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2024.11.08

安全運転管理者が必要ないケースとは?わかりやすく具体例で解説!

社用車を頻繁に利用する企業は、交通事故防止への取り組みが非常に重要です。社内の安全運転推進を担う「安全運転管理者」は、一定の条件を満たす企業や事業所において選任が義務付けられています。

 

しかしながら、

  • 安全運転管理者はなぜ必要なのか
  • 自社は安全運転管理者を選任しなければならないのか
  • 選任する必要がないのはどんなケースか
  • 選任を怠った場合の罰則はあるのか

など、疑問を抱えている方も多いようです。

 

本記事では、安全運転管理者を選任すべき理由を踏まえて、選任義務の対象となる条件を説明しています。その上で、選任が必要かどうか判断に迷う場合を挙げて、選任が必要なケース・必要ないケースを解説していきます。

自社に安全運転管理者の選任が必要なのか、判断する参考にしてください。

安全運転管理者に関するよくある質問を
わかりやすく解説!

安全運転管理者に関するよくある質問と回答をわかりやすくまとめた資料をご用意しました。

【よくある質問の一例】       

  • リース自動車は台数の算定に含みますか?
  • 選任する時以外で届出が必要なのはどんな時ですか? 
  • 運転日報で最低限記入しなければいけない項目は何ですか?

安全運転管理者に関する疑問を解消するために、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。

 

アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
 【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!

そもそも、安全運転管理者制度とは

安全運転管理者制度とは、企業や事業所の代表者である「自動車の使用者」に対して、一定台数以上の自動車を使用する事業所ごとに「安全運転管理者」の選任を義務付けている制度です。

 

安全運転管理者が運転者の教育・訓練や運転状況のモニタリング、安全対策を実施することで、企業の安全運転推進や交通事故防止に取り組むことが目的です。

イラストを用いてわかりやすくまとめた『安全運転管理者まるわかりガイド』も用意していますので、ぜひ社内展開用にもご活用ください。

 

企業が安全運転管理者を必要とする3つの理由

企業が安全運転管理者を必要とする理由は、大きく分けて3つあります。

 

①法令や規則を守るため

テレビや新聞等でも報道されるように、自動車による痛ましい交通事故は、残念ながらなくなることはありません。少しでもそのリスクを下げるため、安全運転に関する法令や規則は年々厳格化しています。

安全運転管理者制度もその取り組みのうちの一つであり、法令に基づいて選任が義務付けられています。

対象となる企業や事業所が選任を怠った場合、罰則が適用されることもあるため、確実に法令遵守することが求められます。

 

②安全な運転環境を整えるため

一定台数以上の自家用自動車を使用する企業や事業所は、日常業務に自動車の運転が伴います。

交通事故や違反行為は、人命に関わることはもちろん、企業や事業所の評判や信頼性にも大きな影響を与えます。そのため、安全運転管理者が運転状況の監視、安全対策の徹底、運転者への教育等を行い、事故防止や交通安全意識の醸成に取り組むことが重要となります。

 

③業務の効率化とコスト削減を図るため

安全運転管理者が適切な運行計画を作成することで、効率よく取引先を訪問したり荷物を運送したりできるようになります。また、運行ルートの最適化を図ることで、燃料のムダな消費を抑え、コスト削減を実現できます。

 

交通事故や違反が発生した場合、その内容によっては企業経営に大きなダメージを与えることもあります。安全運転管理者が業務を遂行し、交通事故やトラブルのリスクを低減することで、従業員の安全確保、企業の信頼性や経営効率の向上にもつながるのです。

選任義務の対象となる条件

安全運転管理者の選任は道路交通法第74条の3によって義務付けられています。選任義務の対象となる条件と、選任しなければならない人数を確認しておきましょう。

安全運転管理者の選任が必要な企業とは

安全運転管理者は、以下のいずれかに該当する自動車の使用の本拠ごとに、1人選任しなければなりません。

自動車の使用の本拠とは、自動車を使用・管理する拠点となる場所を指し、企業においては、社用車を使用する事業所や支店、営業所などがこれに当たります。

  • 乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している
  • 5台以上の自家用自動車を使用している
    (原動機付自転車を除く自動二輪は1台につき自動車0.5台として計算)

ただし、運送業で配置が義務付けられている「運行管理者」を選任している場合は対象外となります。

 

企業によっては副安全運転管理者の選任も必要

20台以上の自動車を使用している場合には、安全運転管理者に加えて、副安全運転管理者の選任も必要です。

副安全運転管理者は、主に安全運転管理者の補佐や代行を担います。使用する自動車台数が多い場合、安全運転管理者だけでは確実に業務を遂行するのが難しくなります。それをサポートし、安全運転を確保する環境を整えるために、副安全運転管理者は必要になるのです。

安全運転管理者は最低1人選任していれば問題ありませんが、副安全運転管理者は20台増えるごとに1人加算しなければならないため、注意が必要です。

副安全運転管理者については以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

参考記事:副安全運転管理者って必要なの?|安全運転管理者との違いも解説

選任が必要なケース・必要ないケース

先ほど選任義務の対象となる条件について解説しましたが、ひとつの企業に複数の拠点がある場合や、緑ナンバーと白ナンバーの両方を所有している場合、社有車だけでなくリース車両を使用している場合など、自動車の利用や所有状況は企業ごとに異なります。これらの状況から、自社が選任義務の対象に該当するかどうかを判断する必要があります。

ここでは、安全運転管理者の選任が必要かどうか判断に迷う場合を挙げて、選任が必要なケースと必要ないケースを具体的に紹介していきます。

 

複数拠点で合計5台以上使用している場合

本社と支店、営業所など複数拠点で自動車を使用しているという企業も多いと思います。ここでポイントとなるのは、事業所ごとに使用している自動車の台数が5台以上かどうかです。具体例を用いて説明します。

 

パターン1. 本社で2台、支店で3台の合計5台使用

→本社、支店のいずれも選任が必要ない

企業全体としては5台使用していますが、自動車の使用の本拠(事業所)ごとで見ると5台未満であるため、いずれも選任の必要はないといえます。

パターン2. 本社で5台、支店で3台使用

→本社は選任が必要、支店は必要ない

企業全体としては8台使用していますが、支店では5台未満であるため、選任の必要はありません。本社は5台使用しているので、選任が必要です。

パターン3. 本社で5台、支店で5台使用

→本社、支店のいずれも選任が必要

本社も支店も5台以上使用しているため、それぞれ1人ずつ安全運転管理者を選任する必要があります。

社有車以外の自動車を5台以上使用している場合

企業や事業所が所有する社有車以外に、従業員のマイカーやリース車両を使用している企業もあるかと思います。ここでポイントとなるのは、業務で使用しているかどうかです。具体例を用いて説明します。

 

パターン1. マイカー5台を通勤のみに使用

→選任は必要ない

従業員が所有する自動車を通勤のみに使用する場合は、台数の算定に含まれないため、何台あっても安全運転管理者の選任は必要ありません。

 

パターン2. マイカー5台を業務にも使用

→選任が必要

自動車の所有者が企業と従業員どちらであっても、業務に使用する場合は台数の算定に含みます。事業所ごとに、社有車と業務に使用するマイカーが合わせて5台以上ある場合は、安全運転管理者の選任が必要となります。

 

パターン3. リース車両5台を業務に使用

→選任が必要

自動車の所有者が企業にないリース車両であっても、業務に使用する場合は台数の算定に含みます。

 

緑ナンバー自動車を管理する運行管理者を配置している場合

→安全運転管理者の選任は必要ない

運送業など緑ナンバーの事業者に対しては、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、車両数などの条件に応じた運行管理者の配置が義務付けられています。

運行管理者を配置している事業所において、白ナンバーの自動車も5台以上使用している場合(または定員11人以上の自動車を使用している場合)、安全運転管理者の選任は必要ないとされています。

 

交通安全の取り組みとして、自主的に運行管理者に加えて安全運転管理者を選任することについては、問題ありません。安全運転確保のため、白ナンバーの自動車に対してもアルコールチェックなどの取り組みや運転状況の管理は行うべきと考えられます。

 

参考:安全運転管理者等に関するよくある質問(山形県警察) (pref.yamagata.jp)

参考:安全運転管理者等に関するよくある質問-警視庁ホームページ.pdf (tokyo.lg.jp)

 

緑ナンバー事業者における安全運転確保の責任者である「運行管理者」について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

参考記事:安全運転管理者と運行管理者の違いを解説!資格や罰則、業務内容も

選任が必要となる事業所がやるべきこと

ここまで、安全運転管理者の選任義務の対象となる条件や、選任が必要なケース・必要ないケースについて解説してきました。自社に安全運転管理者の選任が必要かどうか、判断いただけたでしょうか。

 

選任が必要な場合は、いくつかやらなければならないことがあるので、以下より詳しく解説します。

 

安全運転管理者の選任

まずはじめに行わなければならないのが、安全運転管理者の選任です。20台以上使用している場合は、副安全運転管理者も選任する必要があります。

 

安全運転管理者等になるためには、年齢や運転管理の経験といった、いくつかの資格要件を満たさなければなりません。安全運転管理者等の資格要件については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

参考:安全運転管理者に必要な資格を解説|届出方法や罰則も紹介

 

選任後の届出手続き

安全運転管理者を選任したら、選任した日から15日以内に自動車使用の本拠地を管轄する警察署を経由して、公安委員会に届け出なければなりません。

届出方法は、以下の3パターンがあります。

①管轄する警察署の交通課窓口へ行く
②管轄する警察署の交通課へ郵送する 
※一部対応していない都道府県もあります
③オンライン申請

 

届出の流れや、必要となる書類については、以下の記事よりご確認ください。

参考:安全運転管理者の届出ハウツー!電子申請や必要書類のリンクも掲載

 

なお、安全運転管理者制度では、選任時のほかにも、管理者が交代した際や届出内容に変更が生じた際にも届出手続きを行わなければなりません。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

参考記事:安全運転管理者の変更手続きとは?オンライン申請のリンクも掲載!

 

年1回の法定講習受講

安全運転管理者と副安全運転管理者には、年に1回、法定講習の受講が義務付けられています。講習では、安全運転に関する技能や法令情報といった、安全運転管理業務を遂行するために必要な知識について学びます。

 

講習の日程や受講手数料は、都道府県によって異なります。最近では、オンラインで受講できる場合もありますので、各都道府県の警察のホームページで確認しましょう。

 

安全運転管理者講習については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

参考記事:【令和6年】安全運転管理者講習とは|全国の開催日程や費用も紹介

 

安全運転管理者の9つの業務遂行

安全運転管理者は、以下の9つの業務を遂行しなければなりません。詳しい内容を確認しておきましょう。

  1. 運転者の状況把握
    運転者の適性や技能、知識及び法令や処分の遵守状況を把握するための措置を講じます。
     
  2. 運行計画の作成
    最高速度違反や過積載運転、放置駐車違反行為や過労運転の防止など、安全運転の確保に留意して、自動車の運行計画を作成します。
     
  3. 交替要員の配置
    運転者が長距離運転や夜間運転を行う場合、疲労などで安全な運転ができなくなる可能性があるときは、事前に交代ドライバーを準備します。
     
  4. 異常気象時等の安全確保の措置
    異常な天候や自然災害などで、安全な運転が困難になる可能性があるときは、適切な指示を出し、安全な運転を確保するための措置を取ります。
     
  5. 安全運転の指示
    運転者に対して点呼を行い、自動車の点検の実施状況や、病気や過労などで運転ができない可能性があるかどうかを確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えます。例えば、適切な休息や運転方法のアドバイスなどを行い、安全性を高めます。
     
  6. 運転前後の酒気帯び確認
    運転をする前や終了後の運転者に対して、酒気帯びがあるかどうかを目視等で確認するほか、アルコールチェッカーを用いて確認します。運転者の状態を確認することで、酒気帯び運転を防止し、安全な運転環境を確保します。
     
  7. 酒気帯び確認の記録・保存
    酒気帯びの確認結果を記録し、その記録を1年間保存することで、適切な管理と監査が可能となります。また、アルコールチェッカーを常時有効に保持し、いつでも正確に測定できる環境を整備します。
     
  8. 運転日誌の記録
    運転者には運転日誌を備え付けてもらいます。運転者名や運転の開始と終了の日時、運転距離などの必要な情報を記録することによって、運転状況の把握や適切な記録管理が行えます。
     
  9. 運転者に対する指導
    自動車の運転に関する技術や知識など、安全な運転を確保するために必要な事項について、運転者への教育を行います。適切な運転方法、交通規則の遵守、事故防止などについて教育し、安全な運転を推進します。

9つの業務について、より具体的に何をやれていれば問題ないか知りたい…といった方は、『弁護士監修|法令遵守チェックリスト(安全運転管理者編)』をぜひご覧ください。

 

 

選任を怠った場合の罰則

選任義務の対象であるにも関わらず、怠ってしまった場合は、罰則が科されます。

 

4つの罰則内容

安全運転管理者制度では、選任や届出を怠った場合など、以下4つの違反行為に対する罰則が定められています。

  • 選任義務違反
    安全運転管理者の選任義務の対象であるにもかかわらず、企業や事業所が選任しない場合、50万円以下の罰金が科されます。

  • 解任命令違反
    安全運転管理者の解任命令が出されても適切な手続きを取らず、安全運転管理者の職務を続ける場合、50万円以下の罰金が科されます。
     
  • 是正措置命令違反
    自動車の使用者に対して是正措置命令が出されても適切な対応を取らなかった場合、50万円以下の罰金が科されます。
     
  • 選任解任届出義務違反
    安全運転管理者の選任や解任を適切に届け出ない場合、5万円以下の罰金が科されます。

これらの罰則の対象とならないよう、選任や届出を適切に行い、是正措置や解任の命令を受けた場合は速やかに対応しましょう。

なお、2022年10月の道路交通法改正により、安全運転管理者制度に関する違反行為が大幅に厳罰化されました。

厳罰化の背景や法改正による変更点について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考記事:安全運転管理者の罰則と法令遵守のポイント|業務内容とリスクを徹底解説

まとめ

今回は、安全運転管理者の選任が必要ないケースについて解説しました。

選任義務の対象となるのは、自動車の使用の本拠ごとに、乗車定員11人以上の自動車を使用するか、5台以上の自動車を使用する場合です。

しかし、運行管理者を配置している事業所や、従業員がマイカーを通勤のみに使用している事業所は、対象外となります。

万が一、選任義務の対象にも関わらず、選任や届出を怠った場合は、罰則を科される可能性があります。法令を遵守し、交通事故防止や安全運転意識の向上に努めましょう。

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