運用の実現に成功した企業の事例を、『アルコールチェック義務化の対応成功事例6選』で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
業務負担軽減に「車両管理システム」が注目されている
近年、安全運転管理者の業務負担を軽減させるために「車両管理システム」を導入する企業が増えています。ここからは「車両管理システム」の概要とメリットについて解説します。
そもそも、車両管理システムとは
車両管理システムとは、社用車やリース車などの車両を効率よく管理することができるシステムのことです。
具体的には、1台の車を複数人で使う場合の予約管理ができるシステム、運転日報や日常点検などの書類をデータで管理できるシステム、アルコールチェック義務化の対応をまるごと行うことができるシステム、走行距離を計測して最適なルートを教えてくれるシステムなどがあります。
車両管理システムは、2017年の中型トラックに対するタコグラフ搭載義務化をきっかけに需要が一気に高まり、2016年から2022年の間で、車両管理システムを導入した車両台数は約3.7倍になりました。
法改正により増加した安全運転管理者の業務を効率化するのに役立つ機能が搭載されているため、白ナンバー自動車を使用する企業においても、車両管理システムの導入が進んでいます。
車両管理システムの詳しい機能や、選び方のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
車両管理システムを導入するメリット
車両管理システムの導入により、日常業務の効率化や情報管理の向上につながります。具体的には以下のようなメリットを得ることができます。
- 運行管理の効率化
社用車の運行状況や走行距離、運行コストなどの情報をリアルタイムで把握できるようになることで、運行スケジュールの最適化や無駄な運行の削減が可能となり、運行管理の効率化を実現します。
- 点検・整備の支援
日常的な点検・整備のスケジュールや作業記録の管理を簡単に行えるようになります。運転者の点検結果で不具合が見つかった場合、すぐに安全運転管理者が把握することで、車両の安全性を確保するための作業を迅速に計画・実施することが可能です。
- 運転者の状態を管理
運転記録や違反履歴、アルコールチェック結果といった運転者の状態を管理するのに役立ちます。運転者の状態を把握しておくことで、必要に応じて適切な指導や教育を行うことができるようになります。
- 記録管理の効率化
アルコールチェックや日常点検、運転日報といった記録類を、車両管理システムひとつでまとめて管理することができるようになります。過去のデータが必要になった際も、紙やExcel等へ記録する場合と比べて効率よく検索することができます。
- 車両利用ルールの徹底
1台の車両を複数人で利用している場合、車両予約などの利用ルールが守られないと他の利用者に迷惑がかかる可能性があります。車両管理システムの予約機能を活用すれば、こうしたルールを徹底することが可能です。
システムを用いたアルコールチェックの運用例
法改正により安全運転管理者の業務に追加されたアルコールチェックについて、車両管理システムを用いた運用方法の一例として、弊社システム「Bqey(ビーキー)」を用いて解説します。
検知器とBluetooth接続することで、測定結果などの情報は自動入力されるため、その他必要な情報を入力します。入力したら登録ボタンを押してアルコールチェック記録の提出完了です。
2.運転後も同様にアルコールチェックを行い、そのままスマホアプリから提出します。
3.提出された記録はすぐに反映され、安全運転管理者はクラウド上で内容を確認することができます。データの保存期間はサービスごとに異なりますが、1〜3年程度、自動で保存されることが多いです。
未提出や未記入があった場合には、ドライバーに自動で通知が届くので、管理者のチェックの手間を大幅に省きます。
概算にはなりますが、社用車を6台と仮定した場合は、アルコールチェック記録のとりまとめにかかる時間が30分から5分程度に、改修した書類の確認・保管にかかる時間が20分から5分程度に削減が見込まれます。
運転者の呼気からアルコールを検知した場合に、車両の起動が制御されてエンジンがかからなくなる仕組みは、「アルコール・インターロック」と呼ばれています。以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考記事:飲んだら乗れない!アルコール・インターロックとは|メリットや仕組みを解説
アルコールチェックだけでなく、システム上で車両の予約管理をしたり、運転日報や日常点検等の書類をデータで一元管理したりすることができるなど、車両管理システムには様々な機能があります。
まずは自社の抱えている課題を整理し、解決のために必要な機能を絞り込むことが、最適なシステムを選定するポイントです。
そのためには、各社が提供する車両管理システムについて幅広く情報収集することをおすすめします。その上で、費用対効果が得られるかをしっかりと吟味し、車両管理システムを選定するようにしましょう。
また、『車両管理システムの選び方』には、自社に合ったシステムを選ぶ際に重要な観点や自社の課題を確認するためのチェックリストを掲載しています。ぜひ活用してください。
まとめ
今回は、企業における安全運転の推進に欠かすことのできない、安全運転管理者制度について解説しました。
安全運転管理者等の選任や届出は、法令で義務付けられているため、確実に行いましょう。選任する際は、安全運転管理者や副安全運転管理者に必要な資格要件を満たす人物から選ぶようにしてください。
安全運転管理者制度は、その重要性から、違反行為に対する罰則が設けられています。罰則の対象とならないよう、しっかりと業務を遂行することが求められます。
しかしながら、安全運転管理者の業務内容は多く、負担が大きくなりがちです。そんな課題を解決するために、近年は車両管理システムを導入する企業も増えています。車両管理システムを上手に活用して効率よく業務を行い、安全運転の確保に努めましょう。
安全運転管理者の業務効率化には
車両管理システム「Bqey」がオススメ!
安全運転管理者は企業の安全運転の確保に欠かせない存在です。 その業務を確実に・効率よく行うために、最近では「車両管理システム」を導入する企業が増えています。
- アルコールチェック記録など義務化で増える業務を効率化
- 日報類を一元管理してぺーパレス化を促進
- 車両予約や鍵の貸出・返却もスマホひとつで完結
- 車両の稼働状況を正確に集計して自動でグラフ化
など、安全運転管理者はもちろん、ドライバーにかかる負担も軽減し、業務効率や経費削減に繋げることができる機能が充実しています。
社用車に関する課題を「Bqey」で解決します。Bqeyについて知りたい方は、是非こちらから資料をダウンロードしてください。