アルコールチェッカーの使い方と3つの注意点|点検方法も解説!
2022年に道路交通法が改正され、一定台数以上の白ナンバーの社用車を所有している企業に対して、アルコールチェックが義務化されました。また、2023年12月1日からはアルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務付けられました。
これら義務化の内容を受け、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックを実施している方は多いと思いますが、
- アルコールチェッカーの正しい使い方がわからない
- 自社に合ったアルコールチェッカーの選び方を知りたい
- アルコールチェッカーの点検方法やメンテナンス方法について知りたい
- アルコールチェックの運用方法に悩んでいる
など、疑問や悩みを抱えていませんか?
そこで本記事では、アルコールチェッカーの「使い方」や「選び方」、「点検・メンテナンス方法」、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックの「実施方法」や「具体的な運用ステップ」等について解説します。使用する際の「注意点」も紹介していますので、アルコールチェックに確実に対応するための参考にしてください。
「アルコールチェックの運用で悩んでいる」方
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- 確認者と利用者双方の業務負担が大きい
- アルコールチェック結果の回収が手間
- 直行直帰だとチェック漏れが発生しがち
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アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
アルコールチェッカーとは
アルコールチェッカー(アルコール検知器)とは、センサー部分に息を吹きかけることで、体内に残留しているアルコール濃度を数値化する機械です。
体内のアルコール濃度は、血液中の濃度または呼気中の濃度のいずれかから求めることができますが、日常的な検査では、呼気中の濃度を測定することが多いです。
アルコールチェッカーの用途
アルコールチェッカーは、主に仕事で車の運転をする人の酒気帯びの有無を確認するのに使用します。
その目的は、飲酒運転や、飲酒運転による交通事故を防止することです。飲酒運転により交通事故を起こしてしまうと、相手や従業員がケガをしたり車の修理費が発生したりするだけでなく、会社のイメージダウンにもつながります。
飲酒運転の罰則については、以下の記事をご覧ください。
参考記事:飲酒運転の基準と罰則|お酒の分解時間や違反を防ぐポイントも解説
企業には、コンプライアンス強化の観点からも、厳格にアルコールチェックを実施し飲酒運転を防止する責任があります。
アルコールチェッカーを用いると、目視確認では判別できないような微量の酒気帯びも検知することが可能です。このため、緑ナンバー事業者と白ナンバー事業者の一部においては、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務付けられています。
白ナンバーのアルコールチェック義務化について復習したい方のために、『5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべて』をご用意しました。ぜひご覧ください。
アルコールチェッカーの種類
アルコールチェッカーは、センサーの仕組みの違いから主に2タイプに分けられます。
半導体式ガスセンサー
半導体式ガスセンサーは、体内にアルコールが残っていると吐き出す息の酸素量が減少し、センサー内部の電気抵抗値が低くなることを利用して、体内のアルコール濃度を算出する仕組みです。価格が安く、短時間で測定結果を出すことができるのが特徴です。
電気化学式センサーと比較すると、使用できる上限回数が少なく設定されていることが多いです。複数人で使いまわすと劣化が早く、定期的にメンテナンスをしないと正しくアルコールを検出することができません。
また、機能面でも「測定」のみとシンプルなものが多く、検査記録の保存機能が付いていないなどのデメリットもありますが、費用を抑えつつ十分な数のアルコールチェッカーを確保したい場合におすすめです。
電気化学式(燃料電池式)センサー
電気化学式(燃料電池式)センサーは吐き出す息に含まれるアルコールを燃料として電気を発生させ、その電気量からアルコール濃度を算出する仕組みです。アルコール以外の成分に反応せず検知性能が優れていることが特徴です。
経年劣化しにくく、誤検知が起こることも少ないですが、半導体ガスセンサーと比較すると価格が高く、測定結果が出るまでに時間がかかることがデメリットです。
多少費用がかかっても、アルコールチェックの正確性を重視したい場合におすすめです。
アルコールチェッカーの正しい使い方
法改正に対応するためにアルコールチェッカーを導入したものの、正しく使えているか不安に感じる方も多いようです。
ここでは、法令に基づいたアルコールチェッカーの正しい使い方について解説します。ポイントとなるのは、以下の4点です。
①確認者が立ち合い、対面でチェックする
アルコールチェックは原則として対面で行わなければなりません。確認者は、目視等で運転者の顔色、呼気のにおい、声の調子などに問題がないかどうか確認します。アルコールチェッカーを用いた場合でも、目視等の確認は省略できないため注意しましょう。
なお、直行直帰などにより対面確認が難しい場合は、運転者に携帯用のアルコールチェッカーを携行させた上で、
- カメラやモニター等で運転者の顔色や声の調子、アルコールチェッカーの測定結果を確認する
- 携帯電話や業務無線等で運転者と直接対話して運転者の声の調子を確認し、アルコールチェッカーの測定結果を報告させる
など、対面確認と同等とみなすことのできる方法で行いましょう。
アルコールチェックにおける確認者とは
アルコールチェックの実施は、緑ナンバー事業者では「運行管理者」、白ナンバー事業者では「安全運転管理者」の業務内容のひとつとして位置づけられています。そのため、基本的にはこれらの管理者がアルコールチェックにおける確認者を務めます。
ただし、管理者が不在の場合などは、副管理者や管理者の補助をする者が代理で行ってもよいとされています。
運行管理者や安全運転管理者については、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
参考記事:安全運転管理者と運行管理者の違いを解説!必要な資格や罰則も紹介
②運転前後の2回実施する
アルコールチェッカーを使う主なタイミングは、運転前と運転後の計2回です。道路交通法では、運転前だけでなく運転後にもアルコールチェックを行うことが義務付けられています。これは、運転中の飲酒がなかったかを確認するためです。
なお、運転の直前・直後である必要はなく、運転を含む業務の開始前や終了後、出勤時や退勤時でも問題ありません。
③風の当たらない場所でしっかりと息を吹きかける
アルコールチェッカーは主に以下の3タイプがありますが、いずれのタイプもセンサー部分で呼気中のアルコール濃度を検知します。
誤検知やエラーを防ぎ正しい測定結果を得るためにも、センサー部分にはしっかりと息を吹きかけるようにしましょう。吹き込みが足りない場合は測定エラーとなることもあるため、注意が必要です。
なお、風が当たる場所での測定は誤検知を招く場合があるため、避けた方がよいでしょう。
吹きかけ式のアルコールチェッカーと比較すると、ストロー式やマウスピース式の方が風などの環境による影響を受けにくいとされています。
吹きかけ式
画像:アイリスオーヤマ ALC-D1
吹きかけ式は、アルコールチェッカー本体に吹き込み口があり、直接息を吹きかけて使用します。
一番手軽に使用できるのは吹きかけ式のタイプですが、周囲の空気の影響を受ける可能性があるため、ストロー式やマウスピース式と比較すると少し精度が落ちる場合があります。
ストロー式
画像:タニタ HC-211-WH
マウスピース式
画像:ミタチ産業 アルポーター
マウスピース式は、アルコールチェッカー専用のマウスピースを使用して息を吹き込みます。ストロー式と同様で精度が高いと言われています。機種によっては吹きかけ式としてもストロー式としても使えるものや、マウスピースにストローを差して使えるものなど、複数の使い方ができるものがあります。
④測定結果を正しく評価する
市販のアルコールチェッカーの多くは、測定結果を小数点第2位または第3位まで表示します。酒気帯び運転の罰則対象となるのは、呼気中のアルコール濃度が0.15 mg/L以上の場合です。また、0.25 mg/L以上になると、さらに厳しい違反点数や処分が科されます。
測定結果が表示されたら、数値を慎重に確認し、基準値を超えている場合は絶対に運転しないでください。測定結果がこれらの基準に近い場合や曖昧な場合には、安全のために運転を控えることが推奨されます。
アルコールチェッカーの数値の見方や、酒気帯び運転の詳しい罰則内容については、以下の記事も参考にしてください。
参考記事:アルコールチェッカーの数値の正しい見方とは|酒気帯びの基準値や注意点も解説!
また、「自社がアルコールチェック義務化対応完璧にできているかわからない…」といった方に向けて、『弁護士監修|法令遵守チェックリスト(アルコールチェック義務化編)』をご用意しました。ぜひご活用ください。
指定のアルコールチェッカーはある?
アルコールチェックは法律で義務付けられているため、使用するアルコールチェッカーにも条件や指定品があるのか気になるという方も多いと思います。
アルコールチェッカーの性能
アルコールチェッカーについて、警察庁のQ&Aには以下のように記載されています。
アルコール検知器※については、酒気帯びの有無を音、色、数値等により確認できるものであれば足り、特段の性能上の要件は問わないものとする
※アルコール検知器とは、アルコールチェッカーのことです。
- 音、色、数値等で酒気帯びの有無が確認できる
- 正しく測定ができれば、メーカーや形は問わない
現在は各メーカーからいろんな種類のアルコールチェッカーが販売されており、価格や測定の精度、形状なども様々ですが、条件を満たしていればどれを使用しても問題ありません。
社内でのアルコールチェックの運用方法を想定した上で、自社にとって使いやすいアルコールチェッカーを選ぶことが大切です。
アルコールチェッカーの選び方
アルコールチェッカーを選定する際は、以下の3つの観点を持つことが重要です。
タイプ(形状)で選ぶ
アルコールチェッカーの形状は、事務所などに設置して使用する「据え置きタイプ」と持ち運びが可能で場所を問わず使用できる「ハンディタイプ」があります。
それぞれの特徴を確認しておきましょう。
据え置きタイプの特徴
メリット
- パソコンと連携させるとデータ管理がしやすい
- 管理者の前で測定することが多く、不正を防ぐことができる
デメリット
- 常に電源に繋いでおく必要がある
- 持ち運びができない
ハンディタイプの特徴
メリット
- 持ち運びがしやすく、自宅や車内など場所を問わず使用できる
デメリット
- 管理者の手元にないので、使用回数の管理がしにくい
- 製品によっては精度が低い可能性がある
測定の精度で選ぶ
アルコールチェックを行う上で、測定の精度は非常に重要です。精度が高い製品は価格も上がる傾向にはありますが、コンプライアンス強化という観点でもできる限り精度の高いアルコールチェッカーを導入することをおすすめします。
アルコールチェッカーに使われているセンサーには「半導体式ガスセンサー」と「電気化学式(燃料電池式)センサー」の2種類があります。精度が高いのは「電気化学式センサー」です。電気化学式センサーはアルコール以外の成分には反応しないという特徴があります。精度の高さを重視する場合は、電気化学式センサーを選ぶようにしましょう。
機能性で選ぶ
アルコールチェッカーには、アルコール濃度を測定するだけでなく、様々な便利な機能が搭載されたものがあります。
例えば、スマホのアプリと連携することで、アルコールチェッカーの測定値が自動でアプリ内に反映され、管理者が離れた場所にいてもその情報をリアルタイムで確認することができるものもあります。また、位置情報を記録できるものや、測定時に顔写真撮影を行って不正を防ぐものなど、多岐にわたります。
社内でのアルコールチェックの運用方法を想定した上で、管理者とドライバーの双方にとって使いやすいアルコールチェッカーを選ぶことが大切です。
以下の記事では、おすすめのアルコールチェッカーをタイプ別に紹介しています。ぜひ参考にしてください。
正しく測定するための3つの注意点
アルコールチェッカーで正確に測定するため、また想定外のアルコール検出によるトラブルを防ぐため、以下の3点に注意しましょう。
①うがいをしてから測定する
口内に飲食物が残っていると、アルコールチェッカーが誤検知する場合があります。誤検知を防ぐためにも、アルコールチェック前にはうがいをするようにしましょう。うがいをする際、アルコールタイプの洗口液を使用するのは避けましょう。
②測定前の飲食・喫煙は避ける
飲食や喫煙の直後は正確に測定できない場合があるので、15分~20分程度経ってから測定するようにしましょう。洋酒入りのパンや洋菓子、ミントガム、エナジードリンク、キムチなどの発酵食品もアルコールチェッカーに反応してしまうことがあるため、注意が必要です。
③前日の飲酒にも注意する
飲酒直後に運転しようとする方はいないと思いますが、意外と見落としがちなのが前日の飲酒です。夜遅くまで飲んでいた場合や飲酒量が多かった場合、翌日の朝のアルコールチェックでも検出されることがあります。アルコール代謝の能力は個人差があるため、自身にとって適正な飲酒量を把握し、翌日に運転する予定がある場合は飲み過ぎに注意しましょう。
点検・メンテナンス方法
道路交通法では、”アルコールチェッカーを常時有効に保持すること”が義務付けられており、そのためにはこまめに点検やメンテナンスを行うことが大切です。ここからは、アルコールチェッカーの点検やメンテナンスの方法、頻度についてお話しします。
日常点検の方法
アルコールチェッカーが正しく測定できる状態にあるかどうかを確認するためには、日常的に点検を行うことが重要です。日常点検には、毎日の持ち出し前に行うべき点検と、週に1回以上行うべき点検があります。
持ち出す前に確認すべきこと
運転前に車でアルコールチェックを実施する際や外出先にアルコールチェッカーを持って行く場合には、持ち出す前にアルコールチェッカーの状態を必ず確認するようにしましょう。持ち出す前に確認すべき内容は以下のとおりです。
- 電源が入るかどうか
- 損傷していないかどうか
週1回以上確認すべきこと
週1回以上確認すべきこととしては、「アルコールを含んでいない正常な呼気で反応が出ないか(計測数値が0か)」、「アルコールを含んだ呼気で反応があるか」の2点です。要するに、正しい計測数値が出ているかを確認します。確認ステップは以下のとおりです。
- アルコールを含んでいない人がアルコールチェッカーを吹く
- 数値が0であることを確認する
- アルコール成分を含むマウススプレー等を使用した上で、再度アルコールチェッカーを吹く
- アルコールが検知されることを確認する
アルコールチェッカーには使用回数・耐用年数の上限がある
アルコールチェッカーのセンサーは使用しているうちに劣化するため、永久的に使用できるものではなく、使用回数や耐用年数の上限が定められています。これらは機種によって異なるため、必ず説明書を確認するようにしましょう。
メンテナンスの方法
使用回数や耐用年数を超えたアルコールチェッカーは、センサー交換のためのメンテナンスを行う必要があります。アルコールチェッカーのメンテナンスは基本的に製造元に依頼します。センサー交換式のタイプでは、センサー部分のみを購入して自分で交換できるものもありますので、取扱説明書等で確認しておきましょう。
多くの機種は、使用した回数や残りの回数が本体に表示されたり、製造元から交換時期のお知らせメールが届いたりして、メンテナンスを行うべきタイミングを把握することができます。あまりギリギリまで使用せず、余裕を持ってメンテナンスを行うと安心です。購入時には、センサーの交換ができるかどうかや交換時期を把握する方法について確認するようにしましょう。
なお、センサー交換ができないタイプの場合は、本体ごと買い替えなければなりません。
アルコールチェッカーが正常に検知できないと飲酒運転に繋がりかねないため、点検・メンテナンスは必ず実施するようにしましょう。
メンテナンスを怠った場合の罰則
”アルコールチェッカーを常時有効に保持すること”を守らず、アルコールチェッカーの点検やメンテナンスを怠るとどのような罰則があるのか解説します。
アルコールチェッカーを備えなかった場合
そもそもアルコールチェッカーを備えていなかった場合、緑ナンバーには以下のような罰則が設けられています。
白ナンバーに対する直接的な罰則は現時点で設けられていませんが、安全運転管理者が業務を遂行する上で必要な機材を用意していないということになり、自動車の使用者に対して是正措置命令が下される可能性があります。この是正措置命令に従わない場合は、命令違反の罰則が科されます。
アルコールチェッカーが常時有効な状態になっていない場合
アルコールチェッカーを備えていても、点検やメンテナンスを怠り、正しく使える状態になってない場合は、罰則の対象となります。緑ナンバーには、以下のような罰則が設けられています。
こちらも白ナンバーに対する罰則は現時点では発表されていませんが、安全運転管理者の業務違反に該当するので注意が必要です。業務違反が著しく、それにより安全運転が確保できていないと判断された場合は、解任命令が下される可能性があります。
なお、安全運転管理者に関する罰則については以下の記事で解説しています。
参考記事:安全運転管理者の罰則を解説|法令遵守のポイントや業務内容も
合わせて、アルコールチェック義務化に対する罰則を知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
アルコールチェック結果の記録方法
記録すべき項目
アルコールチェック義務化により、記録しておかなくてはならない項目は以下の8つです。
- 確認者名
- 運転者名
- 運転者の業務に係る自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
- 確認の日時
- 確認の方法
・アルコール検知器の使用を記載(2023年12月1日~)
・対面でない場合はビデオ通話などの具体的な確認方法を記載 - 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
Excel形式の記録簿を運用する際の記載例を以下に掲載していますので、参考にしてください。
この記録簿のひな形は、【無料】アルコールチェック記録簿のひな形5選|記入例や保存方法も紹介の記事にて無料でダウンロードできます。記録の保存期間
アルコールチェック記録簿の保存期間は「1年間」と定められています。社用車の利用頻度が高い場合には、アルコールチェック記録簿の枚数はかなり多くなりますので、しっかりと期限管理することが求められます。
アルコールチェック義務化により業務量が増えた中でも、効率的に法令遵守の徹底を行うことのできている企業様の事例を『アルコールチェック義務化の対応成功事例6選』にてご紹介しています。ぜひご覧ください。
合わせて知りたい、アルコールチェック義務化とは
アルコールチェッカーの運用を開始するにあたり、アルコールチェック義務化の内容についておさらいしておきましょう。ここでは、道路交通法改正によるアルコールチェック義務化の経緯や内容、スケジュールについてご説明します。
また、アルコールチェック義務化について復習したい方のために、『5分でわかる!アルコールチェック義務化のすべて』をご用意しました。ぜひご覧ください。
なぜアルコールチェックが義務化されたのか
白ナンバーへのアルコールチェックは、2021年6月に千葉県八街市で起きた飲酒運転のトラックによる交通事故がきっかけで義務化されました。
事故の概要
令和3年6月28日、千葉県八街市で、飲酒運転のトラックが下校中の小学生の列に突っ込み児童5人が死傷しました。事故後、運転者の呼気から基準値を上回るアルコールが検出されましたが、運転者が乗っていたのは飲酒検査が義務付けされていない白ナンバーのトラックでした。
この事故を受け、道路交通法施行規則が改正され、白ナンバー車両に対しても飲酒運転防止対策を強化することを目的として、安全運転管理者の確実な選任・運転前後のアルコールチェックの実施・アルコールチェック記録の保管が義務化されました。
今までも飲酒運転による事故が起きる度に道路交通法が改正されてきましたが、なかなか飲酒運転がなくならないため、この事故をきっかけにさらに法制化や厳罰化が進められました。
義務化の内容とスケジュール
アルコールチェック義務化は、2022年4月と2023年12月の二段階に分けて施行されました。それぞれの内容とスケジュールを改めて確認しておきましょう。
2022年4月に施行された内容(第一段階)
飲酒運転による交通事故を今まで以上に厳格に防止するために、まずは運転前と運転後の計2回、ドライバーに対してアルコールチェックを実施し、その記録を管理することが義務化されました。
ただし、第一段階では、アルコールチェックの際にアルコールチェッカー(アルコール検知器)を用いることまでは義務化されず、「目視等」で実施すればよいとされていました。
2022年4月1日から義務化された内容は、具体的には以下のとおりです。
- 運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無の確認をすること
- 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること
(道路交通法施行規則第9条の10)
2023年12月に施行された内容(第二段階)
第二段階では、さらに厳格なアルコールチェックの実施が必要となりました。第一段階では「目視等」での実施に留められていましたが、第二段階では「アルコールチェッカー」を用いたアルコールチェックが義務付けられました。
アルコールチェッカーは定期的に点検を行い、いつでも正確に測定できる状態に保つことも義務化の内容に含まれています。
アルコールチェッカーの使用について、当初は2022年10月1日から義務化される予定でしたが、アルコールチェッカーの供給不足等を踏まえて延期となっていました。
(参照:警察庁の発表文書)
その後、安全運転管理者へのアンケートやアルコールチェッカー製造業界からの意見等により、アルコールチェッカーの供給状況は改善傾向にあると認められ、飲酒運転防止を図るためには早期にアルコールチェッカーを導入することが望ましいとの見方から、2023年12月1日から義務化開始となりました。
2023年12月1日から義務化された内容は、具体的には以下のとおりです。
- 運転者の酒気帯びの有無の確認を、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いておこなうこと
- アルコール検知器を常時有効に保持すること
(道路交通法施行規則第9条の10)
なお、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーとは、「呼気中のアルコールを検知し、その有無 又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器」を指しており、これを満たしたアルコールチェッカーであれば問題なく使用できます。
二段階にわたるアルコールチェック義務化の内容を図でまとめると以下のとおりです。
アルコールチェッカーを用いた運用8ステップ
実際にアルコールチェッカーを用いてアルコールチェックを運用する際には、どのような流れになるのでしょうか。一般的な流れを8ステップでまとめると以下のとおりです。
- 運転前に安全運転管理者が立ち合ってチェッカーを用いたアルコールチェックを実施する
- ドライバーがアルコールチェックの結果を記録簿に記入する
- 運転する
- 運転後に安全運転管理者が立ち合ってチェッカーを用いたアルコールチェックを実施する
- ドライバーがアルコールチェックの結果を記録簿に記入する
- ドライバーから安全運転管理者に記録簿を提出する
- 安全運転管理者が記録簿の内容をチェックし、未記入等があった場合は修正を依頼する
- 内容の確認が完了したら、記録簿を1年間保存する
ここまでお伝えした内容と重複する部分もありますが、このステップの中で大切なポイントは以下の3点です。
- 運転前後のアルコールチェックには、原則として安全運転管理者が立ち合わなくてはならない
- アルコールチェックの結果は記録簿に残し、1年間しなくてはならない
- アルコールチェッカーをいつでも正確に計測できる状態に維持しておかなければならない(2023年12月1日~)
この3つは道路交通法施行規則で定められている内容なので、必ず守らなくてはなりません。
対面が難しい場合のアルコールチェック実施方法
直行直帰など対面で実施できない場合
アルコールチェックは原則対面で実施することとされていますが、実際は直行直帰や出張等で対面での実施が難しい状況もあるかと思います。そのような場合は、「対面に準ずる適宜の方法」で実施すればよいとされています。
警察庁は対面に準ずる適宜の方法として、以下を具体例として挙げています。
- カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
- 携帯電話、業務無線その他の運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法
なお、直行直帰時のアルコールチェックの実施方法については、以下の記事で詳しく解説しています。直行直帰であってもアルコールチェックは必ず行わなくてはならないので、合わせてご確認ください。
安全運転管理者が対応できない場合
安全運転管理者が実施することが困難な場合には、副安全運転管理者や安全管理者を補助する者などが、代わりに実施します。安全運転管理者が休暇や欠勤などで不在の場合でも、アルコールチェックが適切に行われる必要があります。企業・事業所で継続的にアルコールチェックを実施する必要があるため、適切な教育や訓練を行うようにしなくてはなりません。
安全運転管理者の全体像について、『安全運転管理者まるわかりガイド』にイラスト付きでわかりやすくまとめています。ぜひご覧ください。
アルコールチェックの業務負担を軽減する方法
アルコールチェック実施の8つのステップをご紹介しましたが、上記のステップだと手間がかかると感じた方も多いと思います。また、従業員が飲酒運転による事故を起こしてしまった場合には厳しい罰則が設けられている上に、会社の信用を失うことにも繋がるため、アルコールチェックは厳格に実施しなくてはなりません。
これらのアルコールチェックの運用を効率的かつ厳格に実施する方法として最近注目されている「車両管理システム」についてご紹介します。
車両管理システムとは
車両管理システムとは、社用車やリース車などの車両を効率よく管理することができるシステムのことです。
具体的には、アルコールチェック義務化の対応をまるごと行うことができるシステム、1台の車を複数人で使う場合の予約管理ができるシステム、運転日報や日常点検などの書類をデータで管理できるシステム、走行距離を計測して最適なルートを教えてくれるシステムなどがあります。
2017年の中型トラックに対するタコグラフ搭載義務化をきっかけに車両管理システムの需要が一気に高まり、2016年から2022年の間で、導入した車両台数は約3.7倍になりました。
車両管理システムを導入するメリット
車両管理システムを導入する大きなメリットは、管理工数の削減とアルコールチェックの厳格化です。
安全運転管理者の業務はアルコールチェックだけでなく、運行計画の策定や日報類の管理など多岐に渡ります。車両台数が多い場合や管理者の人数が少ない場合などは特に多くの時間が必要になります。車両管理システムを用いると、アルコールチェックの記録をデータ化してチェックの手間を省くことができます。また、アルコールチェック記録だけでなく、その他の運転日報や日常点検の記録も合わせてペーパーレス化できるようなシステムもあります。これらの情報を一元管理することで抜け漏れを防止したりすることもできます。
また、アルコールチェッカーとシステムを連携させて、アルコールチェックの計測数値を自動で記録に反映させたり、チェック時にカメラが起動してなりすましを防止したりする機能を搭載したシステムもあります。車両管理システムを導入することで、コンプライアンスの観点でも重要なアルコールチェックの厳格化を実現することができます。
車両管理システムを用いたアルコールチェックの運用例
車両管理システムを用いてアルコールチェックを実施する場合の流れを、弊社の提供する車両管理システム「Bqey(ビーキー)」を具体例として用いて説明します。
1.安全運転管理者の立ち合いのもと、運転前のアルコールチェックを行います。一部の情報は自動入力されるので、必要な情報のみ入力します。
2.運転後も同様にアルコールチェックを行い、そのままアプリから提出します。
3.提出された記録はすぐにシステムに反映され、安全運転管理者はリアルタイムで記録を確認することができます。データは自動で3年間システムに保存されます。
未提出や未記入があった場合には、ドライバーに自動で通知が届くので、管理者のチェックの手間を大幅に省きます。概算にはなりますが、社用車を5~6台と仮定した場合は、アルコールチェック記録のとりまとめにかかる時間が30分から5分程度に、改修した書類の確認・保管にかかる時間が20分から5分程度に削減が見込まれます。
このように、車両管理システムを活用するとアルコールチェックに関して、安全運転管理者・ドライバーの双方にとっての業務負担を軽減することができます。
また、アルコールチェックだけでなく、システム上で車両の予約管理をしたり、運転日報や日常点検等の書類をデータで一元管理したりすることができるなど、車両管理システムには様々な機能があります。
様々な機能があるからこそ価格も様々で、機能が充実していればしているほど費用が高くなってしまいます。まずは自社の抱えている課題を見える化し、課題を解決することができる機能を絞り込み、適切なシステムを選ぶことで、車両管理システムはより大きなメリットをもたらします。
まずは各社が提供する車両管理システムについて幅広く情報収集することをお勧めします。その上で、費用対効果が得られるかをしっかりと吟味し、車両管理システムを選択するようにしましょう。
『車両管理システムの選び方』についてイラストつきで詳しく解説しています。各機能の説明や、選ぶ時のポイントをまとめていますのでぜひご覧ください。
まとめ
今回は、アルコールチェッカーの使い方や選び方、点検・メンテナンス方法、運用方法などについて解説しました。
2023年12月1日からアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックの義務化が開始され、アルコールチェッカーを常に有効な状態にしておかなければいけなくなりました。
企業には、「飲酒運転防止の強化」というアルコールチェック義務化の目的を正しく理解し、着実に対応を進めていく責任があります。今はまだ義務化の対象外である企業においても、自社での飲酒運転防止の取り組みを強化することをおすすめします。
法律に沿った正しい使い方と、適切な点検・メンテナンスの実施を心がけ、飲酒運転の防止に努めましょう。
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