5分でわかる!安全運転管理者の選任義務|対象企業や届出方法も解説
2022年4月1日に改正道路交通法が施行され、一定台数以上の白ナンバーを所有している企業に対しても、アルコールチェックが義務化されました。2023年12月1日からは延期となっていたアルコール検知器を用いたアルコールチェックも義務化されることになり、準備を進めている企業も多いです。
義務化対応を進める中で「安全運転管理者」という言葉を耳にした方もいるかと思いますが、
・自社が安全運転管理者を選任しなくてはいけないのかわからない
・誰を選任したらよいかわからない
・選任後の届出の方法を知りたい
など、疑問を抱えているケースも多いようです。
そこで、本記事では、安全運転管理者の「選任義務」とその「対象者」、「選任後の届出方法」や具体的な「業務内容」などについてわかりやすく解説します。
これ一冊で安全運転管理者の選任義務や罰則が
まるわかり!
一定台数以上の社用車を所有している企業は、道路交通法によって「安全運転管理者」を選任することが義務付けられています。安全運転管理者の選任・届出方法や業務内容、違反した場合の罰則についてわかりやすく解説した資料をご用意しました。
【資料で分かること】
- 道路交通法改正の概要
- 安全運転管理者とは
- 安全運転管理者の選任義務と罰則
- 安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者について理解を深めるために、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
アルコール検知器を用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化されました。義務化に至った詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
【速報】アルコールチェック義務化開始!警察庁発表をわかりやすく解説!
安全運転管理者には選任義務がある
安全運転管理者には選任義務が設けられています。まずは、安全運転管理者の概要や選任しなくてはいけない理由についてお伝えします。
そもそも、安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、業務で使用する自動車の運転を管理・監督する人のことです。道路交通法により、一定台数以上の社用車を所有する企業や事業所に対して選任が義務付けられています。安全運転管理者には、重要な役割が託されています。その中心的任務は、安全運転を推進し事故の防止に取り組むことです。
安全運転管理者は、運転者の教育や訓練を行ったり、運転状況を監視したりするだけではなく、安全対策を策定して実施する責任を持っています。そのために、組織内で安全運転の風土を育て上げ、事故を事前に防止するために活動します。
なお、安全運転管理者については以下のコラムでも解説しているので、合わせてご覧ください。
参考記事:【2023】5分でわかる安全運転管理者とは|選任義務や業務内容を徹底解説
なぜ安全運転管理者を選任しなくてはいけないのか
企業や事業所が安全運転管理者を選任しなくてはいけない理由は、大きく3つあります。
- 法律や規則を守るため
安全運転に関する法律や規則は年々厳格化しており、それらを適切に遵守するには確固たる管理体制が欠かせません。選任が求められる企業や事業所が安全運転管理者の選任を怠った場合、罰則が適用されることがあります。
- 安全な運転環境を整えるため
事故や違法行為は企業や事業所の評判や信頼性に大きな影響を与えます。そのため、安全運転管理者が運転状況の監視や安全対策の徹底、運転者の教育等を行い、事故や不法行為の防止に取り組むことが重要となります。
- 業務の効率化とコスト削減を図るため
事故や違反による損害は、企業にとって大きな経済的な負担となります。これらを未然に防ぐことで、業務の効率化やコスト削減に繋がります。
選任を怠るとどうなるのか
- 50万円以下の罰金
なお、選任義務違反が発生すると、行政機関や関連する機関から警告、是正措置命令などの措置を受ける可能性があります。是正措置命令に違反して改善措置を怠ったり、要求事項に沿わなかったりする違反が発覚した場合にも、50万円以下の罰金が科せられます。
もともと、選任義務違反や是正措置命令に関する罰則は5万円以下の罰金でしたが、2022年10月に行われた道路交通法の改正により、安全運転管理者に対する罰則が以前よりも厳しくなり、先程お伝えした50万円以下の罰金となりました。
様々な罰則が設けられるほど、安全運転管理者は重要な役割を担っています。企業や事業所には安全運転管理者の選任を適切に行い、法令を遵守することが求められています。
なお、その他にも安全運転管理者に関する罰則が定められています。安全運転管理者に関する罰則について知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
参考記事:安全運転管理者の罰則とは|制度や罰金、業務内容も解説
選任義務の対象となる企業
安全運転管理者の選任義務の対象となるのは、以下のいずれかに該当する企業や事業所です。
- 乗車定員が11人以上の自家用自動車を1台以上使用している
- 5台以上の自家用自動車を使用している
(原動機付自転車を除く自動二輪は1台につき自動車0.5台として計算)
ただし、運送業で配置が義務付けられている「運行管理者」を選任している場合は対象外となります。
安全運転管理者と運行管理者の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。それぞれの選任義務の対象となる基準や、管理者の業務内容、違反行為に対する罰則について分かりやすく説明していますので、ぜひご覧ください。
安全運転管理者は何人必要か
ここでは、安全運転管理者の選任人数についてお伝えします。
安全運転管理者の人数
選任しなくてはならない安全運転管理者の人数は、所有している車両台数が何台であっても変わりません。安全運転管理者は最低1名選任すれば問題ありません。
副安全運転管理者の人数
車両台数が多い場合には、安全運転管理者の業務を補助したり、不在時に代理で業務を遂行する「副安全運転管理者」を選任する必要があります。
副安全運転管理者は安全運転管理者と違い、車両台数が増えるほど選任しなくてはいけない人数が増えます。車両台数が19台までの場合は副安全運転管理者の選任は不要ですが、20台以上の自家用自動車を所有している企業や事業所は、20台ごとに1人ずつ副安全運転管理者を選任しなければなりません。
安全運転管理者になれるのはどんな人か
ここからは、どのような人が安全運転管理者になれるのか、資格要件をお伝えします。
安全運転管理者
安全運転管理者は、以下の資格要件を満たす必要があります。
- 年齢:20歳以上
(副安全運転管理者が置かれている場合は、30歳以上でなければならない)
- 運転管理実務経験:運転管理の実務経験が2年以上必要
他にも、公安委員会に上記と同等の能力があると認められた場合には、安全運転管理者になることができます。
副安全運転管理者
副安全管理者になるには、道路交通法施行規則第9条の9第2項により、以下の要件を満たす必要があります。
- 20歳以上の者。
- 自動車運転管理の実務経験が1年以上ある者、自動車運転の経験が3年以上ある者、自動車運転管理に関して前の2つの者と同等以上の能力があると公安委員会が認定した者のいずれか。
- 安全運転管理者等の解任命令を過去2年以内に受けていない者、酒酔い運転や無免許運転などの違反を過去2年以内にしていない者。
なお、安全運転管理者も副安全運転管理者も、違反行為がある人は選任できません。違反行為とは具体的には、交通違反や事故の過失、運転中の不適切な行動などを指します。これらの行為は、安全運転の基本原則に反するものであり、他の人や組織に悪影響を与える可能性があるためです。
例えば、以下のような行為が該当します。
- ひき逃げ
- 酒酔い・酒気帯び運転
- 飲酒運転に関し車両などを提供する行為、酒類を提供する行為及び依頼・要求して同乗する行為
- 麻薬等運転
- 無免許運転、無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為
- 次の交通違反の下命・容認
酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反
- 自動車使用制限命令違反
- 妨害運転
安全運転管理者の具体的な業務内容
実際に安全運転管理者に選任されると、どのような業務を行わなければならないのでしょうか?具体的な業務内容について確認しておきましょう。
9つの業務内容
安全運転管理者は、以下の9つの業務を担当します。
- 運転者の状況把握
運転者の適性や技能、知識及び法令や処分の遵守状況を把握するための措置を講じます。
- 運行計画の作成
最高速度違反や過積載運転、放置駐車違反行為や過労運転の防止など、安全運転の確保に留意して、自動車の運行計画を作成します。
- 交替要員の配置
運転者が長距離運転や夜間運転を行う場合、疲労などで安全な運転ができなくなる可能性があるときは、事前に交代ドライバーを準備します。
- 異常気象時等の安全確保の措置
異常な天候や自然災害などで、安全な運転が困難になる可能性があるときは、適切な指示を出し、安全な運転を確保するための措置を取ります。
- 安全運転の指示
運転者に対して点呼を行い、自動車の点検の実施状況や、病気や過労などで運転ができない可能性があるかどうかを確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えます。例えば、適切な休息や運転方法のアドバイスなどを行い、安全性を高めます。
- 運転前後の酒気帯び確認
運転をする前や終了後の運転者に対して、酒気帯びがあるかどうかを、目視やアルコール検知器などの手段で確認します。運転者の状態を確認することで、酒気帯び運転を防止し、安全な運転環境を確保します。
- 酒気帯び確認の記録・保存
酒気帯びの確認結果を記録し、その記録を1年間保存することで、適切な管理と監査が可能となります。
- 運転日誌の記録
運転者には運転日誌を備え付けてもらいます。運転者名や運転の開始と終了の日時、運転距離などの必要な情報を記録することによって、運転状況の把握や適切な記録管理が行えます。
- 運転者に対する指導
自動車の運転に関する技術や知識など、安全な運転を確保するために必要な事項について、運転者への教育を行います。適切な運転方法、交通規則の遵守、事故防止などについて教育し、安全な運転を推進します。
運転日誌の管理や運転者への指導、酒気帯びのチェックなどを通じて安全運転を促進し、事故の予防に努めるのが、安全運転管理者の業務です。また、組織内での安全意識の向上や安全文化の確立にも貢献します。
なお、安全運転管理者の業務の一つである「アルコールチェック」については、2022年4月の道路交通法で白ナンバーに対しても義務化されました。アルコールチェック義務化の詳細については以下のコラムをご確認ください。
参考記事:【12月最新】アルコールチェック義務化とは|運用方法まで徹底解説!
安全運転管理者の業務がアルコールチェック義務化によってどう変わったのかを知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。
参考記事:アルコールチェック義務化で安全運転管理者の業務はどうなる?
選任後の届出の方法
安全運転管理者や副安全運転管理者を選任した後には、届出を行わなくてはなりません。ここからは、届出について解説します。
届出のタイミング
安全運転管理者等の届出のタイミングは、道路交通法で以下のように定められています。
自動車の使用者は、安全運転管理者または副安全運転管理者を選任したときは、選任した日から15日以内に、所定の事項を自動車の使用の本拠の位置を管轄する公安委員会に届け出なければならない。これを解任したときも同様とする。
(道路交通法第74条の3第5項:選任、解任届出義務)
届出先
多くの都道府県では、警察署の窓口または警察行政手続サイトによる電子申請が可能です。ただし、一部の都道府県では届け先が異なる場合もあります。下記に届出方法の一例をご紹介します。
- 青森県
北海道警察の窓口または「青森県電子申請・届出システムのページ」による電子申請
https://www.police.pref.aomori.jp/koutubu/koutu_kikaku/ankan.html
- 神奈川県
神奈川県警察の交通課の窓口または「警察行政手続サイト」からの電子申請
https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesf0181.htm
- 石川県
石川県警察の交通課の窓口または「石川県電子申請システム」からの電子申請
https://www2.police.pref.ishikawa.lg.jp/trafficsafety/trafficsafety05/trafficsafety06.html
- 大阪府
大阪府警察の交通課の窓口へ持参・郵送または「警察行政手続サイト」からの電子申請
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/tetsuduki/ankankosyu/10413.html
- 福岡県
福岡県警察の交通課の窓口または「ふくおか電子申請サービス」からの電子申請
https://www.police.pref.fukuoka.jp/kotsu/kotsukikaku/002.html
そのほかの都道府県については、こちらのリストを参考に、最新の情報を確認し、届出を行うようにしましょう。
【都道府県別】安全運転管理者届出先リスト
届出に必要な書類
必要書類には、下記のようなものがあります。都道府県によって必要とされる書類が異なる場合があるため、事前に確認して提出しましょう。
- 公的身分証明書のコピー(運転免許証や戸籍抄本又は住民票の写しなど)
- 運転管理経歴証明書
- 運転記録証明書など
安全運転管理者を変更したい場合はどうしたらよいか
選任・届出後に安全運転管理者を変更する必要が生じることもあるかと思います。そのような場合は、選任および解任について届出を行う必要があります。この届出手続きは、各都道府県の警察署の交通課などに提出することになります。
具体的な手続きは、以下のような流れで行われます。
- 届出書の作成
新たに選任したり、解任を行う際には、届出書を作成します。届出書には、選任または解任する安全運転管理者の氏名や生年月日などの詳細な情報や、自動車台数や運転者数などを記載します。
- 届出先への提出
届出書を作成した後、それを各都道府県の警察署の交通課などの届出先に提出します。提出方法は、交通課の窓口への提出やオンライン申請など、地域によって異なる場合がありますので、詳細は届出先に確認してください。
- 審査と届出証明書の発行
提出した届出書は届出先で審査され、適正な内容であることが確認された場合には、届出証明書が発行されます。この証明書は、安全運転管理者や副安全運転管理者の選任または解任を証明する重要な書類ですので、大切に保管しましょう。
この届出を怠った際にも罰則は適用されるので、必ず行うようにしましょう。
選任や解任等の届出を怠るとどうなるのか
選任や解任の届出を怠った場合の罰則についてお伝えします。先程、選任を怠った場合の罰則をお伝えしましたが、選任後に届出を怠った場合にも、罰則が設けられています。具体的な罰則は以下のとおりです。
- 5万円以下の罰金
選任を怠った場合等の罰則が厳罰化されたのと同様に、届出を怠った場合の罰則も2022年10月に引き上げられました。元々は「2万円以下の罰金または科料」と定められていました。
なお、安全運転管理者の業務の一つである「アルコールチェック」に関する罰則については、以下のコラムで解説しています。2022年4月の道路交通法の改正により、アルコールチェックが義務化されたので、罰則を確認した上で対応を進めて起きましょう。
参考記事:アルコールチェック義務化の罰則とは|義務化の内容や運用方法も解説
選任後は法定講習の受講が必要
安全運転管理者は、法律に基づいて定期的に法定講習を受ける必要があります。
安全運転管理者の届出が完了すると、都道府県の公安委員会から安全運転管理者等講習の受講通知書や手数料の納付書などが送られてきます。受講日までに手数料を納め、必要な書類を持参して講習に参加しましょう。
講習では、安全運転の重要性や法律の改正内容などを学びます。法定講習の目的は、必要な法律の知識や、安全運転管理の心構えや方法を身につけることです。
法定講習は、指定された講習機関や団体で実施されます。法定講習の受講証明書や修了証を保管することも重要です。
なお、安全運転管理者の法定講習については、以下のコラムで詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
参考記事:【2023】安全運転管理者講習とは|受講費用や罰則についても解説
まとめ
今回は、安全運転管理者の選任義務について詳しくご説明しました。安全運転管理者は社用車を一定台数以上持っている企業にとって、非常に重要な業務を担っています。そのため、適切な人物を選び、適切に運用していく必要があります。
選任を怠った場合には罰則も設けられているため、適切に対応を進めるようにしましょう。
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