居眠り運転の罰則で免許取消も?違反点数から原因・対策まで徹底解説!
居眠り運転は重大事故の原因となる危険行為で、安全運転義務違反や過労運転に該当すると、免許取消や刑事処分の対象になることもあります。
本記事では、罰則内容や企業の責任、運転者が実践すべき対策、さらに居眠り防止に役立つ最新ツールまでわかりやすく解説します。
この記事でわかること
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居眠り運転とは
- 居眠り運転の罰則
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従業員の居眠り運転で企業側が負う責任
- 居眠り運転の原因と対策
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居眠り運転防止に役立つツール
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居眠り運転とは
居眠り運転とは、運転者が睡眠不足や疲労などにより意識が低下し、走行中に眠ってしまう、または一時的に意識を失うことで安全運転ができなくなる状態を指します。
集中力や反応速度が著しく低下し、ブレーキやハンドル操作が遅れるため、重大事故につながる危険性があります。
道路交通法に「居眠り運転」という言葉は直接は記載されていません。しかし、居眠り運転は「他人に危害を及ぼさない速度や方法で運転すること」を定めた安全運転義務に違反する行為として扱われます。
安全運転義務違反とは
道路交通法第70条において、以下のように定められています。
引用元:道路交通法第七十条|e-Gov検索第七十条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
スマートフォンを操作しながらの運転、前方や後方の確認不足、安全な速度を守らない運転などは、いずれも「安全運転義務違反」とみなされます。つまり、居眠りによって安全運転が損なわれた場合も、安全運転義務違反と判断されるおそれがあります。
検挙された場合には、違反点数の付与や反則金の納付といった行政処分が科され、さらに重大な事故を引き起こした場合には刑事処分を受けることもあります。
安全運転義務違反の具体的な行為や、防止するポイントなどについて知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
居眠り運転が「過労運転」と判断されることも
居眠りの原因が疲労によるものと判断された場合、その居眠り運転は「過労運転」とみなされることがあります。
過労運転とは、長時間の労働や睡眠不足などにより心身が著しく疲労し、正常な運転ができない状態で車を運転することを指します。過労運転に該当すると、安全運転義務違反よりも重い処分が科されます。
過労運転の基準
では、何を基準に過労運転と判断するのでしょうか。飲酒運転における「呼気中のアルコール濃度」のように、過労運転の基準が法律で明確に数値化されているわけではありません。
ただし、ひとつの目安として厚生労働省が定める労働時間の基準が挙げられます。
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一般的な法定労働時間は「1日8時間、1週間40時間」
※これを超える労働は原則として時間外労働とされる -
労使協定(36協定)を結ぶことで、一定の時間外労働を認めることができる
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ただし例外的事情を認めた場合でも、時間外労働時間は「年720時間、月100時間未満、2~6か月平均で月80時間以内」という上限の枠が設けられている
参照元:労働時間・休日|厚生労働省
参照元:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
運送事業に従事する自動車運転者には、一般の労働時間規定に加えて、「改善基準告示」という指針が設けられています。例えば、以下のような労働時間の上限が定められています。
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1日の拘束時間は原則13時間以内(最大でも15時間を超えないこと)
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連続運転は4時間以内とし、その間に休憩をとること
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1か月の拘束時間は原則284時間以内(トラック運転者の場合は最大310時間)
これらの基準を守らずに勤務や運転業務を続けた結果、居眠り運転などに至った場合には、「過労運転」と判断され、より重い責任を問われる可能性が高くなります。
居眠り運転の罰則
居眠り運転が運転操作不適や漫然運転とみなされると、安全運転義務違反となり下記の違反点数と反則金が科されます。
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違反点数:2点
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反則金:1万2,000円(大型車)、9,000円(普通車)、7,000円(二輪車)、6,000円(小型特殊車・原付)
参照元:交通違反の点数一覧表|警視庁
参照元:反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
反則金とは、軽微な交通違反に対して科される行政上の金銭的制裁です。罰金とは異なり、裁判を経ずに納付することで刑事手続には進みません。ただし、反則金を納付せずに放置した場合には、刑事手続に移行し3ヶ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金が科されます。
「過労運転」に該当する場合
居眠り運転によって正常な運転ができず、その原因が過労にあると判断された場合は、道路交通法第66条「過労運転等の禁止」に基づき、過労運転として処罰されます。
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違反点数:25点
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行政処分:免許取消
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罰則:3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
過労運転と判断されると、罰則だけではなく、免許取消という重い処分が科されます。
居眠り運転で交通事故を起こした場合
物損事故の場合、基本的には行政処分(違反点数や反則金)の対象となることが多いです。しかし、物損であっても所有者など相手方に損害が出れば、民事上の賠償責任を負うことになるケースもあります。
一方、人身事故を発生させた場合は刑事責任が問われます。状況にもよりますが、負傷させた場合は過失運転致傷罪、死亡させた場合は過失運転致死罪が適用されることが一般的です。
過失運転致死傷罪では、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。さらに、こうした刑事罰に加えて社会的信用の失墜も避けられず、居眠り運転は極めて大きなリスクを伴います。
従業員の居眠り運転による企業の責任
従業員が業務中に居眠り運転をした場合、その責任は本人だけにとどまりません。過度な労働を指示したり、疲労が蓄積する勤務体系を容認していたりすると、企業にも責任が及ぶ可能性があります。特に一般企業と運送業では、求められる管理水準や法的リスクの大きさが異なります。
一般企業の場合
運転業務が中心でなくても、企業は一定の責任を負います。労務管理や安全運転管理体制の有無は、社会的信用に直結する可能性があります。
民事責任
従業員が勤務中に事故を起こし第三者に損害を与えた場合、会社にも民事責任が生じる可能性があります。この責任は以下の法律によって定められています。
第三条(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
第七百十五条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
これらの条文における「自己のために自動車を運行の用に供する者」や「ある事業のために他人を使用する者」は会社側を指し、「被用者」は従業員を意味します。そのため、会社には従業員の行為による損害について損害賠償責任が発生する場合があります。
労務管理責任(安全配慮義務)
企業には、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整備する義務があります。過度な長時間労働や不適切なシフトにより、従業員が疲労した状態で運転し事故を起こしたと判断されれば、労務管理の不備として安全配慮義務違反を指摘される可能性があります。
行政責任
道路交通法に基づき、一定規模以上の事業所では、安全運転管理者を選任し、従業員の運転を管理・指導することが義務付けられています。居眠り運転による事故が発生した場合、この体制に問題があると判断され、監督官庁から指導や是正措置命令を受ける可能性があります。
運送業の場合
運送業は業務の中心が「運転」であるため、一般企業以上に厳格な責任を負うことになります。重大事故が発生すれば、通常の賠償責任にとどまらず、事業の継続そのものに直結するリスクが生じやすいのが特徴です。
民事責任(使用者責任)
従業員が運転中に事故を起こした場合、一般企業と同様に「運行供用者責任」や「使用者責任」が生じます。特に、運送業のトラックなどで事故が発生すると、一般企業の社用車に比べて被害規模が大きくなることがあり、その結果、賠償額が高額にのぼるケースもあります。
両罰規定による刑事責任
道路交通法や労働基準法には「両罰規定」があり、違反をした運転者個人だけでなく、法人にも刑事責任が及びます。事業者が従業員の監督義務を怠ったり、過労運転を黙認したりした場合には、企業側も罰金刑などの処分を受ける可能性があります。
行政責任
居眠り運転による重大事故が発生した場合、営業停止や事業許可の取消といった厳しい行政処分につながる可能性があります。さらに、管理体制の不備が明らかになると、認定制度や監査の面でも不利益を被る恐れがあり、企業の事業継続に直接的な影響を及ぼします。
居眠り運転の原因と対策
居眠り運転は突然起こるものではなく、身体的な状態や生活習慣、運転環境など、さまざまな要因が重なって発生します。そのため、原因を整理して理解し、それに応じた対策を講じることが重要です。ここでは、代表的な原因と有効な防止策を、運転者と企業の両面から解説します。
居眠り運転の原因
居眠り運転を引き起こす主な原因には、以下のようなものがあります。
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身体的要因:睡眠不足や過労など
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生活習慣:睡眠時無呼吸症候群などの持病や体調不良
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運転環境:単調な道路や夜間の運転など
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薬の影響:風邪薬やアレルギー薬の副作用による眠気
これらは単独で作用することもありますが、複数が重なると強い眠気を誘発することもあります。
居眠り運転の対策
対策は大きく分けて、「運転者が個人として取り組むべきこと」と「企業や管理者が組織として整備すべき体制」の2つがあります。両者を組み合わせることで、無事故・無違反に向けた強固な対策を講じることができます。
運転者の対策
運転者が日常的に実践できる予防策としては、以下のようなものがあります。
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睡眠時間を十分に確保する
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夜間や長時間の連続運転を避ける
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こまめに休憩をとる
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カフェインを摂取して眠気を和らげる
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日頃から体調管理を徹底する
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健康診断を受け、持病の有無を確認する
いずれも基本的なことですが、日常的に意識して取り組むことで居眠り運転のリスクを減らすことができます。
企業・管理者の対策
従業員の居眠り運転を防ぐために、企業や管理者が取るべき対策は次のとおりです。
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無理のない運行計画を立て、休息時間を確保する
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居眠り運転の危険性を伝える安全運転教育を定期的に実施する
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出発前の点呼を徹底し、体調や睡眠状況を確認する
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健康診断や相談体制を整備し、従業員の健康管理を支援する
これらの取り組みは、従業員一人ひとりの安全を守るだけでなく、企業の社会的信用を維持するためにも重要です。
安全運転教育について詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
居眠り運転防止に役立つツール
運転者や企業・管理者による対策に加え、先進技術を活用することで、居眠り運転や過労運転を防止できます。近年では、警報器やドライブレコーダー、車両管理システムなどに安全運転を支援する機能が搭載されています。
居眠り運転警報器
居眠り運転警報器は、ドライバーの顔やまぶたの動きをカメラで監視し、閉眼や視線の逸れを検知するほか、ハンドルや車体の動きのセンサーで眠気や注意力低下を感知し、アラート音や振動で警告する装置です。
特に、長時間運転が多いトラックやバスなどの商用車での使用が想定されています。
AIによるモニタリングを組み合わせたタイプでは、わき見や眠気の兆候をより高精度で判定でき、事故の未然防止にも効果が期待されます。
安全運転支援機能付きドライブレコーダー
映像記録に加え、居眠り運転やながら運転、わき見運転などの危険な運転を検知する機能を備えたドライブレコーダーが増えています。例えば、車線逸脱や前方車両への接近をセンサーで把握し、注意喚起を行う仕組みがあります。
さらに、AI搭載型では運転者の顔をリアルタイムで解析し、目の動きや頭の傾きから居眠りの兆候を検出してアラートを発します。
人の目を介さず常時運転支援が可能で、危険な挙動が見られた瞬間に警告が行われるため、事故の未然防止につながります。
車両管理システム
企業が安全な運行を確保するために近年導入が進んでいるのが、「車両管理システム」です。車両管理システムには、安全運転を支援するさまざまな機能が備わっています。
例えば、急ブレーキや急ハンドルなどの危険挙動を検出し、ドライバーごとの運転傾向を分析することで、安全意識の向上につなげられる点も大きな特徴です。
また、アルコールチェック機能を搭載しているシステムも多く、アルコールが残った状態での運転を防ぐことで居眠り運転のリスクを低減できます。
さらに、管理者が運行状況を把握したい場合は、GPSを用いた動態管理を活用することで、休憩のタイミングや無理のない運行計画の策定にも役立ちます。
車両管理システムの詳しい機能や、おすすめの製品を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
居眠り運転は、単なる疲労や眠気の問題にとどまらず、安全運転義務違反や過労運転として法的責任が問われる重大な行為です。違反点数や反則金に加え、過労運転と判断されれば免許取消や刑事処分の対象となる場合もあります。
さらに、運転者本人だけでなく、企業にも民事責任や行政責任が及ぶ可能性があります。そのため、運転者は十分な睡眠と体調管理を心がけ、企業は無理のない運行計画や安全運転教育、健康管理体制の整備を徹底することが不可欠です。
近年は、AI解析で危険挙動を察知するドライブレコーダーや、企業全体の運行を管理できる車両管理システムなど、多様な安全運転支援ツールも登場しています。こうしたツールを活用し、運転者の自覚を補いながら危険を未然に防ぐ仕組みを整えることで、事故リスクの低減と企業の安全管理体制の強化につなげることができます。
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安全運転を徹底するために、もっとも重要なポイントのひとつが飲酒運転を未然に防ぐことです。
飲酒状態での運転は、それ自体が罰則の対象になるうえ、居眠り運転による重大事故に発展するリスクもあります。
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